○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

488)ディックスクロキの倒産

 ディックスクロキ(平成20年11月14日民事再生法適用申請)、モリモト(平成20年11月28日民事再生法適用申請)と上場している不動産会社がバタバタ倒産する。

 不動産鑑定は、不動産と切っても切れない関係にある。
 現実の不動産の売買・仲介・開発を行うのは、不動産業者である。

 不動産を中心にして、不動産鑑定業と不動産業とはつながっている。
 企業の規模で見れば、圧倒的に不動産業を営む不動産会社の方が大きいが、その不動産会社が倒産するのを見るのは、やはり悲しい。

 「感傷的に倒産を悲しんでも仕方無いではないか。
 倒産するのは経営が悪かったのであり、それを悲しむ必要は無い。
 むしろ、信頼して取引に応じた取引関係者、債権者は受けるべき金額をもらう事が出来ず、下手すると関連倒産を味わうことになり、そちらの方が同情すべきではないのか。」
という反論は当然あろう。

 そういう主張はもっともである。

 ディックスクロキは九州の福岡を地盤にした不動産会社で、比較的早くから地方で不動産証券化に取り組んでいた会社であった。

 ディックスクロキは民事再生法による企業再生の申請(平成20年11月14日)をしたが、経営行き詰まりについて、同社のホームページで述べていることを要約すると、下記の原因によるものである。

 1.サブプライムローン問題による金融の信用収縮が生じた
 2.金融機関の不動産ファンドへの融資規制が厳しくなった
 3.売却予定物件の解約が生じた
 4.販売予定先の経営が破綻した
 5.物件売却による資金捻出が困難になった
 6.サブリース物件の賃料の逆ザヤが拡大した

 これら要因によって事業の継続が困難になって、民事再生法の適用申請となったと述べる。

 上記経営破綻要因は、現在の不動産価格大暴落と不動産不況の要因をほぼ網羅している。現在の不動産状況を知り、原因分析するための具体例になるのでは無かろうかと私は思う。

 なおディックスクロキの平成20年3月期の売上高は、268億円である。
 営業利益は19.2億円の黒字である。営業利益率7.2%である。
 負債総額は181億円である。
 信じがたい事であるが、黒字での倒産である。負債総額も年間売上高の約68%に過ぎない。

 営業利益の10倍の借入金即ち負債は、健全企業の判断指標の一つである。
 ディックスクロキの営業利益は19.2億円であるから、営業利益の10倍の金額は、
      19.2億円×10=192億円
である。

 192億円の借入金・負債額は健全企業としてみなされる許容の負債額である。
 ディックスクロキの負債額は181億円であり、負債額は健全企業の許容範囲の金額である。それがどうして倒産企業になるのか。どうも私にはディックスクロキの倒産が分からない。原因はどこか別の処にありそうである。

 私はディックスクロキとは、仕事ではつながりもつきあいも無かったが、東京で私が賃料についての講演をした時、安くない受講料にも係わらず、福岡からわざわざ東京まで若い二人の社員が来て、私の講演を聞いてくれた。

 講演終了後、賃料について疑問に思っていることについて、私に教えを請うて来た。
 若い二人のディックスクロキの社員と短い時間であったが、賃料について話し合った。

 適正賃料の求め方について、その知識を得ようとしていたディックスクロキの研究熱心な、この二人の社員が大変印象に残って居る。

 それ故に、ディックスクロキの倒産に一抹の寂しさがあり、悲しいのである。

 私の賃料の講演を、わざわざ福岡から聴きに来てくれた若い二人の社員よ!
 企業倒産にめげず、人生をたくましく切り拓いて、生きて行って欲しい。
 

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ