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583)三井住友FGが日興コーディアル証券を買収

 三井住友フィナンシャルグループが、2009年5月1日、米シティグループの日興コーディアル証券を買収すると発表した。

 買収額は、5450億円と5月1日付の朝日新聞は報じる。

 日興コーディアル証券は、旧日興証券である。

 日本にはかって4大証券会社として、野村証券、大和証券、日興証券、山一証券があった。

 山一証券は倒産し、今はない。

 日興証券は、2008年にアメリカのシティに買収されて、同グループの子会社と成り、名前も日興コーディアル証券となった。

 大和証券は、大和証券が中心となって大和証券グループを作り、そのグループを束ねる大和証券グループ本社の組成会社として、現在も活動している。

 野村証券は、倒産したリーマン・ブラザーズの日本部門、欧州部門を手中にして、ますます巨大な証券会社になろうとしている。

 三井住友FGは、大和証券グループ本社と共同で大和証券SMBCをつくり出資している。

 三井住友FGは、シティグループより日興コーディアル証券を買収して、同証券と大和証券SMBCを統合する腹づもりであったようだ。

 これに対して、大和証券グループ本社は、「統合ノー」と言い、話がこじれてしまった。結局、三井住友FGは大和証券SMBCへの出資を引き揚げることになってしまった。

 大和証券グループ本社は、銀行の後ろ盾が無くなるという不利な状況を敢えて選んだ。

 三井住友FGは、日興コーディアル証券と大和証券SMBCの統合計画がご破算になると同時に、大和証券SMBCを失うことになってしまった。
  
 日興コーディアル証券の平成21年(2009年)3月期の決算は、下記の通りである。単位百万円。

  営業売上高*   20年3月期    222,810
                    21年3月期    164,135     ▲26.3%

  営業利益    20年3月期     50,945
                    21年3月期     19,685    ▲61.4%

    営業利益率    20年3月期         0.229
                    21年3月期          0.120

 (注) * 損益計算書では「営業収益」の用語となっている。営業利益と紛らわしいことから、分かり易く「営業売上高」と表示する。

 平成21年3月期は、営業売上高は対前年比▲26.3%、営業利益は▲61.4%である。

 営業利益196.85億円の会社を、5450億円の金額で買収するのである。
 投下資本利益率は、

       196.85億円÷5450億円 = 0.036

3.6%である。

 投下資本利益率3.6%は、企業買収としてはあまりにも低い数値である。

 平成20年3月期の営業利益で考えれば、

           509.45億円÷5450億円 = 0.093

9.3%である。

 リーマン・ブラザーズショックで、金融業の利益は大きく伸びないと予測されるとしても、平成20年3月期と平成21年3月期の真ん中辺りの営業利益は確保したい。

      (509.45億円+196.85億円)÷2 = 353.15億円

      353.15億円÷5450億円 = 0.065

      1/0.065 = 15.3

 投下資本の回収は、約15年である。

 金融業の企業買収の投下資本回収年は、この程度は欲しいではなかろうか。

 日興コーディアル証券は、来期以降の利益拡大が要求されるであろう。
  
 以上で、日興コーディアル証券の売買の投資利回りは、6.5%が妥当と分析した。

 今迄証券会社の売買の分析は行っていなかったが、銀行の売買の分析は行ってきた。
 あおぞら銀行の売買の投資利回りは、5.1%であった。
 みずほフィナンシャルグループが、香港の子会社銀行CFBを売却した投資利回りは、5.3%であった。

 また、みずほコーポレート銀行が、みちのく銀行モスクワ現地法人を買収した。その買収利回りは3.7%であったが、近い将来の営業利益の増大が見込まれる要因を加味して、5%の投資利回りと分析した。


  鑑定コラム118)「銀行の売買価格は利回り5%か」

  鑑定コラム1243)「シティバンク日本の個人部門の価格はいくらか」」

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