○鑑定コラム



フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ

鑑定コラム全目次へ


58)利回り法の問題点

 利回り法とは賃料のうち継続賃料を求める場合の1つの手法である。
 求め方は、『鑑定評価基準』は次のごとく云う。
 「利回り法は、基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である」と。
 基礎価格とは何か、継続賃料利回りとは何か、必要諸経費等とは何か、試算賃料とは何かと、それら専門用語の説明が必要であるが、それらは不動産鑑定評価の専門用語集の方に譲って割愛する。
 利回り法の問題点を指摘する前に、具体的な求め方を極めて簡単に、条件設定して説明する。

 価格時点の土地・建物価格(基礎価格)は土地価格7,000万円、建物2,700万円で合計9,700万円とする。従前合意賃料時の基礎価格のうち土地価格は10,000万円とする。
 従前合意賃料時の継続賃料利回りを4.61%とする。
 必要諸経費等を270万円とする。
 従前合意賃料は月額75万円とする。
 周辺賃料下落率は−15%とする。

 これらから価格時点の利回り法賃料は、
     9,700万円×0.0461=447万円
     447万円+270万円=717万円
     717万円÷12ヶ月≒59.8万円
 利回り法賃料は月額59.8万円と求められる。  但しこの月額59.8万円の利回り法賃料が、適正な賃料か否かはわからない。下記問題点をクリアしていれば適正賃料といえるが。

 従前合意賃料時から価格時点までの地価下落率は
、      (7,000万円−10,000万円)÷10,000万円=−0.30=−30%
である。
 対象賃料の下落率は、
(59.8万円−75万円)÷75万円=−0.202≒−20%
である。

 この利回り法賃料に対する問題点については、『賃料<家賃>評価の実際』p405(清文社)に詳しいからそれを以下に引用転載する。

 『この鑑定結果に対して、貸主側代理人の弁護士より、周辺賃料下落率よりも鑑定賃料の下落率が大きいことに不満が表明される。
 「何故、対象賃料は周辺賃料の下落率よりも大きくならなければならないのか。その合理的説明を要求する。」という質問が出される。ついで「従前合意賃料時の利回りを価格時点に採用しているが、それはおかしいではないか。求めるのは価格時点の賃料である。価格時点での利回りで計算されているのであれば納得するが、どうして従前合意賃料時の利回りが、時間の同一性の無い価格時点に使用されるのか。その合理的な説明を要求する」と2番目の質問が出される。
 それら質問に何とか答えていると、最後にとどめの質問が来る。
 「賃貸人は月額75万円の賃料で合意はした。それは認める。そして仮に鑑定人の認定する利回り4.61%の割合で賃料を決めると契約していたなら、その割合の求め方に従う。しかし、利回り4.61%の賃料で契約した覚えはない。その様な条件で賃料を決めることなぞ契約書のどこにも書いてない。又、賃料改定は利回り4.61%で計算するとも契約していない。75万円の賃料で契約したのであって、4.61%での賃料では契約していない。鑑定人の作成した鑑定書は契約した覚えのない条件によって賃料が評価されている。不動産鑑定士である鑑定人は自分の都合の良いように契約条件を作りあげて評価している。デタラメな鑑定である。信用することは出来ない。」と。』

 この代理人弁護士の詰問にどう答えるべきか。或いは返答に立ち往生して鑑定の間違いを自ら認めるか。
 各自考えられたい。

フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ

鑑定コラム全目次へ