平成27年3月30日(月)より、NHK-BSプレミアムで、火野正平の自転車による「にっぽん縦断こころ旅」が始まった。
和歌山を出発して、三重、愛知、静岡と太平洋側を北上し、7月20日頃北海道に至る行程である。
平成26年12月19日の宮古島の宮古馬を訪れる旅で、火野正平の自転車の旅は終わった。
2011年2月の旅から4年続いた番組でもあり、これで終わりかなと思っていた。
NHK-BSプレミアムテレビの視聴者の続行希望が多かったのか知らないが、5年目の平成27年も続行されることになった。
番組のファンの一人として嬉しいことである。
朝7時45分から15分見て、夜7時〜7時30分まで「とうちゃこ版」を見る生活がしばらく続きそうである。
居間にいて、日本を旅しているごとくである。
テレビに映し出される風景は、観光という営利が絡む観光地の風景ではない。
特別の人でない極一般の日本で生活している人々が目にしているありふれた風景が、テレビに映し出される。
他人から見れば、何の変哲もない風景であり、まずテレビに映し出されることのない風景が、テレビに映し出される。
その風景が心の風景として、心に深く刻み込まれ特別な風景であるという人がいるためである。
幼い時に母親を亡くし、父親一人に育てられた女性の心の風景は、海の見える高台の公園に登る階段の最上段の一段であった。
公園から見える海の景色ではない。階段の最上段の一段である。
幼稚園の遠足は、海の見える高台の公園であった。
お昼の弁当は、父親が作り、昼休みに勤め先を抜けだし、遠足の目的地である公園に持って行くから待っておいで、そこで一緒に弁当を食べようという約束であった。
お昼時、園児の同級生の多くは母親と一緒に弁当を食べ出した。
幼稚園児であった女性は、公園の階段の上で、弁当を持ってくると約束した父親を待ち続けた。
父親の姿はなかなか見えなかった。
先生や同級生の園児の母親が、一緒に食べようと誘ってくれたが、園児であったその女性は、父親をじっと待ち続けた。
汗を拭き拭き階段を上がってくる父親の姿が見えた。
父親を待ち続けた園児であった女性は、父親の姿が見えた時は、どれ程嬉しかったであろうか。
二人は、公園の階段の最上段の一段に座り、弁当を食べた。
女性の心の風景は、約束を守り、弁当を持って公園まで上がってきてくれた父親と一緒に座って弁当を食べた公園の階段の最上段の一段であった。
幼い心の中に母親のいない寂しさと共に、やさしい父親への信頼が心に深く刻み込まれた出来事であったのではなかろうか。
正平が階段に座り、低くぼそりとつぶやく。
「寂しかっただろうな。**さん来たょ。」
の一声が、番組の良さを倍増させる。
鑑定コラム820)「火野正平自転車のこころ旅」
鑑定コラム1294)「火野正平の「こころ旅2014年 秋」は終わった」
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