2008年の暮れ、日本の産業・経済界・社会に激震が走った。
2008年3月末の決算で、営業利益2.27兆円と日本企業で史上空前の利益を上げたトヨタ自動車が、2009年3月末の決算予想を2度も下降修正する発表を行った。
1回目は2008年11月6日で、2009年3月末の営業利益を6000億円と大幅減益発表した。2008年3月末の利益から1.67兆円の減額である。
それには驚いた。しかし利益が6000億円ある。
それが2008年12月22日にトヨタ自動車の社長は、6000億円の利益から一転して、マイマス1500億円の損失の決算予定と記者発表した。
トヨタ自動車のホームページに、そのプレスリリースが載せられている。
新聞各社もその数値を報道する。
9ヶ月前には2.27兆円の決算利益を挙げていた会社が、9ヶ月後に今年度の企業決算はマイナス1500億円の決算予想損失になると発表するとは。
大幅損失の発生の理由として、予想以上のアメリカでの自動車市場の悪化と円高が進んだ事を挙げる。
「予想以上のアメリカでの自動車市場の悪化」とは、サブプライムローン問題による金融不安が自動車ローンに及び、自動車を買いたいが自動車ローンが付かなくて自動車が買えないという事が原因している様である。
アメリカで自動車ローンが付かないため、自動車を購入する人が極めて少なくなった。在庫が増え、在庫を減らすためには輸出する自動車の生産を縮小しなければならないという事である。
商品である自動車が売れなければ、売上は落ち利益は生じない。その売れ行きダウンが想定以上に激しく、1500億円の損失が生じると言うのである。
その損失を少なくするために、自動車の台数減産をする一方、費用削減として従業員のうち、派遣労働者の解雇をしなければならなくなった。
労働者派遣法は、規制緩和という大義名分で4年程前(平成16年3月最終改訂)までに逐次に改訂された。
派遣労働者の業種は、それまで業種が制限されていたのだが、「厳しい雇用失業情勢、働き方の多様性等に対応するため」という最もらしい名目をもって、その業種制限がゆるめられ、製造業にまで派遣労働者の業種が拡げられた。
この法改訂が、今回の不況突入の自動車業種等の派遣労働者を使用する雇用会社側の一方的な派遣労働者の雇用契約の解約で、如何に悪い法律であるのかが明らかになって来た。
働きたいという若い派遣労働者から仕事を奪い、かつ住むところも奪い、彼らを路頭に迷わせることになってしまった。
労働者を物のごとく使い捨てとして扱うと分かった悪い法律は、早急に改正すべきであろう。
法律を作るのは国会議員である。
作った法律が国民を不幸にする悪い法律と分かったならば、作った国会議員は責任を持って良い法律に変えなければならないであろう。
一つの法律も作った事の無い国会議員が、大臣になり、首相になるなどという現在の政治家の姿勢・質・考え方は、根本から問われるべきであろう。況んや法律の作成を官僚に任せ放しと言うことなど、国会議員としての職務放棄に等しい。
一方減産する自動車の数はどれ程かと言うと、2008年12月23日の読売新聞が、減産台数と国内の削減人数を調査発表している。
その調査数を利用して、各自動車会社の一人当りの自動車生産台数が逆算出来る。
即ち、100万台減産するとして、それに伴い5000人の従業員を削減するとすれば、5000人で100万台造っていたと言うことになろう。
1,000,000台÷5,000=200台/一人
一人当り200台の自動車を造っていたと言うことになる。
自動車メーカーはそんなに単純では無いと言うであろうが、理屈としては一つの見方として成り立つではなかろうか。
読売新聞の調査発表した数値から、一人当りの生産台数を求めてみる。
一人当りの生産台数の求め方は、
減産台数÷国内削減数=生産台数
の上記の例で挙げた求め方で求める。但し減産台数は全て国内工場の減産台数とみなす。
以下の通りである。
減産台数 国内削減数 生産台数 トヨタ自動車 95.3万台 3,000人 318台/人 ホンダ 31.4万台 1,210人 260台/人 日産自動車 35.0万台 2,000人 175台/人 スズキ 27.5万台 960人 286台/人 マツダ 14.8万台 1,600人 93台/人 三菱自動車 11.0万台 1,100人 100台/人 ダイハツ工業 4.6万台 600人(注) 77台/人 富士重工 6万台 800人 75台/人 (注)500人〜600人の発表である。600人を採用する。