486)国交省は土地価格規制を行うつもりであったのではなかろうか
国交省は、ここ数年の土地価格のあまりの急激な高騰に、重い腰を上げて、土地価格の規制を行うつもりであったのではなかろうか。
土地価格規制の政策実行の準備をし、実施寸前の状態であったのではなかろうか。
その様に思われる一つの文書が、都道府県・政令指定都市に通知されている。
平成20年11月10日付で、『国土利用計画法に基づく土地取引の規制に関する措置等の運用指針』という文書である。頁数は表題部を入れて47頁ある。
国土利用計画法は、平成バブルの土地価格高騰を退治するために作られた法律で、平成バブル時その法律に基づき政策実行され、土地取引及び価格が規制された。
この政策は劇薬のごとく効き、平成2年7月頃をピークにして土地価格は大幅下落を引き起こした。土地価格下落は平成12〜13年まで続いた。
政策が効き過ぎ、日本経済が壊滅的な打撃を受けた。
逆に、政策が効き過ぎ、日本経済が壊滅的な打撃を受けたということは、日本経済は土地資本主義経済であったことの証明にもなる。
2002年(平成14年)頃より、今度は不動産ファンドという鎧を被って不動産が動き始め、じりじりと地価は上がりはじめた。平成17年から昨年の平成19年前半までは地価は無茶高を示した。地価抑制のタガが外れて暴走した。即ち地価摩擦係数が閾値を超えて、手が付けられない状況になったのである。
国交省はこの地価高騰暴走の状況を見て、地価抑制策を考えたであろう。
埃を被っていた国土利用計画法を引っ張り出して来て、同法の適用を考え、その指針を作って、政策実行を行おうとしたのではなかろうか。
そうでなければ、20年11月10日付の前記土地取引の規制に関する措置等の運用指針なぞ作る必要性は無い。それを都道府県・政令指定都市に送付する必要性も無い。
指針を作り、かつ都道府県・政令指定都市に送付したということは、土地価格の規制を行うつもりであったということの証であろう。
政策実行する前に、土地価格の方が大幅に下落し始めて、指針のみが取り残されてしまったということではなかろうか。
運用指針を読むと、1年間に10%程度の地価上昇が見られる地域を取引届出対象の「監視区域」に指定すると言う文言がある。
規制の対象は、信託受益権の譲渡も含まれる。
信託受益権については、同運用指針は次のごとく述べる。
「信託契約による所有権の移転は、一般的に対価性がないものと解されているが、信託受益権の譲渡については、信託期間満了時に受益者が信託財産である土地を所有することとなる場合、又はその可能性がある場合は、当該信託受益権は所有権の取得を目的とする権利に該当する。」
それ故、規制の対象に該当するという。
現在、土地価格が大幅に下落していることから、国土利用計画法による土地価格の規制は発動されないであろうと私は思う。
今回の土地価格高騰に対して、金融庁から厳しい批判をされるだけの無策の国交省と私は思っていたが、土地価格規制を行う寸前まで来ていたということを知れば、優れた土地価格行政を担う官僚は、まだ国交省に居たんだと賛辞したい。
しかし、実施が3年前であれば良かった。政策実行が遅い。甚だ残念である。
国交省の土地価格規制の運用指針文書は、下記のアドレスをクリックすれば見られます。
http://www.mlit.go.jp/common/000027114.pdf