47)公的評価のアカウンタビリティ特集の『Evaluation』6号
不動産鑑定実務理論雑誌の『Evaluation』6号(プログレス)が発行された。
同誌の1号から4号は清文社という出版社から発行されたが、5号からはプログレスという出版社から発行されることになった。
6号は2冊目である。
『Evaluation』の出版を引き継いだ新出版社は、ヨチヨチ歩きを始めたばかりである。
6号の巻頭言は、編集顧問の一人である芝浦工業大学の松下潤教授が、これからはハード志向の都市基盤整備からソフト志向の社会基盤整備の時代になると説かれている。
6号の特集は「公的評価のアカウンタビリティに向かって」で、5人の著者の論文が掲載されている。
明海大学の田中一行教授の「固定資産税の歴史と将来と評価問題」は、固定資産税の歴史を地租改正より述べ、戦後のシャープ勧告の固定資産税の考え方を紹介している。
そして、現在の短期課題として、
「評価額が適正で、均衡を保っていることを納税者に対して証明しなければならない」
と説き、中期的課題として田中一行教授の持論である「収益標準化することが必要だ」と主張されている。
不動産鑑定士の堀川裕巳氏は、状況類似地域の区分、固定資産税の標準宅地評価、路線価の付設、各筆の評価と固定資産税の全ての実務を行っている経験を踏まえて、固定資産税評価の問題点の発生の幾つかを指摘されている。
そして、
「評価上の大半は、我が国の国土に関する基礎的調査が不備なことに尽きる」
と述べられている。
税理士で不動産鑑定士でもある鵜野和夫先生は「公示価格の信憑性と情報公開について」で、公示価格のより一層の信頼性を得るためには、評価した不動産鑑定書の公開を提案されている。
そして基準価格が適正でないと判示した最近の東京地裁の判例(平成14年3月7日)を紹介されている。
経済アナリストの福井康子氏は「米国における固定資産評価の資格制度」で、米国の固定資産評価の評価専門職として、資産評価士、住宅評価士、マッピング専門士、不動産鑑定士、評価管理士の5つの専門職とその内容、研修プログラム等を紹介し、日本にもそれら資格制度の導入を提案されている。
「固定資産税の適正な時価の東京高裁判決」という私の論文も特集の一つに入っている。
東京高裁の判決を、
「論理の矛盾と価格認識の混乱を来している」
と生意気にも批判し、
「7割修正の残りの3割は土地所有権者の財産権であり、7割修正を行わない東京高裁判決は、財産権の侵害を許容するものである」
と偉そうに言っている。
特集以外の論文は次の諸先生の6篇である。
・「建築の構想(4)」丸山英気千葉大学教授
・ 新・不動産鑑定基準への一考察(2)」高瀬博司
・「大規模工場用地と鑑定評価(1)」黒沢泰
・「立退料評価の問題点」北村雅夫
・「景気対策として不動産証券市場の発展に期待する」小出紀久男
・「民法次元の評価に対する商法次元の評価論」高畠秀夫
『Evaluation』6号は日販、東販の書店販売ルートによって配本され、ルート契約書店の店頭に並べられますが、発行部数があまり多くありませんので、大都市のルート契約書店に限られると思います。
見当たらない場合は書店に言えば取り寄せてくれます。
出版会社のプログレス(電話03-3341-6573)でも可です。頒価は税別で1,500円です。
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次号『Evaluation』7号(2002年11月発行予定)の特集は「新鑑定評価基準を迎えて」です。改訂される新鑑定評価基準に対する論文を募集しています。
新鑑定評価基準は百花斉放か。意見の百家争鳴を。
論文原稿締切は2002年9月10日です。
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