○鑑定コラム
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2015年4月の中旬に、金沢に行って来たこともあり、金沢等石川県の家賃は、北陸新幹線の影響をどの様に反映しているのか調べて見た。
後日のいつの日にか、石川県の平成27年4月の家賃はどれ程であったかを知りたいと振り返った場合には、すこしは役に立つであろう。
住宅家賃の分析データは、全国宅地建物取引業協会連合会が運営する「ハトマークサイト」というホームページの「賃料相場」から、1LDK・2K・2DKのグループの賃料(面積40u)である。
分析結果は、下記である。u当り単価円。
27年4月a 26年4月b 変動率a/b
金沢市 1,183 1,153 2.6%
小松市 1,058 993 6.5%
輪島市 − − −
加賀市 935 968 ▲3.4%
羽咋市 775 963 ▲19.5%
かほく市 1,113 1,195 ▲6.9%
白山市 1,108 1,118 ▲0.9%
能美市 1,285 1,040 23.6%
野々市市 1,168 1,185 ▲1.4%
能美郡川北町 − − −
河北郡津幡町 950 1,075 ▲11.6%
河北郡内灘町 1,045 1,008 3.7%
羽咋郡志賀町 1,045 1,125 ▲7.1%
羽咋郡宝達志水町 − 1,000 −
平均 1,060 1,048 1.1%
値上りしているのは、金沢、小松、能美、内灘の4市町である。
金沢、内灘の家賃の値上りは、恐らく開通した北陸新幹線の影響であろうと判断出来るが、小松、能美の家賃値上りが、どうも分からない。
小松は金沢の南西方向、福井・大阪方面にある。
北陸新幹線は金沢止まりである。いずれ福井まで延長されるであろうと云う期待があるが、それが実現するかどうかは不確かである。小松までは新幹線が来ていない。
何故家賃が上がっているのか分からない。
小松は、小松製作所(現コマツ)の発祥の地であり、石川県内にあって、金沢に次ぐ第2の都市である。その都市であるから、新幹線が金沢まで開通したことによって、東京の経済の影響が及ぶという思惑によるものであろうか。
小松以上に、能美市の家賃の値上りが分からない。
能美市は、小松市の北東隣にあり、金沢寄りの都市である。
平成17年の平成の大合併で、寺井町、根上(ねあがり)町、辰口(たつのくち)町が合併して、能美市になった市である。
根上町は、プロ野球の巨人軍で活躍し、大リーグのヤンキースでも活躍した松井秀喜氏の出身地である。
今年(2015年)3月、ヤンキースの代表選手であり、背番号の「2」番はヤンキースの永久欠番になるであろうとささやかれ、野球殿堂入り確実と云われるデレク・ジーターが、引退後、日本を訪れ、松井秀喜氏と共に、根上町の松井秀喜記念館を訪れたことを新聞で知って、驚いた。
寺井町は、九谷焼の里である。
古九谷ではない。新九谷焼の里である。
九谷焼は、現在の加賀市になっている山中温泉の九谷という小さな村落から生まれた焼き物である。
その名前は、山中温泉の集落を1番目の「谷」と数えて、9番目の谷の村落であったことから、「九谷」と呼ばれるようになったと聞く。
この九谷村の古九谷焼が寺井に伝えられ、それが現在の九谷焼になったようである。
この九谷焼について、雪の結晶の研究者であった中谷宇吉郎氏が、随筆「九谷焼」で述べられている。
中谷宇吉郎氏は、その随筆で、寺井の九谷焼は「寺井焼」であり、「真正の九谷焼」ではないと断じておられる。
随筆の書き出しは、「震災で失ったものの中で、この頃になって、惜しいと思い出したものは九谷焼である。・・・・・」で始まる。
九谷焼の始まりについては、「伊万里焼を倣って後藤才次郎という人が、九谷村で適当な粘土を得て造りだしたのが九谷焼の起りで、前田家治卿がパトロンとなってあれだけ発達したものなのである。」と述べる。
そして「寺井焼」と称する焼き物については、下記のごとく述べる。
「私が小学校へ入った頃から、四里ばかり離れた隣郡に寺井という町があって、そこに陶器の会社が出来た。そこでは、九谷を日用品として造り始めた。大量生産で「機械を据え」つけて、製品をどんどん売り出したのである。これが案外販路がひらけて、四、五年後には、この方が九谷焼としてより認められるようになって来た。しかし、これを老人たちは寺井焼といって、九谷焼とは称せなかった。」
その理由について、随筆の中で述べられておられるが、ここでは割愛する。
随筆には、九谷焼に絡んで、金沢で過ごした旧制第四等学校時代の中谷宇吉郎氏の姿が描かれている。
数百の中から漸く一個位しか揚りのよい品が出来ないという結晶体の菓子鉢を見て、四生の中谷氏は、N氏に云う。
「科学の重要ところはそこにあるのだ。薬と精密なバランスで秤って、色々のくみあわせをつくって置いて、その各々を色々の温度と色々の時間で焼いて見て、高温計と時計とで、精確な記録をとっておけば、「アフリカの砂漠にその記録を落としておいて、仏蘭人が拾って」焼いてみても立派な結晶焼ができるはずですというのだ。N氏も勿論同感してくれた。」
ここに中谷宇吉郎氏の将来の研究者の姿が、かいま見えてくる。
物理学者の寺田寅彦の随筆も学生の頃よく読んだが、中谷宇吉郎氏の随筆もよく読んだ。
金沢等の家賃についての記事が、いつの間にか中谷宇吉郎氏の「九谷焼」論の紹介になってしまった。
中谷宇吉郎氏の「九谷焼」の随筆は、青空文庫が公開しています。
少々長いが、読まれることを勧めます。
下記のアドレスで読むことが出来ます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/53228_49814.html
鑑定コラム1099)「落合ダムと小説」
鑑定コラム1353)「三十間長屋」
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