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64)山中湖村の基準地価格の大幅下落

   2002年7月1日時点の土地の基準地価格が発表された。1月1日時点の価格の地価公示価格を補充する価格で、各地方公共団体が調査発表している。
   基準地価格とはどういうものか?、基準地価格の目的は?、基準地価格の存在価値は?、等のことについては、解説書等があるから、それらで確認されたい。

 新聞は「基準地価下落目立つ別荘地」という見出しで、山梨県基準地価格の山中湖村の地価下落率が全国トップと報じる。(読売2002.9.20)
 全国トップの地価下落率は24.6%である。
 この地価下落率全国トップ地点は、
    山中湖村平野字皆形2197-1331
の土地である。
 前年2001年7月が平方メートル当り21,100円であったが、2002年7月では15,900円になった。

 山中湖村の住宅地には4つの基準地が設定されてあり、その平均価格は、
    2001年   23,200円
    2002年   18,400円
である。(100円未満切捨)
 山中湖村の土地価格の平均は平方メートル当り18,400円と言うことである。
 山中湖村の土地価格の1年間の平均下落率は、
    18,400円÷23,200円=0.793
20.7%である。

 山中湖村の土地と言っても、それら土地は山中湖畔の土地である。
 学生のテニス合宿で賑わう平野のテニス村と呼ばれる地域も山中湖畔にある。
 富士山の北東麓の山中湖畔は、別荘地として知名度が高い。別荘地の購入者の多くは東京の企業や東京の人である。東京の土地が大幅に下落し、経済の景気も悪く長引いていることから、別荘地の購入者は少なく、不況に耐えかねて売物件が増え、それによって別荘地の価格に下落現象が生じたと推測出来る。

 この別荘地の地価下落現象は山中湖の土地だけではない。箱根の別荘地、軽井沢の別荘地、伊豆の別荘地でも以前から生じている現象である。山中湖の別荘地のみ急に年間24.6%下落したことに首をかしげたくなる位である。

 「日本一の地価下落が山中湖村で生じたか」と大抵の人は新聞記事を読む。私もそうである。
 しかし、このニュースを一歩深く踏み込んで考えると、とんでもない事態が生じる予告ニュースでもある。
 固定資産税と関係して考えればその意味が分かる。

 固定資産税は適正な時価によって課税されなければならないというのが、固定資産課税の大原則である。適正な時価とは、「正常な条件の下に成立する土地の取引価格」をいう。「客観的時価」である。実際には地価公示価格、基準地価格と均衡を保って求められた価格ということになっている。その得られた適正な時価の7割の価格が固定資産税評価額である。
 つまり地価公示価格、基準地価格の7掛けの価格で固定資産税評価額が決定されているのである。

 固定資産税評価額が毎年見直されて評価替されていれば問題は発生しないが、3年に一度しか価格見直しは行われない。その3年間に3割以上の土地価格下落が生じたらどういうことになるか。

 適正な時価が3割以上下落したら、適正な時価が固定資産税評価額を下回ってしまうことになる。時価より固定資産税評価額が高いことになる。時価と固定資産税評価額の逆転現象である。この価格逆転現象は適正な時価の3割以上の下落の時のみ起こる現象だけではない。地価公示価格、基準地価格が適正時価を3割以上高く査定されている時にも生ずる。地価公示価格、基準地価格が時価よりも高く査定されているとは思いたくないが、基準地価格が適正な時価を上回っており、適正でないという判決が平成14年3月7日東京地裁でだされた。

 固定資産税の大原則は土地の適正な時価を超えて課税してはいけないと言うことであるから、そのような逆転現象になった場合は、課税している固定資産税は違法ということになる。役所が違法行為を行っていると言うことになる。

 山中湖村の地価が一年間で24.6%下落したとなると、3年間で30%下落することは時間の問題であろう。既にしているかもしれない。
 地価の大幅な下落に伴う固定資産税の不服申立そして裁判は、東京の高度商業地だけの問題で、地方の市町村では関係ないことだと多くの人は思っていたであろう。それは東京の高度商業地だけの問題でなく、全国どこの市町村でも起こりうる問題であることを、山中湖村の基準地価格の大幅下落は示唆している。
 課税担当者は、土地所有権者からの裁判提訴がなされないことを、ひたすら望むのみである。

 地価下落に伴う固定資産税評価額と適正な時価の逆転現象についての判決が、平成12年に東京高裁から出されている。
 その判決の紹介と判決内容の矛盾、論理の一貫性の欠如について論じた論文「固定資産税の適正な時価の東京高裁判決」が『Evaluation』6号p19(プログレス tel 03-3341-6573)に載っている。興味ある人は読まれたい。平易の言葉で分かり易く書いてあり、固定資産税と地価下落について考えさせられる論文である。執筆者は・・・?


 山中湖村の別荘地の価格及び別荘地価格については、下記のものがあります。
 鑑定コラム 382) 「箱根仙石原の別荘地の価格(2007年夏)」

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