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不動産情報会社の生駒データサービスシステムが、全国ビル空室率と改訂継続賃料下落率の調査結果を発表した。(住宅新報2002.4.26 2002.5.3)
次のごとくである。
都市名 空室率% 継続賃料下げ率%
東京23区 4.5 -1.8
主要5区 4.4 -1.7
横浜 6.9 -2.8
大阪 9.4 -5.7
京都 11.8 -2.5
神戸 17.2 -6.3
名古屋 6.4 -1.4
静岡 7.9 −
札幌 8.3 -3.0
仙台 11.0 -3.4
新潟 17.5 -4.5
金沢 15.2 −
広島 9.3 -2.7
岡山 8.9 -3.2
高松 9.7 -4.6
松山 12.5 −
福岡 10.1 -1.9
鹿児島 13.4 −
事務所ビル空室率は2002年3月時点であり、継続賃料の下げ率は契約期間2年の2001年改訂時の従前賃料からの下落率である。
上記空室率と継続賃料の下げ率の関係を、データが欠けている静岡、金沢、松山、鹿児島を除く14地域のデータで分析すると、次の結果が得られた。
継続賃料の 継続賃料の
空室率% 下げ率% 空室率% 下げ率%
1 -0.9 11 -3.6
2 -1.2 12 -3.9
3 -1.5 13 -4.1
4 -1.7 14 -4.4
5 -2.0 15 -4.7
6 -2.3 16 -4.9
7 -2.5 17 -5.2
8 -2.8 18 -5.5
9 -3.1 19 -5.8
10 -3.3 20 -6.0
即ち、空室率5%の時、継続賃料の下落率は−2.0%
空室率10%の時、継続賃料の下落率は−3.3%
空室率15%の時、継続賃料の下落率は−4.7%
空室率20%の時、継続賃料の下落率は−6.0%
と言うことである。
例えば、6階建の事務所ビルの4階部分が、1年間入居募集しても入居者を見つけることが出来なく空室状態が続いていたとする。空室率は、
1÷6=16.6%≒17%
である。
上記分析結果から17%の空室率の継続賃料下げ率は、5.2%であるから、4階以外の事務所の継続賃料が改訂時期に合った場合は、約5%の賃料減額請求が賃借人は可能ということになる。
賃貸人は賃借人に賃料減額請求の口実を与えないために、空室状態を1年も続けず、入居者を早く見つける努力をしなければならないことになる。
上記空室率の数値によって、改訂継続賃料の下げ率が推定出来ることになる。
継続賃料の下落はこの他に新規賃料の下落とも関係があるが、空室率との関係は、これによってわかった。
拙著
『賃料<家賃>評価の実際』
p290で、
「長期間の空室の存在は、既契約の賃料改定のときに、減額請求の方向に影響を与えるかもしれない」
と述べたが、上記分析はそれの具体的実証データ分析になる。
空室率による継続賃料の下落率の関係は、上記分析によりわかったが、空室率そのものを他の要因で予測説明出来ないものであろうか。
空室率15%を突破している新潟、金沢、神戸の貸ビル状況は凄まじい土砂降りの状態といえる。
何故これ程のオフィスビルの空室率が発生するのか。
オフィスビルの貸室の供給が需要を大きく上回っているからと言ってしまえばそれまでであるが、この17都市のオフィスビルの空室率を別の要因で理論的に説明出来ないであろうか。
地域の商業売上高、人口、平均事務所賃料、会社数、一人当たり事務所面積、電力消費量、水道消費量、有効求人倍率、法人事業税、失業者数、銀行貸出残高、着工建物床面積、累積事務所建物面積、工業製品出荷額、勤労労働者数等の中のいくつかの諸要因で、17都市のオフィスビルの空室率を実証的に説明出来ないであろうか。
そして空室率0にするには、新規賃料はどれ程下げればよいのかということを理論分析する人はいないだろうか。
いつまでも地価公示価格や固定資産評価の方ばかりに優秀な能力を消費せず、不動産鑑定の本流であるべき賃料(不動産配分利益)及び価格形成要因分析の方に頭脳を振り向けてくれないだろうか。
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