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584)日本の個人金融資産はどれ程であろうか

 日本の個人の金融資産はどれ程あるのであろうか。
 そう問うと、「金融資産とは何か」という定義から説明しなければならないが、それについては詳しい解説書があるであろうからそちらに譲ることとする。

 日本銀行が、2009年6月末現在のある数値を、2009年9月中旬に発表した。
 それは「資金循環統計」という数値である。

 「資金循環統計」とはどういうものかということについて、日本銀行のホームページが簡単に述べていることから、それを転載する。以下である。


 「資金循環統計とは、わが国における金融機関、法人、家計といった各部門の金融資産・負債の推移などを、預金や貸出といった金融商品毎に記録した統計です。極めて詳細かつ包括的に記録していることから有用性が高い統計ですが、反面、他の金融統計とは異なる特有の考え方や取引項目・部門分類を採っている場合があります。」


 その「資金循環統計」は、金融取引表、金融資産・負債残高表、調整表の3つの統計で成り立っている。

 その中の「金融資産・負債残高表」は、7部門の資産・負債について、各項目毎の金額を記している。

 7部門とは、金融機関、非金融法人企業、一般政府、家計、対家計民間非営利団体、海外、国内金融部門である。

 各項目については、後で述べるとして、7部門の中の「家計」の部門の数値が、日本の個人の金融資産の額を教えてくれる。
 
 つまり日本の個人の金融資産の額とは、日銀が発表する「資金循環統計」の「家計」の部門の金額が、それであると云うことである。

 2009年6月末の日本の個人の金融資産の額は、1441兆3391億円である。

 その項目内訳を記すと下記の通りである。単位億円。括弧内は、その占める割合。

          現金・預金      7,963,259(55.2%)
     財政融資資金預託金      0
          貸出                       100
      株式以外の証券      926,795(6.4%)
     株式出資金           1,018,485(7.1%)
     金融派生商品             2,073
     保険・年金準備金     3,924,746(27.2%)
     預け金ほか             577,933
          合計        14,413,391

 2004年からの資金循環統計の「家計」、即ち個人金融資産の推移を、最後尾に記す。

 2004年3月〜2009年6月までの個人金融資産の推移を見て、少し述べる。

 個人金融資産の合計は、1400兆円から1500兆円で推移している。
 外資や日本の金融機関等が口にする1500兆円という数値の金額は、恐らくこの日銀の発表している資金循環統計の家計部門の合計の金額が発生源と思われる。数値は当たっているから。
 最高額は2007年6月末の1571兆円である。

 現金・預金は、780兆円前後で推移している。

 株式・出資金は、117兆円から、最高206兆円(2007年6月)になって、84.5兆円(2009年3月)まで減少する。

 同様に、株式以外の証券、不動産証券化もここに入る。
 それは、65兆円から116.9兆円(2007年6月)になって、90.2兆円(2009年3月)まで減少する。

 各項目の最高金額とその時期は、下記の通りである。

     合計額     1571.0兆円    2007年6月
     株式・出資金   206.2兆円    2007年6月
     株式以外の証券  116.9兆円    2007年9月

 上記より考えれば、資金循環の個人金融資産のピークは、2007年6月〜9月である。

 この時期は、不動産ファンドバブルがピークを迎え、すぐ崩壊する時期、それは東京の商業地が暴落しだした時期である。

 不動産の地価暴落の時期と、個人金融資産のピークの時期とが奇しくも一致する。
 これは偶然の一致では無いであろう。

 資金循環統計の家計部門の金額の推移の側面からも、不動産の価格変動を分析することが出来そうである。

 護送船団と揶揄され大蔵省の庇護のもとに、我が世の春を謳歌し利益を得ていた日本の銀行等金融機関は、日本経済の著しい成長によって、外国経済、特にアメリカ経済との不均衡が拡大した。かつ個人金融資産の増加が目だつようになって来た。

 海外からの日本金融市場への開放圧力と要求が強まり、1980年に銀行法が改正された。

 これにより日本の金融の自由化が行われた。

 金融の自由化として実施されたのは、下記の内容のものである。

 1.金利の自由化
 2.金融機関の業務分野規制の緩和
 3.国内外の資本取引の自由化
 4.派生商品の拡大

である。

 平成バブルの崩壊で痛めつけられた日本の銀行、企業を救済するという理由と金融の自由化、規制緩和の大義名分を掲げて、アメリカ等の商業銀行が日本に本格的に乗り込んできた。

 アメリカの商業銀行が、日本上陸ではっきりとターゲットにしたのは、日本国民が所有する1500兆円という巨額の金融資産であった。

 政府幹部、御用学者、マスコミも「貯蓄から投資へ」という言葉を国民に投げかけ、「貯金は悪」というごとくの印象を国民に植え付け、国民の持つ1500兆円という金融資産の切り崩しを「活用しなければならない」等の言葉であおった。
 加えて、定期預金金利を5〜6%から1.5%そして0.5%程度に、大幅に引き下げる政策を行った。

 つまり銀行に預金するなという政策である。

 その具体例の1つとして、日本の富裕層を狙って、三菱UFJメリルリンチPB証券は、

 「開業2年で新規口座数9500口座、新規資金約6000億円集まった」

と豪語する。

 アメリカの銀行のシティグループも例外では無く、平成20年7月11日の日本経済新聞は、ニューヨーク松浦肇特派員のパンデイットCEOのインタビー記事を次のごとく載せる。

 「日本はアジア事業の核であり、日本の証券部分(日興コーディアルグループ)を戦略上、重視し、同部門は売却しない」

とシティグループのパンデイットCEOは明言する。

 そして日興コーディアル証券を買収した目的を次のごとく述べる。

 「我々が、日興コーディアルグループを買収したのは、戦略的理由があるからだ。
 今後1500兆円という個人金融資産が証券分野にシフトする」

と述べる。

 外資は、はっきりと日本の個人金融資産をターゲットにして、利益をむさぼろうとしている。

 日本の個人金融資産をむさぼったリーマン・ブラザーズは、平成20年9月15日に倒産した。

 そのリーマン・ブラザーズの倒産2ヶ月前に、CEOが強気の発言をしていたシティグループも、その後の経営悪化は著しく、経営陣も大幅に入れ替わざるを得ない状態に追い込まれてしまった。

 株価は大幅に下落し、450億ドルという莫大な政府資金が投入され、34%の株式を政府に握られて、実質政府管理の会社になってしまった。

 パンデイットCEOが、売却しないと明言していた日興コーディアル証券も、ついに手放さざるを得ず、三井住友FGが同証券を買収した。

 日本の個人金融資産は、外資の銀行、投資銀行の格好の餌食とみなされているようである。

 日本郵政の保有する180兆円の郵便貯金も、その様な目で見られて居るのでは無かったのか。



 下記に日銀の資金循環統計「家計」部門の数値を記すが、「その他」の部分の数値は、

   合計−現金・預金−株式以外の証券−株式・出資金−保険・年金=その他

の算式で、筆者が算出した数値である。
 直近等の数値は速報値であり、確定値では無いことから、後日変更される場合がある。


(資金循環統計「家計」部門 日本銀行 単位億円)
年月 現金・預金 株式以外の証券 株式・出資金 保険・年金 その他 合計
2004/03 7722848 653063 1175007 3774974 758985 14084877
2004/06 7792984 664048 1208338 3801688 761962 14229020
2004/09 7718182 680872 1147018 3804932 767310 14118314
2004/12 7833303 711885 1171727 3802972 765946 14285833
2005/03 7724926 738592 1335726 3822438 649421 14271103
2005/06 7771079 787501 1349684 3836517 672953 14417734
2005/09 7706238 829041 1563287 3845941 692300 14636807
2005/12 7810114 895479 1953968 3872406 728938 15260905
2006/03 7686483 925623 1973399 3911637 668829 15165971
2006/06 7728080 933765 1801854 3924533 663288 15051520
2006/09 7659129 983805 1799970 3947738 723392 15114034
2006/12 7776596 1038565 1985011 3971228 764163 15535563
2007/03 7690743 1079976 2007928 4005581 652871 15437099
2007/06 7776088 1167020 2062655 4018935 685381 15710079
2007/09 7700332 1169197 1858500 4033370 694319 15455718
2007/12 7845275 1161823 1455054 4017445 721002 15200599
2008/03 7753654 1073604 1197442 4026416 594137 14645253
2008/06 7842447 1091380 1287606 4021848 610872 14854153
2008/09 7787597 1019262 1067500 4021263 607420 14503042
2008/12 7915436 917082 870012 3986559 582811 14271900
2009/03 7864214 902072 845913 3933493 547538 14093230
2009/06 7963259 926795 1018485 3924746 580106 14413391



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