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580)与謝野・二階・石破の各大臣は何故担当の国際会議に出席しないのか

 インド・ニューデリーで、2009年9月3日〜4日に、世界貿易機関(WTO)の国際会議が開かれた。

 政権与党の自民党に所属する二階経産相、石破農相の2人とも、この国際会議には出席しなかった。

 2人の大臣が職掌している職務に関することの国際会議である。

 その国際会議の欠席理由について、毎日新聞電子版(2009年9月5日)は、次のごとく伝える。

 二階経産相: 「恐らく今度の会合で、何かを決めるとかいうことにはならないと思う。私自身が出席しなくても十分対応できる」

 石破農相: 「政権交代が確実である以上、私がでることは適切ではない」

 米国発のサブプライムローンによる金融危機の発生によって、世界各国は自由貿易主義から保護貿易主義に傾こうとしている。

 WTOの閣僚会議は、より良い自由貿易主義を互いに考える会議では無いのか。

 日本は自由貿易主義によって、大変な利益と恩恵を受けている国である。
 会議に出席して、保護貿易主義に傾き掛けようとしている国々を説得し、自由貿易主義に向かう道を探らねばならない立場にあるのでは無いのか。

 その役を担うべき2人の閣僚が、そろいもそろって不参加とは、自らの大臣という職務を何と心得ているのか。

 今回の衆議院議員総選挙で、所属する政権党の自民党が負け、政権を民主党に明け渡すことになったとはいえ、明け渡すまでは、当該の大臣職にいる訳である。それまでは職務を全うし、国民の為に働くべきものでは無いのか。

 「出席しなくても関係無い」と考えるなど、とんでも無い大臣である。
 大臣としての素質を疑いたい。

 2009年9月4日〜5日に、イギリス・ロンドンで開かれていたG20財務相・中央銀行総裁会議は、5日閉幕した。

 この国際会議に、日本の担当大臣である与謝野財務相は欠席した。
 欠席理由は体調不良という。

 私は、国際金融について詳しくは知らない。
 しかし、気になる2つのニュースが目についた。

 1つは、2009年9月3日付のワシントンの読売新聞岡田章裕特派員のニュースである。
 それは、9月2日、中国はIMF(国際通貨基金)発行の約500億ドル分の債券を購入するというニュースであった。

 IMF(国際通貨基金)が債券を発行して、資金を調達することは初めてという。 中国に続き、ブラジル、ロシアも100億ドル相当のIMF発行債券を購入する予定という。
  
 2つ目の気になるニュースは、2009年9月4日付のニューヨーク発の時事通信のニュースである。

 それは、ノーベル経済学賞受賞のジョゼフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授のインタビューの記事である。

 スティグリッツ教授は、インタビューで次のごとく述べる。

 「米国は、日本と異なり国内に貯蓄が少なく、低金利で国債を発行し続けることが出来ない。
 (現在は1990年代の)日本よりも事態は深刻だ。
 米国の相対的地位低下により、ドル基軸通貨体制は終わりを迎えつつあり、新たな通貨体制をつくる為に各国は協調すべきだ。」
と。
 
 スティグリッツ教授が、

 @ 米国は、低金利で国債を発行し続けることが出来ない。
 A ドル基軸通貨体制は、終わりを迎えつつある。
 B 新たな通貨体制をつくる必要がある。

と述べている。

 上の2つのニュースから、私は下記のごとく推定する。これは私の推定であり、その推定結果は事実かどうかは分からないことを予め断っておく。

 中国はアメリカドルをおよそ2兆ドルため込んでいる。その大半はアメリカ国債である。

 このドルの貨幣価値が下落した場合、保有資産が目減りすることになる。

 この危険を避ける為、アメリカ国債を購入する代わりに、IMF発行の債券を購入する。

 IMFは、中国のIMF債券購入で手にした金を、アメリカに融資するという仕組みを考えたのではなかろうか。

 IMFの発行債券であれば、その金額はドル、ユーロ、円、ポンドの4ヶ国の通貨を1つのバスケットにまとめて、加重平均して交換レートが決められるため、ドルが下落しても、円がその反動で上がれば、交換レートの変動は避けられる。

 ドル通貨を単独で保有していれば、ドルの変動で保有資産は、それに振り回されることになるが、IMF発行の債券では、その心配から開放される。

 中国は旨いことを考えついた。

 アメリカのガイトナー財務長官が、今年の6月はじめに中国・北京に行ったニュースが流れたことがあった。

 ガイトナーは、中国の国家主席とこのことを話す為に、訪中したのでは無かろうか。

 その後すぐに、IMFの幹部が中国を訪問したというニュースが流れた。
 このIMFの幹部も中国の幹部と会って、IMF発行の債券の中国購入の話をまとめたのでは無かろうか。

 G20の財務相・中央銀行総裁会議の最終日に、共同声明が発表された。
 その中で、気になることが述べられている。

 「我々は、IMFの融資制度の全面的見直しを歓迎する。」

 この声明は、「見直しを望む」では無く、「見直しを歓迎する」という文言である。
 このことは「見直したことを歓迎する」と読み取れる。

 つまりIMFは融資制度を全面的に見直すことを終えて、その新しい制度を実行していると言うことになる。その制度をG20の財務相・中央銀行総裁会議は嬉しく思うというのである。

 そして、声明の最後に次のごとく述べる。

 「世界経済と国際金融システムを確保するにあたってのIMFの役割と有効性を向上することが重要である。」
と。

 この声明の文言は、これからは融資制度の変更を行ったIMFを中心にして、世界経済及び国際金融システムの危機打開を行っていくということを宣言していることでは無いのか。

 今年の6月にガイトナー米財務相が中国を訪れ、その後にIMFの幹部が中国を訪れている。

 こうした米国・中国・IMFの動きと、ワシントンの読売新聞岡田章裕特派員発信のニュース、ニューヨーク発の時事通信によるスティグリッツ教授のインタビュー記事から考えると、今回ロンドンでのG20の財務相・中央銀行総裁会議は、IMFを中心とした新しい通貨体制をつくる合意の会議では無かったのか。

 スティグリッツ教授のいう「新たな通貨体制」とは、IMFが債券を発行することでは無いのか。
  
 それを確認するための会議が、ロンドンで行われたのでは無いのか。

 とすると、大変重要な国際会議であった。
 その様な重要な国際会議に、日本の与謝野財務大臣は何故出席しなかったのか。

 体調がすぐれないと言っている状態では無かろう。
 そもそも、経済財政・金融相の立場にありながら、財務相まで引き受けてしまった。体力的に出来なければ財務相を断れば良いであろう。
 一人で3つの役所の大臣をやろうとすることが、そもそも間違っている。
 挙げ句に今回の総選挙の小選挙区で負け、比例代表でどうにか当選した。

 これで体調が優れないからと云って、重要な国際会議を欠席する。
 国民にとって身勝手な行動と映り、甚だ迷惑である。

 与謝野財務相が体調が優れない為に、今回のロンドンでのG20の財務相・中央銀行総裁会議を欠席すると言うならば、麻生首相が出席しても良いではないのか。首相の出席に対して、参加国はノーとは言わないであろう。
 麻生首相は、何故代わりに出席しなかったのか。

 日本はアメリカドルを大量に抱えて、ドル下落により保有資産の減少が続く。

 中国は、IMFに初めて債券を発行させることに成功し、ドル下落から逃れる方策を行った。

 日本の財務相と財務官僚は、何をしているのか。

 この調子では、近い将来、中国がアジアの通貨体制と通貨市場の指導権を握りそうだ。

 これから財務省の行うことは、中国に対して「元」の切り上げをさせることだ。

 現在、1ドル≒6.8元で、半ドルペック化している中国元を、完全自由化制にさせ、1ドル=5元、4元、3元にまで切り上げさせることである。

 2兆ドルもの外貨準備高を持っている「元」は、強すぎる。自由通貨流通市場で、価値相応のレートで取引されるべきであろう。

 「そんなことは出来ない。」
と仕事の実行を強要されることになる財務官僚は逃げの言葉を言うであろうが、不当に安い「元」の為替レートによって、安い中国製品が日本市場に氾濫し、それによって壊滅的打撃を受けている日本の産業を守らなければならなく、それはやらなければならない大仕事であろう。

 壊滅的打撃を受けている日本の中小企業を倒産から救い、その中小企業に勤める人々の職と生活を守らねばならないのでは無いのか。中国の不当に安い「元」を、日本の財務官僚が擁護する必要性は無いであろう。

 やらなければならないポストに居るにもかかわらず、「出来ない」という官僚は、官僚の「場」から退場してもらおう。やらずに出来ないと言う官僚にそのポストを占められていては、国民は甚だ迷惑する。

 出来る人が官僚として残れば良いであろう。


 鑑定コラム626)「財務省は動いた」
  

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