固定資産税の課税評価額の妥当性を争った車返団地事件は、平成25年7月12日に、最高裁判所で課税評価額の違法性を指摘され、東京高裁に差し戻された。
この最高裁の判決については、鑑定コラム1101)に記した。
東京高裁に差し戻された車返団地事件は、平成26年3月27日に差戻判決がなされた。
再度納税者側の全面勝訴である。
この差戻控訴審判決については、鑑定コラム1185)に記した。
課税側の地方公共団体は、差戻控訴審判決を不服として、再上告した。
平成26年9月30日付で、最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長裁判官、岡部喜代子裁判官、大橋正春裁判官、木内道祥裁判官、山崎敏充裁判官)は、その再上告申立を棄却した。
これで平成21年度課税評価額の妥当性を争っていた車返団地事件は終了した。
納税者側の全面勝利である。
納税者の努力と課税する地方公共団体の違法行為を許さないという強い決意がなさしめた結果であるが、それを達成するために、3人の専門家の存在が大きい。
一人は、不動産鑑定士春名桂一氏の献身的な協力である。
複雑な固定資産税課税評価額の求め方について、春名氏は専門家としての能力の全部を出して納税者の相談にのり、適正な課税評価額の求め方を指導した。
二人目は、吉田修平弁護士の存在である。吉田修平弁護士が代理人を引き受けてくれなかったら、裁判はどうなったか分からない。
三人目は、名前が分からないが、最高裁に上告されてきた事件の下調べ調査をする最高裁調査官である。
最高裁に挙がってくる事件は、民事・行政事件で年間約5000件ある。
その中で、破棄差戻になるのは0.9%(注 後記追記2014年10月21日参照)でしか無い。99.1%は棄却である。
膨大な事件記録を読んで、車返団地事件が、破棄差戻に相当すると、見抜いてくれた最高裁調査官がいなかったら、この事件は棄却として、そこで終わっていた。
固定資産税の課税評価額は、3年ごとに評価替されている。
平成24年度、平成27年度課税評価額も、平成21年度と同じ評価手法、考え方で行われているとすれば、その課税評価額は最高裁の判決から違法となる。
固定資産税の課税評価額評価には、不動産鑑定士が深く関わっている。
最高裁の判決に反する違法な課税評価額評価を行ってはいけないと言うことを、今更云う必要性は無かろうと思うが、固定資産税の課税評価額評価には十分注意を払って臨んで欲しい。
****追記 2014年10月21日 破棄事件割合の訂正
ある弁護士から判例時報に掲載された論文を添付して、やんわりと破棄事件数の割合が違うという指摘がありました。平成25年度の最高裁の破棄事件数は、34件で、上告申立件数に対して0.9%であるとのことでした。
訂正前は、「1.6%」と記述しておりましたが、0.9%に訂正致します。棄却割合は99.1%と云うことになります。
判例時報の論文(判時2224-3)は、『最高裁民事破棄判決等の実情(上)−平成25年度−』(伊藤正春 上村孝由)である。
同論文P6に、平成21年からの最高裁の破棄事件数が記載されている。下記である。
平成21年 68件(2.1%) 平成22年 67件(2.1%) 平成23年 71件(2.3%) 平成24年 60件(1.5%) 平成25年 34件(0.9%)