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大阪に本店をもつ大丸が札幌に2003年3月6日に開業した。
店舗面積45,000平方メートルで、初年度売上350億円という。(2002.10.18大丸HPプレスリリース)
同HPによれば土地面積は8520平方メートル、建物は地下4階、地上9階建で、この土地、建物を含めて総投資額は350億円という。
売上高と総投資額が同じである。
店舗面積当たりの投下資本は、坪当たり257万円である。
大丸の全体の売上高、営業利益、そして有形固定資産額をみると、
売上高 423,912百万円
営業利益 12,124百万円
有形固定資産額 68,464百万円
である。(2002年2月期)
営業利益率は、
12,124百万円÷423,912百万円≒0.029
で、2.9%である。
これを札幌店に当てはめれば、札幌店の営業利益は、
350億円×0.029=10.15億円
ということになる。
総投資額350億円を回収するには、
350億円÷10.15億円=34.48≒35年
で、35年かかることになる。
これは利息を考えない計算であり、これに利息を考えると35年をはるかに超えた長期の期間になる。もし仮に総投資額が全額借入金で、その借入金利息の利率が2.9%以上であればどうなるのであろうか。
大丸全体の営業利益は121億円であり、札幌の総投資額350億円は、
350億円÷121億円=2.89年≒3.0年
3年で返済可能ということになるが、それは、他店の営業努力を犠牲にする一方、無配という株主の協力、納税の為の借入金等という経営方針を取った場合に出来ることである。
大丸全体の売上高に対する有形固定資産割合は、
68,464百万円÷423,912百万円=0.161
である。
大丸の有形固定資産額の中には札幌店の土地価額が含まれている。
売上高には札幌店は建設中であったから含まれていない。
それ故、大丸の有形固定資産割合はもっと低い割合となる。
他の百貨店のその割合と比較すれば、大丸の有形固定資産割合は非常に低い水準にある。それは本『鑑定コラム』の「伊勢丹が小倉に進出する」でデータ分析されている数値と比較すれば分かる。
しかし札幌店の総投資額を有形固定資産額とみなし、札幌店のみで見れば売上高に対する有形固定資産割合は、
350億円÷350億円=1.0
となる。大丸全体では0.161の割合であるにもかかわらず、札幌店のみでは1.0となる。
札幌店の土地取得は、平成9年3月に旧国鉄土地の競争入札による取得という。
その価格がいか程かは不明であるが、平成9年から平成15年までの札幌商業地の価格下落は、地価公示価格で見れば、
札幌中央5-1 南1条西4丁目1-1 大通り駅近接
9年1月1日 平方メートル当り 500万円
14年1月1日 平方メートル当り 230万円
で、−54%の下落である。(15年1月の地価公示価格は未発表で不明であるため、14年1月1日の価格で計算した。)
取得原価より−54%も土地価格が下落していることから、減損会社の導入あるいは時価評価導入した途端、大丸札幌店は開店と同時に大幅な土地購入に伴う損失が発生することになる。
土地、建物を所有して経営することが、果たして妥当な百貨店経営であるかという問題にぶち当たることになる。
所有不動産の時価評価の大切さは、公認会計士の丸山弘昭氏が新潟鐵工所がもっと早く資産の時価評価を導入しておれば、企業倒産は避けられたのでは無かろうかと述べられている。(本『鑑定コラム』の「新潟鐵工所と会社更生法」参照)
時価評価の経営を考えれば、「所有より賃貸に」という経営方針に、切り替えなければならなくなるのではなかろうか。
SPCという特別目的会社を設立し、札幌店をSPCに売却し、大丸はSPCより賃借し賃料を支払うという方法(いわゆるリースバックという方法)が、経営の健全化になるのではなかろうか。
百貨店の経営のプロから余計のお世話と怒られるであろうが、
売上高=投下資本額
という百貨店経営は、正常とは私には思えない。
伊勢丹の小倉店開店の投下資本は、売上高の20%以下であることは『鑑定コラム』の「伊勢丹が小倉に進出する」で述べた。
伊勢丹の経営方針から見れば、大丸の札幌店進出に対する経営姿勢があまりにも違い過ぎる。
上記で引用した鑑定コラムは下記をクリックすれば繋がります。
鑑定コラム93)伊勢丹が小倉に進出する
鑑定コラム74)新潟鐵工所と会社更生法
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