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前の鑑定コラム1340)「柏崎・阿賀野に」で、長岡のインターチェンジに近いビジネスホテルの客室が満室状態であったことから、私は「長岡は景気がよいのか」と述べ、長岡の景気はそれ程悪く無いのではなかろうかという印象を持った。
そのこともあり、長岡の景気について調べてみた。
長岡は新潟県にある。
新潟には日本銀行新潟支店があることから、そこでは長岡の景気判断をしているのではないかと、同支店のホームページを訪れてみた。
日銀新潟支店の景況調査は、新潟県の全体の経済状態ばかり述べられており、個別都市については、全く述べられていない。
がっかりする。
長岡市のホームページを訪れて見た。
まさかと思ったが、長岡市は、長岡商工会議所及び株式会社ホクギン経済研究所と共同調査で、長岡市の景況DI値を発表していた。
株式会社ホクギン経済研究所は、北越銀行のシンクタンクではないかと思う。
県庁所在都市ではない市が、独自に自分の市の景況調査をして、結果を公表していたのである。
自分の市の景況判断をちゃんと調査して、市の景況を把握しているのである。優れた行政能力を持った市である。立派な市である。
景況調査と税収の相関関係を分析すれば、税収入の予測も把握出来、それによってしっかりした市予算をたてることが出来る。
平成27年1月発表による『平成26年度第3四半期(平成26年10〜12月期)長岡市景況調査報告書(概要版)』が、公表されていた。
これがあれば、長岡の景況がどういうものかが、ほぼわかる。
その調査報告書の中の売上高の動向DI値は、下記であった。
現況 見通
(26年10月〜12月) (27年1月〜3月)
製造業 -8.5 -16.3
卸売業 -34.6 -34.0
小売業 -54.6 -59.1
サービス業 -34.5 -32.7
建設業 -25.0 -31.0
全体 -26.8 -31.3
長岡の産業界の売上高動向は甚だ悪い。
26年10月〜12月期よりも、27年1月〜3月期は、なお悪いとDI値は報告されている。
サービス業の中の旅館・ホテルについては、次のコメントが書かれている。
現況(26年10月〜12月) は、「飲食店、旅館・ホテルは悪化」とある。
見通(27年1月〜3月)は、「旅館・ホテルは大幅な悪化の見通し」とある。
長岡市の発表している売上高DI値から判断すると、長岡のホテルの景況は甚だ悪いと云うことになる。
しかし、私が宿泊した平成27年4月下旬の長岡のビジネスホテルは、満室の状況であった。
たまたま、私が宿泊した日だけ満室状態というものだったのかと疑問が湧く。
長岡の客室稼働率を調べて見る。
観光庁発表の長岡の宿泊施設(従業員10人以上)の客室稼働率は、次の通りである。単位%。
25年 26年
1月 46.7 55.7
2月 57.2 61.1
3月 60.4 64.9
4月 67.1 61.3
5月 67.4 69.6
6月 73.1 68.4
7月 70.7 72.4
8月 78.1 79.1
9月 68.0 69.7
10月 76.4 74.9
11月 76.3 69.9
12月 64.3 61.8
平均 67.1 67.4
25年より26年の客室稼働率は、少し上がっている。稼働率は下がっていない。
長岡のビジネスホテルの客室稼働率を推定してみる。
新潟県の平成26年の類型別宿泊施設の客室稼働率(従業員10人以上)は、観光庁の調べでは、下記である。単位%。
全体 56.7
旅館 45.1
リゾートホテル 31.4
ビジネスホテル 69.1
シティホテル 63.3
会社・団体の宿泊所 41.4
長岡の宿泊施設の客室稼働率は、先に述べた67.4%である。
当該市の類型別の客室稼働率は、
その県の類型別稼働率
当該市の全宿泊施設稼働率×──────────────
その県の全宿泊施設稼働率
の算式から求められる。
69.1%
67.4% × ────── = 82.1%
56.7%
長岡市のビジネスホテルの客室稼働率は、82.1%と推定される。
82.1%は、平成26年の客室稼働率である。
平成25年の長岡市のビジネスホテルの客室稼働率を求めてみる。
新潟県の平成25年の類型別宿泊施設の客室稼働率(従業員10人以上)は、鑑定コラム1222)「平成25年の宿泊施設の客室稼働率は大幅にアップ66.3%」で記事にしている。それから引用する。単位%。
全体 55.9
旅館 44.8
リゾートホテル 33.8
ビジネスホテル 66.3
シティホテル 62.8
会社・団体の宿泊所 53.0
25年の長岡の宿泊施設の客室稼働率は、先に述べた67.1%である。
25年の長岡市のビジネスホテルの客室稼働率は、
66.3%
67.1% × ────── = 79.6%
55.9%
79.6%である。
長岡のビジネスホテルの客室稼働率をまとめると、
平成25年 79.6%
平成26年 82.1%
である。
長岡市のビジネスホテルが不景気であるとは思われない。
平均で82.1%の客室稼働率であれば、私が泊まったビジネスホテルが満室状態であったことは充分納得できる。
長岡市の旅館の客室稼働率は、
45.1%
67.4% × ────── = 53.6%
56.7%
と推定される。新潟県の旅館客室稼働率が、45.1%であるから、それよりも8.5ポイントも高い稼働率である。率で云えば18.8%(53.60÷45.1=1.188)も上位である。
一方、長岡市の宿泊人数について述べると、下記である。データは観光庁の調べによる。単位人。
25年 26年
1月 32,490 32,471
2月 35,600 32,410
3月 44,318 41,114
4月 45,170 33,823
5月 48,224 41,302
6月 51,085 41,736
7月 47,062 47,340
8月 58,404 56,938
9月 44,446 43,876
10月 50,980 46,971
11月 50,605 43,522
12月 42,783 37,759
合計 551,167 499,262
宿泊人数は、減少している。
26年の宿泊人数が、前年同月を上回っている月は7月のみで、あとの11ヶ月は全て下廻っている。
26年4月、6月では万人単位で減少している。これは何があったのか。
客室稼働率は上昇しているのに、宿泊人数が減少していることは、これはどうしたことか。
長岡市が全く調査せず、景況判断の蚊帳の外に置いている家賃について述べる。
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会発表のデータによった私の分析では、長岡市の1LDK〜2DK(面積40u)の住宅家賃は、
平成26年4月 u当り 1,285円
平成27年4月 u当り 1,320円
である。
この1年間で長岡市の住宅家賃(面積40u)は、
1,320円÷1,285円=1.027
2.7%値上りしている。
家賃が値上りしていることは、入居希望者が多いということであり、それは景気は悪くないことを意味する。
景気が悪い時には、入居希望者が多くないことから、家賃は値上りしない。
貸主は値上げ要求などしない。
ホテル稼働率の上昇、家賃の値上り状況を見ると、長岡市の景気は、長岡市が発表している景況DI値が示すほど悪いとは私には思われない。
上で述べた長岡市の家賃分析結果については、新潟県の住宅家賃分析として、後日記事にして示す。
****追記 27年5月11日 新潟県の27年4月の家賃
新潟県の27年4月の住宅家賃について、鑑定コラム1343)「上越市の家賃10%ダウン」の記事で述べました。その記事の中で、長岡の家賃及び上昇率も書かれています。
鑑定コラム1340)「柏崎・阿賀野に」
鑑定コラム1222)「平成25年の宿泊施設の客室稼働率は大幅にアップ66.3%」
鑑定コラム1056)「各市の旅館・ホテル等類型別客室稼働率を知るには」
鑑定コラム1343)「上越市の家賃10%ダウン」
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