アメリカ合衆国はオバマ政権になって、日本の駐日米大使も交代した。
大統領選挙に功績のあった論功行賞とマスコミは評するが、それはともかくとして、ルース氏が新しい駐日大使として、2009年8月に就任した。
来日着任早々、戦後60年近く日本の政権を担ってきた自民党政権が倒れ、民主党政権が誕生した。
今迄の自民党の考え方とは、考え方がかなり異なる民主党政権との国家防衛安全保障についての互いの意思の確認、そして外交交渉の必要性が生じることになった。
国家間の約束は、政権が変わってもおなじように引き継がれるべきであるという論理は、自民党内の政権のたらい回しの政権の時には通用するであろうが、自民党と民主党とは、ものの考え方が全く異なり、自民党政権の約束を日本国家の約束だから、民主党も引き継がなければならないという考え方は通用しない。
例えば、前政権が戦争を始めたから、前政権を倒した政権も前政権が引き起こした戦争の続行を引き継がなければならないと云うものでは無かろう。
政権の交代による外交交渉の窓口になるのは、駐日大使館であり、その代表者の大使がその重要な役目をすることになる。
安全保障について、日米交渉が難航することを見越したルース新大使のとった行動は、鮮やかであった。
駐日大使着任2ヶ月にも満たないのに、家族を連れて、広島市を訪れた。
広島平和公園を訪れ、原爆慰霊碑に頭を垂れた。そして原爆資料館に足を運んだ。
2009年10月4日のNHKは、広島訪問のルース新大使の姿をテレビで流す。
そしてルース新大使はいう。
「広島への訪問は、核兵器の破壊性について強く思い起こさせ、核兵器のない世界の平和と安全保障のため、共に協力することの重要性を強く感じさせる」
と。
そして続ける。
「両親と息子と3世代そろって来ることが出来てよかった。ここを訪れる他の多くの人達と同じように、大変心を動かされた」
と。
核武装は勿論、核戦争を嫌う日本人の心を、ルース新大使は、広島平和公園を訪れ、原爆慰霊碑に頭を垂れることで、掴んでしまった。
この行為は見事だ。
日米安全保障交渉の先手を打ってしまった。
原爆資料館を訪れ、核戦争のむごたらしさを初めて具体的に目にしたであろう。
座っていた人の跡のみ残る石段を見て、座っていた人はどこに行ったのだと考えれば、核爆発の怖さが改めて分かろう。
ルース新大使の広島訪問は、ルース新大使の個人的な理由によるものであって、日米安全保障交渉の為では無いという主張はされるであろう。
それなら、それはそれで良い。
私的理由であれ、広島を訪れ、核戦争の悲惨さを目にして、考えてくれればよい。
日本国民、日本政府は、核廃絶を願い、叫んでいる。
核の怖さを世界の人々に知ってもらう為の方策の一つとして、日本に着任する世界各国の駐日大使のアグレマンの条件として、大使着任100日以内に、広島平和公園を訪れることを提案したい。
駐日大使着任100日以内に、広島平和公園を訪れ無かった駐日新大使には、アグレマンを与えない外交政策をとっても良いではないのか。
そんな外交政策をとるのは日本国だけだという人は必ず出てくるであろうが、それが日本人の悪いところで、相手側のことを考えて、自分の意見を言わずに相手に併せる行為をしてしまう。
これが日本人の直さなければならない悪い性格のところである。
世界にアグレマンで条件を付ける国が例え無くても、それだから日本国もそうしなければならないと言うものでは無かろう。
日本国は日本国である。
被爆国は全世界で唯一日本国だけである。
日本国は、広島平和公園を訪れ無かった駐日新大使には、アグレマンを与えないと言うのが日本国の外交政策だと主張すれば良い。
それに従わない国の大使にはアグレマンを与えなければよい。
人権侵害を主張しているのでも無く、当該国を侮辱する行為でもない。
世界の平和を願うだけである。
駐日する外国大使がどれ程居るのか私は知らないが、少なくとも各国の外交の窓口である駐日大使が、広島を訪問することにより、核の悲惨さを知り、核廃絶の必要性に理解を示すであろう。
各大使が母国に帰り、広島で見たことを話すことにより、外交官の話として、それは外交的影響力を持つことになる。
ルース新大使は、よく広島を訪れてくれた。
この行為から判断すると、オバマ米大統領が選んだルース新駐日大使の外交手腕はしたたかなものと、私は推測する。
日本の駐米大使は、着任後100日以内に、パールハーバーを訪れているのであろうか。
<追記>2009年10月9日午後7時30分
本鑑定コラムをアップしておよそ3時間後、2009年10月9日の午後7時のNHKニュースが、2009年のノーベル平和賞にアメリカのオバマ大統領が選ばれたと報じた。
このニュースには驚いた。
どうしてオバマ大統領にノーベル平和賞かと、私は思った。
その理由は、NHKのニュースの説明によると、どうも下記の行動による様だ。
2009年4月、チェコ・プラハでの演説で、次のごとく述べた。
「唯一核兵器を使用したアメリカは、核のない平和で安全な世界を目指して主導的な役割を担いたい」
と。
この演説と「核兵器のない世界」を目指して、核軍縮と核兵器の拡散防止に取り組んでいる姿勢が、ノーベル賞選考委員会で高く評価された様だ。
鑑定コラム592)「NHKのニュースは早い オバマ米大統領ノーベル平和賞授賞」
鑑定コラム666)「鳩山首相退陣は日経平均で▲1.1%」