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494)タクシー運転手のぼやき

 「どう? 景気は?」

 「イャー 良くないですょ。」

 「いつから?」

 「ここ2・3年かな。
 今年は去年よりもなお悪い。」

 「悪いと言うことは、収入が減ったと言うことですか?」

 「そう。毎年水揚げが減っていて、いまじゃとても生活出来ない。」

 「生活出来ない?
 運転手として立派に生活しているのではないですか。」

 「イャー。・・・・切りつめているんですょ。
 共稼ぎをしてやっと生活できるのですょ。」

 「一時はタクシー運転手の月収は45万円くらいと聞いたが。」

 「とんでもない!
 月収45万円あったら共稼ぎなどしないですょ・・・・。
 月収45万円は10年くらい前の話。その頃は良かったですょ。
 今はその半分以下ですょ。」

 「何?
 月収20万円程度と言うことですか。」

 「そうですょ。
 朝まで夜勤して、そのくらいですょ。
 かみさんと共稼ぎしてどうにかまんまが食える状態ですょ。」

 「業界全体がそんな状態ですか?」

 「業界全体の事は、わしゃ知らないが、似たり寄ったりじゃ無いの。
 会社の方は人を募集してもちっとも若い人が応募してこなく人手不足のため、息子を入社させろと言ってくる。
 息子にこの仕事をやらないかととても言えないですょ。」

 「そんなに収入が落ち込んできたのですか。
 それはどうしてなんですか。」

 「世の中の景気が悪いのが大きな原因かもしれないが、一つの大きな原因は、5・6年前の小泉内閣の時の規制改革政策の市場自由競争とかいうやつですょ。
 あれから業界がおかしくなってしまった。
 車は増える。客は減る。水揚げは減るという状態が続いていますょ。
 体はきついし辞めたいが、といって商売替えして生きていけるかと言えば生きていけなく、仕方無くハンドル握ってやっているのですょ。」

 たまたま乗り合わせたタクシー運転手との会話である。

 今年2008年も不動産鑑定で、あちこちの土地建物を見て回った。
 飛行機や新幹線を利用する時は、空港・新幹線駅からレンタカーを借りて行動する場合が多いが、毎度毎度レンタカーを利用する訳でもなく、タクシーを利用することも多い。

 都内は勿論として、札幌・名古屋・京都・大阪・広島・福岡等とタクシー利用したが、いずれの都市のタクシー運転手に、
 「景気はどう?」
と聞けば、全員が、
 「良くない。」
という類の言葉が返ってくる。

 「まあまあ。」
とか、
 「ぼちぼち。」
という言葉が返ってくれば、景気は良いのだなと判断できるが。

 「益々悪い。」
という返事が来ると、乗車率、水揚げは相当悪く、収入は芳しくないと判断せざるを得ない。

 地域が全く異なるのにも係わらずタクシーの運転手が、揃いもそろって全員が景気は良くないと言うことから、本当にそうであろうかと、それを裏付ける政府発表の統計データは無いものかと捜して見た。

 裏付けるデータがあった。
 国交省がタクシーの利用者、実車率を発表している。
 東京特別区・武蔵野・三鷹地区のデータである。

 それによると、タクシー利用者数は平成19年9月以降毎月対前年同月比割れ、つまりマイナスである。

 何だ! この屈折点の時期は。
 東京の商業地の土地価格が下落し始めた時と、ほぼ同じではないのか!
 タクシーの利用者減、不景気突入と土地価格の下落と関係があるのか。

 実車率にも、平成19年12月以降、利用者数と同じ現象が生じている。

 データは東京の数値であるが、東京のデータの値が悪ければ、地方はもっと悪いということが推測されることから、タクシー運転手が景気悪いとぼやくのも頷ける。

 タクシー利用者数の前年同期比−10%の数値は厳しい。

 下記に国交省発表の数値を記す。東京特別区・武蔵野・三鷹地区のデータである。


タクシー利用者数千人 前年同月比 実車率% 前年同月増減
16年 414547 1.0 44.1 0.1
17年 424187 2.3 44.8 0.7
18年 438605 3.4 45.9 1.1
19年 433279 -1.2 46.2 0.3
19年8月 36642 2.1 46.2 1.0
19年9月 35124 -3.3 47.1 1.2
19年10月 36186 -2.6 45.8 -0.2
19年11月 35477 -1.6 46.2 0.3
19年12月 37323 -8.9 46.9 -1.6
20年1月 31913 -8.3 43.3 -1.4
20年2月 31937 -3.9 44.7 -1.0
20年3月 34524 -9.5 45.2 -1.5
20年4月 32897 -9.1 44.2 -2.0
20年5月 31974 -10.8 43.4 -1.7
20年6月 31927 -12.2 43.6 -3.0
20年7月 33903 -10.6 43.9 -3.0
20年8月 32241 -12.0 43.5 -2.7
20年9月 31174 -11.2 43.0 -4.1
         
        (国土交通省)
 

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