民主党党首の鳩山由紀夫首相が、2010年6月2日午前10時01分より始まった民主党両院議員総会で政権を投げ出すと表明した。
沖縄普天間米軍基地移転問題に失敗し、連立を組む社民党が離脱してしまった。これにより、民主党は衆議院では圧倒的多数を占めるが、参議院では単独過半数を占めていないため、社民党が協力しないことによって法案の参議院通過が困難になってしまった。
鳩山首相は、普天間米軍基地の移転問題の失敗が、参議院の法案通過まで影響するとは考えていなかったようである。
民主党側より自らが招いた判断ミスと政治力の無さ、胆力の無さを強く指摘されて、責任を取るごとく政権放棄をしてしまった。
9ヶ月前、衆議院選挙で圧勝し自民党より政権を奪い取って首相になったが、僅か9ヶ月の短い時間で、自ら政権を投げ出してしまった。誰かに脅されたのか。
政権放棄の原因として、この「沖縄の普天間米軍基地の移転問題の失敗」と、「政治と金」の問題とが原因であると議員総会で発言する。
そして「クリーンな政治を、クリーンな政治を」というが、政治にクリーンを求める方が間違っている。
クリーンな政治などあり得ない。
何を子供じみた青二才の様なことを、日本の政治家のトップになって居る人が言うのか。
政治は権力の闘争である。
政権の歴史を見れば、クリーンどころか真っ黒なものである。
権謀術策は当り前、権力から引きずり落とし、時には命まで狙うのが、権力闘争の現実の姿である。
内閣官房機密費の使われ方を見て、何が政治がクリーンと言えるのか。
外国のメデイアで何処のメデイアも、「政治と金」が鳩山の失脚の原因であると捉えていないし、伝えない。
伝えるのは、沖縄の普天間米軍基地を、最低でも県外、出来れば国外と約束したのにもかかわらず、前の自民党政権が米国と約束した沖縄の同じ所の移転となってしまった約束違反による政治家の責任による首相退陣の見方ばかりである。
謀略と策略の国際政治の中で、何をのほほーんと「クリーンな政治を」とのたまう。
政治家に求められるのは、卓越した洞察力である。そして実行力、統率力である。
それが政治力というものである。
鳩山由紀夫首相に洞察力というものがあったのか、甚だ疑わしい。
今、日本に卓越した洞察力を持ち、実行力、統率力をもった腹の据わった政治家が、何人いるのか。
君主論のマキャベリは次のごとく言う。
「突然に地位なり何なりを受け継ぐことになってしまったものにとって、心すべき最大のことは、何よりもまず最初に、しかも直ちに、土台を固めることである。」
鳩山由紀夫は首相に就いた時、直ちに土台を固めたか。
また君主論はこうもいう。
「無理強いされて結んだ協約を破棄するのは、恥ずべき行為ではまったくない。」
普天間米軍基地の移設をアメリカと締結したのは、自民党政権である。
その自民党政権ですら10数年かかっても、普天間米軍基地の移設が実行されていない。
この実態を鳩山首相は洞察出来なかったのか。
私は、アメリカ駐日大使として赴任してきたルース大使が、広島の原爆記念館を訪れた行為を知って、この大使は侮れない大使で、手強い交渉相手だと、鑑定コラム591)「駐日大使のアグレマンは広島平和公園訪問を条件に」で述べた。
それが現実であることが、鳩山由起夫首相の辞任で明白になった。
日本経済新聞2010年6月3日の「株式往来」では、2日のザラ場の状況を記している。
2日9時、日経平均は、前日の終値9,711円83銭を下回る9,604円45銭で始まった。
「取引開始から約30分後、「鳩山由紀夫首相が辞意」の一報が飛び込み、日経平均は下げ渋った。10時20分前後には、「小沢一郎民主党幹事長も辞意」と伝わると、一時は上昇に転じた」と報じる。
結局、2日の終値は、9,603円24銭で終わった。
2010年6月2日の一日の日経平均の動きは、首相が突然辞めるという大政変があったのにも係わらず、
始値 9,604円45銭 終値 9,603円24銭