東京株式市場の日経平均株価が2003年3月11日に7,900円を割り込んだ。この水準は1983年以降の20年ぶりの水準という。
この現象は、あたかもこの20年間で富士山の麓から、富士山の頂上に登り、再び麓にもどってきてしまったごとくである。
この日経平均株価の7,900円割れは、各業界に大きな影響を与えたが、その夜のテレビニュースは、日本経団連の奥田碩会長の記者会見の模様を伝える。
奥田碩会長の発言の中でこんなことをいっていた。
「日本銀行は銀行からの株式購入や国債買い入れを拡大し、REIT(リート)も購入することも考えよ」
と発言していた。
REIT(リート)のほかにETFの購入にも言及していたが、日本経団連の会長から、REIT(リート)という言葉が発せられたことに、私は大変驚いた。
奥田碩会長が自ら発言の原稿を書いたのかあるいは、周辺の裏方が書いたのかわからないが、REIT(リート)、即ち不動産投資信託証券が日本の経済界の最高位にいる指導者から発せられたことは、非常な重みがある。
REIT(リート)を認知してくれたのである。
REIT(リート)とは何なのかと思っている不動産鑑定士がいるとしたら、今からでも遅くない。REIT(リート)を猛勉強して、知識を習得して欲しい。
「俺達には関係ないよ」と思っていることは、相変わらずの「鑑定村」の論理で、一人世の社会経済の流れから取り残されてしまうことを意味する。
日本経済界の指導者ですら、日本銀行にREIT(リート)の有用性を進言したのである。
REIT(リート)に深く関わっているのは不動産鑑定士である。その不動産鑑定士がREIT(リート)を知らなくてどうするのだといいたくなる。
REIT(リート)が全て良いというものではない。欠点もあるが、長所もある。しかし、それらがわかるには、何はともあれREIT(リート)とは何かと、REIT(リート)そのものを知らなければならない。
REIT(リート)は、不動産の賃料を配当の源としている不動産証券化の投資商品であるが、住宅・店舗のローン利息を配当源としているものもある。
アメリカでは、ホテル・工場・老人ホームや、果ては刑務所もREIT(リート)の対象になっていると聞く。
日本では既に6つほどのREIT(日本の場合はJリートと呼ばれている。以下「Jリート」と呼ぶことにする)が、東京証券取引所に上場されている。 配当は年4〜5%の利回りのようである。値動きは日本経済新聞の片隅に載っているから、そちらを見ていただきたい。
森トラスト(前身は森ビルという会社である)の子会社の日本総合トラストが、最近、東京お茶の水にある日立製作所の本社ビルを購入した。(日経2003.3.7)
Jリート組成のための購入である。
日本総合トラストは日立本社ビルのほか、日産自動車本社ビル新館、イトーヨーカドー湘南台店、丸紅大阪本社ビルなど7物件を取得し、Jリートを組成して今年(2003年)10月にJリート上場するという。
本社ビルを手放した企業は退去して、他の賃借人が入居する場合もあるが、売却したのち自らが賃借するというリースバックで利用するのである。
経営の軽量化・合理化にJリートを利用しようとしているのである。
REIT(リート)とはどういうものか。
それを解説した多くの本が出版されているが、その中の1つに、少し宣伝になるが、プログレス社の翻訳出版の『入門不動産投資信託』(R・L・ブロック)を勧める。
アメリカの人々にREIT(リート)を紹介している本の翻訳本である。
REIT(リート)の本場のアメリカの人が書いた、アメリカの人々に対するREIT(リート)入門書である。
この本を読めば、REIT(リート)というものがどういうものか、ほぼ理解できる。
翻訳者は東京大学法学部を出て、東京海上火災保険に長くつとめられ英語、仏語、スペイン語等の文献翻訳が得意で、また、外国のビジネススクールや国内の研究所で、米国の金融制度を長年研究されてきた経歴を持つ不動産鑑定士の松原幸生氏と、津田塾大学の国際関係学科を卒業され、鑑定協会の外国不動産関係の書物の翻訳にも多く携われて翻訳に秀でておられ、不動産鑑定の実務でも活躍されている不動産鑑定士の河邑環氏である。「環」は「たまき」と読む。一度聞いたら忘れられない名前である。
司馬遼太郎は、「日本には日本人の日本語の文章が無かったが、昭和30年の後半から昭和40年頃になってやっと日本語の文章ができあがった。それは週刊誌によって作られ普及した」というが、その「日本人の日本語の日本の文章」というわかり易い日本文にするために、二人は翻訳に相当苦労されたと聞く。
翻訳書の原書の出版会社は、アメリカ・ニューヨークのブルームバーグ社である。現ニューヨーク市長のブルームバーグ氏が、一代で築きあげた著名な大出版社である。その出版社が発行した本であるから、いい加減な内容の書物ではない。
同書はプログレス社が日販、東販の販売ルートを得る前に出版した書物であるため、書店での取次が出来ない。直接プログレス社に申し込んでいただきたい。
プログレス社のホームぺージは、
http://www.progres-net.co.jp/
で、簡単に購入申し込み出来る。
領価は2500円+税である。
文章後半は出版書物の宣伝になってしまったが、たまにはそれはお許し願いたい。
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