○鑑定コラム
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2010年7月6日付の日本経済新聞の投資・財務の欄の「一目均衡」のコラム記事で、編集委員の藤田和明氏が、「逆利回り革命のまん延」という見出し記事を書いている。
少し興味を持ったので読んで見た。
利回り革命とは、1958年にアメリカで起こった経済現象で、「配当利回りは、長期金利よりも低くてもよい」という理論という。
それは、株式の成長性によって理論付けられた理論という。
逆利回り革命とは、その逆を言うことになる。
「配当利回りは、長期金利よりも高い」という現象をいうことになる。
即ち、
利回り革命・・・・・・配当利回り < 長期金利
逆利回り革命・・・・・配当利回り > 長期金利
となる。
現在の日本はどういう状態にあるのかと言えば、同日(2010年7月6日)の日経の株式主要指標データを見ると、次のごとくである。
東証上場1部225種平均配当利回り 1.88%(予想)
新発10年国債(308回国債)利回り 1.105%(終値)
これより見れば、
平均配当利回り1.88% > 10年国債利回り1.105%
であるから、完全な「逆利回り革命」である。
日本が逆利回り革命になったのは、1998年(平成10年)という。それ以来、日本は逆利回り革命中という。
米国・ドイツ・フランス等も逆利回り革命状態という。
イギリスは、2010年6月に、
FTSE100銘柄配当利回り3.5% > 英10年物国債利回り3.4%
となり、逆利回り革命の仲間入りになったという。
では、逆利回り革命で無く、利回り革命中の国はどこかと言えば、その国は、ブラジル・中国・インドの新興国であるという。
それならば、利回り革命が良いのか、逆利回り革命が良いのか、どちらが良いのかという疑問が湧く。
利回り革命が、株式の成長性を理由にして良しとされてきたことを考えれば、逆利回り革命は、株式の長期的成長が見込まれないと言うことになり、「悪」ということになるのだが。
その善悪論は、経済学の経済原理或いは市場原理として理論的に実証されているものなのか。
或いは、ただ単なる経済現象の表象にすぎず、「革命」という名称を付けるほどのものでないというものなのか。
つまり、ただ単なる投資家の金儲けの為の、潮目の変わり時をみるための判断の尺度にすぎないものなのか。
不動産鑑定の収益還元法のDCF法の割引率を求める方法として、リスクプレミアムの合理的説明が全くなされずに、
国債利回り 1.5%
リスクプレミアム 2.5%
流動性欠如プレミアム 1.3%
資産の安全性プレミアム 1.0%
───────────────────
計 6.3%
として求める6.3%等の割引率の鑑定書をよく見かける。
国債の利回りはともかくとして、プレミアムの利率として採用している2.5%、1.3%、1.0%の実証的データ分析による説明が全くなされていない。
何故2.5%なのか。
何故1.3%なのか。
何故1.0%なのか。
何に対しての%なのか。
そのデータ分析による合理的根拠は?
それら数値の説明も全くなされず、理論的根拠も、実証データ分析の裏付けもない数値が罷り通っていることに、私は強い疑問を感じる。
採用するからには、採用数値の合理的根拠の説明はするべきである。その説明が出来なければ、その様な数値を採用するべきでなく、書くべきでない。
流動性欠如プレミアム、 資産の安全性プレミアムは、そもそもそれ自体がリスクプレミアムであろう。それをリスクプレミアムと区別して、再度加算するとは、一体リスクプレミアムというものは何なのかと思っていた。
そこへ国債利回りそのものが、利回り革命、逆利回り革命の問題を抱えていることを知ると、それをDCF法の基本の利回りにして、割引率を求める方法に果たして信頼性があるのかという疑問すら生じて来た。
何だかDCF法の割引率の積み上げ方式の求め方そのものが、その場限りの都合の良い言い訳のように思われてきて、信頼性が無いのではなかろうかと思われてきた。
鑑定コラム149)「積み上げ方式の割引率に実証性はあるのか」
鑑定コラム837)「リスク数値の説明が出来ずに積み上げ利回りを使用する不動産鑑定
」
鑑定コラム845)「国債の逆利回り革命(タイ・インド・ポルトガル)」
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