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76)スローフードと土地価格

 「スローフード」という言葉がある。
 フアーストフードに対して造られた言葉である。フアーストフードに見られる食材や味の画一化に対抗して、特色ある郷土の食材や料理を守って行こうとするもので、1986年に北イタリアで始まった「スローフード運動」が始まりらしい。(日経2002.6.1)

 日本では「スローフード」は無農薬、減農薬野菜の意味にも使われている。消費者の食材の安心の強い関心を反映して、無農薬の野菜を販売している会社の社長は「販売価格は一般の野菜より10〜15%高い。安心のためなら20%までは理解してもらえる」という。(「らでいっしゅぼーや」緒方大助社長)

 同じ野菜でも食生活の安全性が高いと思われる野菜ならば、20%程度高くても販売出来ると言うことである。このことは、食生活の安全性の野菜は高品質の野菜と考えれば、高品質の野菜は低品質の野菜よりも20%高でも市場性が得られると解釈される。

 この考え方・現象は農業・野菜の業界だけに通用する考え方・現象ではない。不動産の世界にもその現象は存在する。
 「高品質の住宅地の価格は、低品質の住宅地の価格よりも高い」という価格現象である。土地価格経済則である。
 不動産というと建物も含まれるが、ここでは建物を考えずに土地だけで考える。

 大規模造成住宅団地の土地価格と、蚕食的に無計画に開発されて造られた住宅地の価格の間には、はっきりとした土地価格の差がある。
 大規模造成住宅地を高品質の住宅地、蚕食的に無計画に開発された住宅地を低品質の住宅地とすれば、前記土地経済則はそのまま当てはまる。 大規模住宅団地の価格と、それに隣接するか或いは近くに所在する蚕食的に開発された住宅地の価格を調査分析してみた。
 データ分析は宅地造成が盛んの頃でやや古いが、両者の間には次の関係が認められた。


         周辺住宅地価格             分譲住宅地価格倍率
      平方メートル当り万円                倍
            1                            1.85
            2〜4                         1.65
            5〜6                         1.43
            7〜10                        1.38
            11〜15                       1.35
            16〜20                       1.34

 上記住宅地は、主として分譲住宅団地が造られて時間の経過が余り進んでいない場合の周辺住宅地の地価との倍率であり、その後、周辺住宅地の開発が進むと、両者の倍率は縮まる傾向となる。しかし、同じ価格にはならない。土地価格差は長い時間の経過を経ても、歴然とした価格の差がある。

 それは大田区の田園調布3丁目の住宅地の土地価格と、地名に田園調布がついていても1丁目、2丁目、4丁目、5丁目の地域の土地価格とは明らかに価格水準の差がある。
 同じように東京の西の郊外の国立の一橋大学を中心にして、国立高校、桐朋学園、国立音大(付属小・中・高校)を擁する学園都市として造られた住宅地と、それ以外の住宅地との間には土地価格にははっきりとした価格差が今もって存在する。

 上の分析結果から、蚕食的な住宅地の価格が平方メートル当り10万円であったとすれば、近くの大規模分譲住宅地の価格は、
       10万円×1.38=13.8万円
と言うことである。
 逆に大型分譲地の価格が平方メートル当り20万円であれば、その周辺の蚕食的住宅地の価格は、
       20万円÷1.34≒15万円
と言うことになる。

 私は経済学を学んだわけではないが、資本投下した土地価格とあまり資本投下しない土地価格の間に価格差(地代に換算すると地代差)が生じる本件のごとくの現象を、「マルクスの差額地代の第二形態論」というのだと聞いた事がある。学問的にはそういう言葉で表現される経済現象であろうか。
 私にははっきりとわからない。

 上記価格倍率は、住宅地の地域要因の格差(蚕食的な住宅地と大規模分譲住宅地という住宅地域の違い)の一つの目安になるのでは無いかと思う。

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