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455)藤沢周平の『蝉しぐれ』

 2008年8月、旧暦の七夕、織り姫星と彦星が年に一回まみえる頃の夏の真っ盛り、欅並木の蝉の声が今年は耳にいやに痛いくらい響く。

 暑さが体に余計感じられて来る。

 この鳴き続く蝉の声を聞くと、藤沢周平の『蝉しぐれ』の小説と映画が想い出されて来る。
 藤沢周平の作品の中で、私が最も好きな小説が『蝉しぐれ』である。
 いささか長編である。
 藤沢周平の海坂藩ものと呼ばれる作品を少なからず読んだが、『蝉しぐれ』が私にとって一番の小説と思われる。藤沢周平の代表作と云っても良い小説ではなかろうか。

 数年前、藤沢周平の『蝉しぐれ』が映画化された。
 藤沢周平の小説が映画化されたのは、『蝉しぐれ』が初めてである。

 藩の騒動に巻き込まれ切腹をさせられた父の亡骸を、大八車に乗せて、牧文四郎は自宅に運ぼうとするが、山道の坂を登れない。後ろに戻ってしまう。
 その時、坂の上に逆光に浮かび上がって少女の影が現れる。少女は駆け下り、大八車の後ろを押す。少女の名はふくという。

 二人は額から汗を出しながらも、力を合わせて懸命に大八車を押し上げる。
 蝉はジンジンと鳴く。

 ジンジンと鳴く蝉の声を聞くと、どうしてもこの映画化されたシーンが想い出されて来る。

 藤沢周平の作品は、下級武士の貧しい生活の中にあっても正義を貫く姿を描くのが多いが、一方女性の描き方も上手だ。

 その女性は、現代の社会で生きようとする女性の考え方を、時代劇の衣を装って描いている。
 それが藤沢周平の作品が女性にも好まれる原因の一つでは無かろうか。
 
 1年と少し前だったか、山形鶴岡市内及び周辺の土地の不動産鑑定評価の現地案内を終えて、夜は日本海に臨む湯野浜温泉の旅館で、日本海に沈む夕陽を見ながら、案内者と地元出羽の酒を飲みかわしながら、藤沢周平作品の映画ロケについて話を聞き、心地よい一時を過ごした。

 湯野浜温泉の浜辺では、江戸屋敷に奉公に出ることが決まったふくが、結局は牧文四郎は来なかったが、一人浜辺の波打ち際で辛抱強く牧文四郎を待つシーンが撮影されたと聞く。

 いつの日にか機会があったら、藤沢周平のファンの一人として、鶴岡市旧風間家「丙申堂」のロケ現場を見に行きたい。
 そこは、ふく役の木村佳乃の着物姿の美しさが際だち、『蝉しぐれ』映画で、私の最も印象に残っているシーンを撮影した場所である。


 旧風間家住宅 「丙申堂」
    http://www.tsuruokakanko.com/movie/loca01.html

 蝉しぐれ レビュー
    http://www.semishigure.jp/review.html
   (注)ネットスケープでは見られない場合があります。

 湯野浜温泉夕陽のギャラリー
    http://www.yunohamaonsen.com/index.asp?patten_cd=12&page_no=38
   (注)ネットスケープでは見られない場合があります。

 鑑定コラム434)「山桜は美しかった」

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