日本の、貸家、賃貸アパート、賃貸マンション、賃貸事務所、賃貸店舗、賃貸倉庫の賃料、即ち不動産賃料の総収入はどの位であろうか。
三井不動産の平成25年3月期の決算書によれば、24年4月〜25年3月の1年間の賃貸建物の賃料収入は、4417億円である。
丸の内地区の事務所ビルの大部を所有している三菱地所の24年4月〜25年3月の賃貸建物の賃料収入は、3788億円である。
賃貸住宅の日本一の大家であるUR都市機構の平成24年度の賃貸住宅の賃料収入は、6313億円である。
上場等で公表されている企業の不動産賃貸収入は分かるが、全国の不動産賃貸会社、個人所有の賃貸不動産の賃料収入を知ることは困難である。
国税庁は、集計しているかどうか知らないが、不動産賃貸収入の申告データを集計すれば総額数値を把握することが出来るが、その結果を発表していない。
全国を網羅したマンション、事務所等の種類別の賃料収入の金額を統計したデータ及び賃貸不動産全部の賃料の統計データは私が調べた範囲では見当たらなかった。
そうした統計データがあれば、教えて頂ければ幸いである。
不動産業を監督する国土交通省の「平成24年度国土交通白書」では、賃料については全く記述すらない。
賃料に関係する記述があるのは、「借家の住居費負担」の項目において、負担割合は独身者の男性と女性では女性の方が低いという記述にしかない。
そして総務省調査の「全国消費者実態調査」から引用して、おおよその家賃のグラフを載せているだけである。
同じ国土交通省が発行している「平成25年版土地白書」にも全く賃料についての記述はない。
国交省の白書を書く人の頭からは、賃料というものの概念がそっくり抜けている。
それら白書は、地価公示価格を中心にして土地価格の統計等を使って論述されているが、土地価格はそもそもどうして形成されるのかと云えば、当該土地が産み出す収益が還元されて土地価格は生じるのでは無いのか。
取引事例価格でもって土地価格を説明していても、ではその取引事例価格はどうして生じたのかという説明に、再び取引事例価格を持ってこなければならない。
永遠に取引事例価格で説明することになる。
これではダメであろう。
土地の上に建物を建て、その建物から賃料が得られることによって、土地価格の発生が説明されるのであろう。
このことをほおかむりして、土地価格の比較ばかりして価格を求めていては、何年不動産鑑定評価をしていても、土地価格についてはさっぱり分からないことになる。
収益あっての土地価格である。
その収益である賃料を全く無視して、土地価格論を展開しても仕方なかろう。
経済産業省の商業統計調査に不動産賃貸業の収入の統計があるのではなかろうかと思い、同統計を調べたが、その業種は統計の対象外のようで賃料収入の統計はなかった。
どうも「賃料」は、無関心の種類分野領域のようである。
全国の不動産賃料の総収入はどの位であろうかを知るために、1つの方法をとった。
政府が発表している国民経済計算の産業連関表から推定してみることにした。
内閣府が発表している平成23年の国民経済計算の産業連関表に、住宅賃貸料、不動産賃貸料がある。
住宅賃貸料は、居住目的の賃料と思われる。
不動産賃貸料は、貸ビルや貸倉庫の賃貸営業建物の賃料と思われる。
同産業連関表によれば、下記である。
住宅賃貸料 58,812,133百万円 不動産賃貸料 6,002,510百万円 計 64,814,643百万円
住宅賃貸料 11,929,791百万円 住宅賃貸料の帰属家賃 45,678,819百万円 計 57,608,610百万円
住宅賃貸料 0.207 住宅賃貸料の帰属家賃 0.793
58,812,133百万円×0.207=12,174,111百万円
住宅賃貸料 12,174,111百万円 不動産賃貸料 6,002,510百万円 計 18,176,621百万円
(三井不動産)
0.4417 ───── = 0.024 18.17
(三菱地所)
0.3788 ───── = 0.021 18.17
(UR都市機構)
0.6313 ───── = 0.035 18.17
三井不動産 2.4% 三菱地所 2.1% UR都市機構 3.5%