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1337)28.6%と3.3%、25.7%と4.3%、11.1%と1.4% 一体これは何か

 野村不動産アーバンネットが発表した東京23区の住宅地の価格(平成27年4月1日時点)を見て、私が頭を抱えてしまったことについて述べる。

 国交省が発表している東京の住宅地の地価公示価格で、次の地価公示価格がある。

 渋谷−4
 東京都渋谷区神宮前4丁目18番7(住居表示)
 平成27年1月1日時点価格 u当り158万円

 この価格の平成26年1月1日時点の価格は、u当り153万円である。

 1年間の価格上昇は、

               158万円
            ──────= 1.033                                 
               153万円
+3.3%である。

 野村不動産アーバンネットが、平成27年4月1日時点の価格として発表した住宅地の価格で、「神宮前4丁目」の地点の価格がある。

 その価格は、坪当り540万円である。

 u当りに換算すると、

     540万円÷3.30578≒163万円
である。

 この地点の1年前の平成26年4月1日時点の価格は、先の鑑定コラム1336)「神宮前4丁目の住宅地価格は年間で28.6%の上昇」で、坪当り420万円と述べた。

 1年間の価格変動率(上昇率)は、

               540万円
            ──────  = 1.286                                 
               420万円
+28.6%であると述べた。

 同じ町丁の渋谷区神宮前4丁目の住宅地の土地価格の変動率が、

          地価公示価格         3.3%
          野村不動産アーバンネット     28.6%
と大きな開きがある。倍率でいえば8.7倍の開きである。

 この様な開きがあるとは、一体どうしたことか。
 どちらの数値を信用すればよいのか。

 基準とすべき時点がずれているとか、場所が異なるとか、道路幅員が異なるとかという指摘があろうが、同じ町丁の渋谷区神宮前4丁目の住宅地である。

 それらの指摘は、苦し紛れの言い訳にしか過ぎず、合理的反論にはならない。

 地価公示価格は、地価公示地設定地域の標準的土地利用の土地の価格である。

 公示地は、接近条件、道路条件等の地域要因、個別的要因は神宮前4丁目の住宅地の標準的土地利用要件を具備している土地と考えられている。

 民間不動産業者が社名を出して価格を発表している事は、それなりの事実根拠に基づき、企業の信用性を背負って発表している行為である。

 時点の違いは、3ヶ月の違いでしかない。
 この3ヶ月の間に、8.7倍の開きが生じる大きな地価変動があったと判断することは出来ない。

 平成27年の土地価格は、

          地価公示価格         u当り158万円
          野村不動産アーバンネット     u当り163万円
である。

 両者の価格の間には、大きな価格差は無い。
 この程度の価格差は、充分許容の範囲である。

 とすると、変動率に8.7倍もの差が生じたのは、前年度の価格が、どちらかがおかしかったということになる。

 野村不動産アーバンネットは、不動産取引、仲介業者である。
 不動産の取引市場について熟知している業者である。

 土地を高く買ったり、安く売ったりしていて、損失ばかり発生させていては、企業存続が出来なくなる。

 仲介行為で、土地を高く売りつけ、仕入は甚だ安く買い入れて、一時的に儲けていても、そうした行為は顧客離れが生じ、企業経営は長続きしない。

 土地の適正時価の把握には、自分達の生死がかかっていることから、安易には考えていない。

 そう考えると、変動率の大きな開差の原因は、地価公示価格の方にあるのでは無いのかという疑問が生じる。

 疑いたくないが、地価公示の平成26年のu当り153万円の価格が高すぎたという可能性の方が高いのでは無いのかということになってくる。

 地価公示価格も、不動産ファンドバブル崩壊による地価下落の修正を行っているのであるから、高いハズがないという反論があろうが、果たしてその反論を、そのまま首肯出来るであろうか。

 平成19年の不動産ファンドバブルで東京の土地価格は高騰した。

 平成19年7月に不動産ファンドバブルは崩壊し、地価は急激に下落した。

 安倍内閣の出現によって、地価の著しい下落は止まり、安倍内閣の超超金融緩和政策によって、地価は上がり始め、リートバブルを引き起こして、現在にある。

 この不動産ファンドバブルの崩壊による大幅な地価下落が、その都度各年の地価公示価格に適正に反映されて、価格修正が行われていたのか。

 激しい地価下落を全て表に出すことをためらい、或いは躊躇して、その都度各年の価格下落幅を少なめにしていたのでは無いのか。

 本来ならばもっと低い土地価格になるものを、下落幅を少なめにしていたために、土地価格は結果的に高い水準にとどまってしまった。

 それが、今回のリートバブルによって、高級住宅地の激しい地価上昇が生じて、上昇率の低率という計算結果が算出されることになり、小幅な下落率の修正であったということが、表に出てしまったということではなかろうか。

 神宮前4丁目の土地のみで、変動率の大幅な開きの現象が生じているのでは無い。

 野村不動産アーバンネットが発表した上昇率上位10位の全ての土地価格に、大幅な変動率の開差が生じているのである。

 野村不動産アーバンネットが発表した土地価格と、同じ町丁にある地価公示価格とその変動率を記すと、下記である。公示価格はu当り万円。


野村アーバン所在 上昇率% 公示番号 所在住居表示 27年公示価格 変動率%
1 渋谷区神宮前4丁目 28.6 渋谷4 神宮前4-18-7 158 3.3
2 港区高輪4丁目 25.7 港12 高輪4-20-19 102 4.3
3 目黒区上目黒3丁目 18.8 目黒9 上目黒3-24-10 69.1 4.4
4 港区南麻布5丁目 17.3 港7 南麻布5-9-1 157 6.1
5 渋谷区松涛1丁目 15.6 渋谷5 松涛1-13-7 147 2.8
6 品川区上大崎2丁目 13.2 品川7 上大崎2-6-12 99.9 3.1
7 港区白金台4丁目 12.5 港6 白金台4-16-4 85.1 3.4
8 板橋区南常盤台2丁目 11.1 板橋3 南常盤台2-25-5 43.7 1.4
9 文京区千駄木2丁目 10.9 文京1 千駄木2-9-14 58.3 2.1
10 新宿区矢来町 10.7 新宿10 矢来町35-5 69 3.0
平均   16.44       3.4


 簡略化して、変動率を対比すると、下記である。

所在 野村上昇率% 地価公示上昇率%
1 渋谷区神宮前4丁目 28.6 3.3
2 港区高輪4丁目 25.7 4.3
3 目黒区上目黒3丁目 18.8 4.4
4 港区南麻布5丁目 17.3 6.1
5 渋谷区松涛1丁目 15.6 2.8
6 品川区上大崎2丁目 13.2 3.1
7 港区白金台4丁目 12.5 3.4
8 板橋区南常盤台2丁目 11.1 1.4
9 文京区千駄木2丁目 10.9 2.1
10 新宿区矢来町 10.7 3.0
平均   16.44 3.4


 年間28.6%の上昇が2年も続くとなると、行政としては、その様な地価上昇を放置しておくことは出来ない。

 国土利用計画法の発動が必要となる。

 国土利用計画法の発動政策の準備に着手しなければならない。

 3.3%の上昇率では、その様なことを考える必要性はないが。


  鑑定コラム1336)
「神宮前4丁目の住宅地価格は年間で28.6%の上昇」

  鑑定コラム1350)「10兆円の不動産業貸出は続く(27年3月)」


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