最近、戸建建売業者から不動産鑑定評価の依頼があった。
自社所有の土地建物を、自社の役員に売り払うために鑑定評価して欲しいという依頼であった。
建売住宅会社の社長は、土地価格は相続税の路線価で、建物価格は築後数年経っているが、自社で建てたのであるから建築費がわかっており、簿価で分かるから、その2つの合計した価格で役員に売却しょうとした。
取引先の金融機関にその旨相談したところ即座に、
「それはダメです。
不動産鑑定士に鑑定してもらって、鑑定評価書の金額で売買しなさい。
そうしないと、税務署は金額を否認しますょ。そうなったら大変な事に成ります。」
と言われ不動産鑑定士を捜して私の所に鑑定依頼してきたのである。
鑑定依頼の社長に金融機関の指摘はもっともで、その通りですと私は社長に答えた。
相続税路線価は、相続税の計算の為にあるのであって、売買の価格の為にあるわけでは無い。そして路線価は地価公示価格の8掛けの金額であり、その金額で売買すると、時価よりも2割安い価格となる。
税務署は、それを関係会社とその役員との不動産の適正売買価格として、認めるハズが無い。利益操作とみなされますょと話した。
鑑定書を作成し、鑑定書を届けるために建売住宅の会社にお伺いし、社長と話した。
「社長、どうですか。最近の建売業の景気は? 」
と私は聞いてみた。
建売住宅の会社の社長は、
「業界の景気は良くない。
ここずっと不景気が続いている。売上は落ち込むばかりだ。
持ちこたえている業者もいるが、かなりしんどい状況だ。
うちは小さいから、何とか凌いでいるが。
しかし最近、少し建売住宅の売れ行きが早くなった様な気がする。
底を打ったかなぁ。」
という。
東京の建売住宅の社長の言葉を裏づけるごとく、東京の建売住宅は、今迄の長いジリ貧状態より、底を打って上昇に転じた様だ。
それをデータで分析する。
国土交通省が発表している新設住宅着工戸数の中の分譲住宅(分譲住宅は、マンションと戸建住宅の2つに分かれる)のうち、戸建住宅の戸数を見ると次のごとくである。東京のデータである。
年 戸数 対前年比 17 21,377 ▲10.2 18 20,603 ▲3.6 19 17,543 ▲14.9 20 17,234 ▲1.8 21 13,117 ▲23.9
13,117 ───── = 0.614 21,377
年月 戸数 対前年同月比 平成21年01月 1,111 ▲25.2 平成21年02月 1,088 ▲24.1 平成21年03月 955 ▲41.2 平成21年04月 913 ▲41.1 平成21年05月 919 ▲35.5 平成21年06月 994 ▲39.4 平成21年07月 1,079 ▲28.5 平成21年08月 1,146 ▲25.1 平成21年09月 1,061 ▲21.1 平成21年10月 1,289 1.1 平成21年11月 1,200 ▲3.5 平成21年12月 1,362 15.9
平成22年01月 1,217 9.5 平成22年02月 1,381 26.9 平成22年03月 1,480 55.0 平成22年04月 1,187 30.0 平成22年05月 1,345 46.4 平成22年06月 1,713 72.3
平成21年 13,117戸 平成21年5月〜平成22年6月 17,373戸