○鑑定コラム
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賃料評価を行う場合、当該土地建物の必要諸経費の金額を必要とする場合が3つある。
価格時点の新規賃料及び継続賃料の場合と、従前賃料合意時点の継続賃料の場合である。
この必要諸経費の金額は、実額数値が原則である。
賃料には、家賃と地代の2種類があるが、家賃の必要諸経費について、この問題を考えて見る。
減価償却費は、建物価格は不動産鑑定士の評価額により、その金額を経済的残存耐用年数で除して求めることから、数値に違いが出て来るのは仕方がない。
他の必要諸経費の構成項目である、
公租公課
修繕費
維持管理費
火災保険料
の金額は、実額によるのが原則である。
賃貸人側からの依頼の賃料評価の場合は、その金額を依頼者である賃貸人に聞けば、事は済むから問題は発生しない。
賃借人側からの依頼の賃料評価の場合に問題が発生する。
賃借人側の依頼の賃料評価の場合、それらの数値が分からない場合が殆どである。
それだからと云って、評価する人が勝手に数値を決めることはやってはいけない。自分なりの合理的な経費額を求めることが許されるのは、それなりの手続を終えた後に許されるものである。
必要な手続を行わなければならない。
必要な手続とは何か。
それは、賃借人或いは賃借人の代理人弁護士を通じて、貸主側に対して、文書で価格時点、従前賃料合意時点の公租公課等の必要諸経費を教えて欲しい旨の問い合わせを必ず行わなければならない。
貸主側が教えてくれない場合がある。
賃料で争っている場合に、借主側に協力することを潔しとしないと思ってか、貸主側が嫌がらせをしてくるのである。
貸主側が経費の開示要求に協力してくれないことを確認することは、賃借人側の依頼で賃料評価をする場合の評価上の必要手続である。
面倒であるが、この手続は必ず行わなければならない。
この必要手続をした後に、貸主側が経費の開示をしなければ、自らが妥当と思う経費金額を計上して賃料評価しても良い。
但しその場合には、貸主側に何月何日に書面で経費の開示要求をしたが、貸主側は経費の開示に協力してくれなかったということを、不動産鑑定書にはっきりと明記して置かねばならない。
この評価上の必要手続を取らずに、実額と違う金額の経費を計上した場合、問題が生じ、かつその鑑定書の信用性に影響が及ぶ。
実額に優る経費金額は無い。
それを例えば、修繕費の金額を再調達原価の0.3%として求めていた場合、その金額が実額と全く異なり、倍以上の金額が現実には支出されていたとすると、その鑑定書の修繕費の数値が問題になる。
必要諸経費の金額そのものに信頼性が無くなり、それは積算賃料にも及び実質賃料にも及ぶ。
そして差額配分法、スライド法、利回り法の賃料にも及んでくる。
貸主側に必要諸経費の問い合わせを全くせず、不動産鑑定士が勝手に公租公課、修繕費、維持管理費の数値を決めて継続賃料を求めている賃料鑑定書をよく見かける。
貸主側代理人弁護士が、その経費金額は実額の半分にも満たない金額であり、信頼性は全くないと指摘したところ、鑑定書を書いた不動産鑑定士は次のごとくの反論をして来た。
「賃借人が公租公課、修繕費、維持管理費など分かるハズがない。
分からない金額が間違っているとして批判することこそが間違っている。
当方の鑑定評価は適正である。」
と。
その主張は、貸主側に必要諸経費の金額を問い合わせ、貸主側が金額提示を拒否した場合に主張出来るものであって、貸主側に経費を問い合わせるという手続を怠っておいてでは、その主張は通らないものである。
自分の鑑定評価手続の不備を棚に挙げての適正主張は虫がよすぎる。
実額との乖離など関係ないという発想である。
必要諸経費の金額が賃料鑑定で必要とする場面が3つあると、前記した。
その3つの必要諸経費が全て実額とは関係なく求められて、賃料が決定されていた場合、その賃料を妥当と云えるであろうか。
そうした考え方で、実額の半分以下の金額の必要諸経費の金額が適正と主張する合理性は無い。
その様な身勝手な判断による賃料鑑定に正当性はない。
エスカレートして、間違っても次の様な傲慢な反論をしないことを願う。
「不動産鑑定評価基準は、貸主側に必要諸経費を必ず聞くこととは書いていない。それ故、鑑定評価基準違反でもなく、当方の鑑定は適正である。」
と。
実額を無視して、自分勝手な考え方の適正賃料主張をしていると、実額の半値以下が経費として著しく低く経費計算された貸主側が怒り出し、国交省に不当鑑定の申立をすることになるかもしれない。
鑑定コラム646)「自らの間違いを正当であると主張する不動産鑑定士がいるいる」
鑑定コラム675)「同一物件、同一時点で必要諸経費は、新規賃料、継続賃料で変わるのか」
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