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539)クライスラーの売上高はいくらなのか

 アメリカのビッグスリーの一つであるクライスラーが、2009年4月30日米連邦破産法11条の適用申請したことを、オバマ・アメリカ大統領がテレビで発表するニュース映像が日本でも流れた。

 自国一民間企業の破産法11条の適用申請を、アメリカ大統領が発表するとは。

 日本において、日本の首相が、一民間企業の民事再生法適用申請の発表をするであろうか。

 クライスラーの再建が、アメリカの国家事業のごとくである。
 アメリカ大統領が自ら発表すると云うこと、この事は重要な事である。安易に考えて取り扱うものではない。

 それだけクライスラーを再建存続させる事が、アメリカ経済にとって大切なことであると私は解釈する。

 オバマ大統領が、株主、債権者のヘッジファンドの非協力を激しく非難する声明には、いささか驚いた。
 
 クライスラーの売上が大幅に減じ、大幅な赤字のため、クライスラーを救済するという報道で、アメリカ政府が40億ドルの融資をするとか、80億ドルの追加融資をするという報道が流れる。

 それら報道を聞いて、疑問に思うことが一つある。

 クライスラーの危機ではあることは分かるが、ではクライスラーの売上高、財務諸表の赤字の金額は一体いくらなのかということが一切報道されない。

 ネットで「クライスラーの売上高」の言語で検索しても、クライスラーの売上高を示す数値が全く検索されない。

 アメリカ政府とか債権者等は、売上高等の数値を把握しているのであろうが、外部には全くその数値が出てこない。不思議な事だ。

 クライスラーの売上高はいくらなのか。

 GMとかフォードの売上高は分かる。
 クライスラーは分からない。クライスラーの財務数値は非公開なのか。

 もし非公開であったとしても、アメリカ政府は40億ドルの融資をするとか、80億ドルの追加融資をするというのである。税金が注ぎ込まれるのである。
 財務数値は公開されても良いのではなかろうかと私には思われるが。

 アメリカの産業を代表する自動車産業のビッグスリーの一角が倒産すると云うことは、アメリカ自動車史上にとって歴史に残る重大な事である。

 サブプライムローン問題が、金融業界のみに留まらず、アメリカの屋台骨の産業にまでその影響を及ぼしてきた。

 このクライスラーの倒産の影響は、アメリカのみに留まらず、日本の経済にも大きく影響を及ぼす。

 クライスラーが潰れたと云うことは、アメリカ国内で自動車が売れなくなり余っているということであろう。
 それは生産ラインが過剰と云うことを意味する。

 日本自動車工業会が、Ward'sの調査によるアメリカ国内の自動車の生産台数を引用して発表している。

 それによれば、GM、フォード、クライスラーの2007年、2008年のアメリカ国内での生産台数(乗用車、トラック、バス)は、下記の通りである。単位は台。

                       2007年       2008年
     GM             2,815,080            2,292,614
     フォード       2,030,140            1,509,665
     クライスラー    1,651,285            1,106,028

 クライスラーは、2007年が165万台、2008年が110万台である。
 減産生産台数は55万台で、▲33%のダウンである。

 一方、日本のトヨタ、ホンダ、日産のアメリカ国内での生産台数は、下記の通りである。

                       2007年       2008年
     トヨタ           943,924            759,448
     ホンダ        1,015,462            987,169
     日産         703,662            544,232

 日本の3社いずれも、2008年は前年よりも減産している。

 2008年のアメリカ国内の自動車生産台数の順位を示すと、次の通りである。

        1位     GM       230万台
        2位     フォード    150万台
        3位     クライスラー    110万台
        4位     ホンダ      99万台
        5位     トヨタ      76万台

 トヨタの販売台数、生産台数、営業利益等が新聞等に多く報じられるが、アメリカ国内での自動車生産台数は、ホンダの方が多いのである。

 クライスラーの倒産が、アメリカ国内の自動車生産台数の過剰によるものであるとすれば、それは市場の問題であり、ホンダ、トヨタも無関係に存在することは出来ず、企業業績も大きく影響を受けることになる。
 それの影響で、日本経済不況そして土地価格下落という悪循環が続く事になるのか。


(追記)2009年5月12日午後9時00分
 鑑定コラムの読者のO氏から、クライスラーの売上高、損失額が知らされました。

 連邦破産法11条適用に伴い、破産裁判所への提出書類の中に財務数値が記載され、それによってクライスラーの売上高等が明らかになった様です。

 やはりクライスラーの財務数値は、非公開であったようです。

 下記アドレスに売上高等が掲載されていると、O氏から教えて頂きました。

     http://mainichi.jp/select/wadai/week/news/20090501mog00m040036000c.html

     http://car.nikkei.co.jp/news/article.aspx?id=AS2M0500H%2005052009

     http://www.asahi.com/business/update/0505/TKY200905050079.html

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