土地価格が70%上がったから、家賃のスライド法にその割合を採用して、従前家賃は70%上昇するとした継続賃料の鑑定書を目にすることになった。
3年前に継続賃料を改訂したばかりで、その3年後の継続賃料は土地価格が70%上がったからといって、70%の継続賃料の値上げは常識はずれであろう。
常識はずれの賃料値上げ率を、常識はずれと思わずに、又考えずに賃料の不動産鑑定書を書く不動産鑑定士も居るのである。
賃貸人の大家は大喜びするであろうが、賃借人の借家人はカンカンになって怒り、不動産鑑定士への不信感が爆発する事になる。賃借人は、同じ専門家職業の不動産鑑定士であろうといって怒りをこちらにぶっけてくる。こちらは3年間で70%アップの継続賃料の評価などしていないにも係わらず、その煽りを食らうことになり大変迷惑する。
家賃の変動率は、土地価格の変動率がダイレクトに連動するのであろうか。
このことについて、不動産鑑定評価の実務理論雑誌『Evaluation』29号p25(プログレス 2008年5月 電話 03-3341-6937)に、私は論文を書いた。
その論文を一部加筆等して、下記に転載する。
*
借地借家法は、賃料増減額の要件として、その32条に、
@ 公租公課の増減
A 土地建物の価格の上昇・低下
B 経済事情の変化
C 近傍同種の家賃との不相当
と規定する。
土地価格の上昇は、家賃増額の要因の1つと法律は明記する。
では土地価格が2倍になったら、家賃も2倍になるのかと云うと、そのような大幅な家賃上昇は起こらないし、又、賃借人及び世間は許さない。
では、地価上昇による家賃の上昇はどの様に考えるべきか。
私は、地価上昇が家賃に与える影響は、土地の固定資産税、都市計画税の公租公課の上昇によって具体的には反映されると考える。
そうした考え方で、地価上昇率が家賃にどれ程の影響を与えるか、以下で理論分析する。
従前賃料をY円、価格時点の賃料をX円とする。
従前合意賃料時の地価をA円、価格時点の地価をB円とする。
課税標準評価額は、
0.7×0.5=0.35
とする。0.7は固定資産評価額の時価修正率である。0.5は実行課税価額への修正率である。
固定資産税・都市計画税の税率は0.017である。
実効税率は、
0.35×0.017=0.00595
である。
建物の公租公課をaとする。建物の公租公課は従前合意賃料時と価格時点時と変わらないものとする。
ここで貸ビルの家賃に占める公租公課の割合は、『賃料<地代・家賃>評価の実際』p75田原著(プログレス)によれば10%である。この10%を採用して理論を説明する。
上記諸条件より、次の式が成立する。
従前合意賃料の公租公課 0.00595 A+a=0.1Y……@式
価格時点の公租公課 0.00595 B+a=0.1X……A式
0.00595(B−A)+0.1Y X= ───────────── 0.1 =0.0595(B−A)+Y X−Y=0.0595(B−A)……C式
B−A ──── =地価変動率 A である。
X−Y ──── =0.0595×地価変動率 ……F式 A である。
地価変動率 家賃への影響変動率 1.35 0.021 1.40 0.024 1.45 0.027 1.50 0.030 1.55 0.033 1.60 0.036 1.65 0.039 1.70 0.042 1.80 0.048 1.90 0.054 2.00 0.060 2.10 0.065 2.20 0.071 2.30 0.077 2.40 0.083 2.50 0.089 2.60 0.095 2.70 0.101 2.80 0.107 2.90 0.113 3.00 0.119