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渋谷区の商業地の土地価格の底値は2002年だった。
国土交通省が毎年発表している地価公示価格で、渋谷区の全商業地の平均値を分析すると、次のごとくである。(平方メートル当り円)
地点数 平均地価 変動率
1993年(平成 5年) 17地点 12,446,000円 −
1994年(平成 6年) 20地点 7,516,000円 -39.6%
1995年(平成 7年) 21地点 5,263,000円 -30.0%
1996年(平成 8年) 21地点 3,845,000円 -26.9%
1997年(平成 9年) 21地点 3,390,000円 -11.8%
1998年(平成10年) 21地点 3,325,000円 -1.9%
1999年(平成11年) 21地点 3,056,000円 -9.9%
2000年(平成12年) 21地点 2,926,000円 -4.3%
2001年(平成13年) 21地点 2,882,000円 -1.5%
2002年(平成14年) 37地点 2,636,000円 -8.5%
2003年(平成15年) 37地点 2,651,000円 +0.5%
2004年(平成16年) 37地点 2,681,000円 +1.1%
右端の数値は、対前年の価格に対する変動率である。
この変動率の数値を追っていくと、2002年までマイナスが続いている。
マイナスの数値は、地価が下落している事を示す。
これが、2003年には僅かであるがプラスに転じた。
翌年の2004年もプラスである。
これから見ると、渋谷区の商業地の土地価格は、2002年が底値だったということになる。
今年(2004年)の3月に、本鑑定コラム151)
「東京都心部の住宅地価の底値は2002年4月だった」
というかなり大胆な見出しの記事を発表した。
戸建住宅の売物件の土地価格を毎月分析している、不動産鑑定士市場賃料研究会の分析に基づいて、2002年4月が住宅地価格の底だったと発表した。
この内容は、「週刊エコノミスト」にも4頁に渡って、同会の代表が発表した。
余談になるが、その記事の中で、分析結果は私の分析によると私の名前が記してあった。
他日、東京に住んでいる大学の同窓の連中10人ほどが6年振りほどで会う機会があった。中には大学卒業以来初めてという連中も居た。その会食した時に、旧日本長期信用銀行に勤め現在は別の会社の役員をしている友人から、
「週刊エコノミストを読んでいたら、田原の名前が突然出てきたのには驚いたょ。」
と冷やかされたのには参った。
東京都心部住宅地の地価の底は2002年4月と歩調を合わせるごとく、渋谷区商業地も2002年が底値であることがわかった。
渋谷区商業地の地価の下落は、1993年(平成5年)から2002年(平成14年)までの間に、実に約80%の下落である。
2,636,000円÷12,446,000円=0.211≒0.20
激しくて、恐ろしい地価の下落である。
現在(2004年)の渋谷区商業地の地価は、平方メートル当り2,681,000円であるが、バブル経済前の地価水準はどれ程であったか。それは下記の通りである。
1983年(昭和58年) 11地点 2,603,000円
1984年(昭和59年) 11地点 3,046,000円
1985年(昭和60年) 11地点 4,896,000円
現在(2004年)の渋谷区商業地の地価は、1983年(昭和58年)の地価水準とほぼ同じである。
即ち、地価上昇のバブルが始まろうとした水準にまで下落してしまったのである。
それはあたかも、富士山の麓から頂上に登り、再び麓に戻って来てしまったごとくの「行って来い」の状態になったのである。
この地価の激しい下落の反動か、或いはバブル経済の壊滅的な崩壊の反動というのか 、東京の一部の土地にあっては「ファンドバブル」と称してもよい地価の上昇現象が生じている。
それは何が原因かというと、不動産の証券化、流動化が引き起こした貸ビル物件探しによる価格上昇である。
Jリートの対象ビルも含まれるが、私募債ファンド発行目的の賃貸ビルの入手争奪による地価の上昇である。
現在の貸ビルの価格は、積算価格では不動産購入者はまず購入しない。
そのビルの賃料収入によって価値を把握する。
従前は永久還元の収益還元法で価格が求められていたが、その方式では収益のうち、どれ程が借入金の返済に回されるか全く分からず、価格の健全性、透明性が不明であった。
これに比し、借入金を前提にしたDCF法による収益価格は、例えば借入金を純収益の60%で計算して価格が求められているとすれば、残りの40%は貸ビル所有者の手許に残ることになる。こうした考え方で価格が決定されていれば、その価格決定にも納得でき、加えて、、まず途中で貸ビル業者が倒産して、借入金の返済が出来なくなるという危険性は甚だ低いと判断する事が出来る。
これは、お金を投資する人にとって、投下資本のリターンの透明性が得られることになる。
借入金返済を導入したDCF法の最大のメリットは、投下資本の回収の透明性が計られることである。
これを従前の永久還元の収益還元法では、収益価格は同じく求められるが、その価格のうち借入金の返済に回されるのがどれ程であるのかさっぱり分からない。
投資家にとって、極端な事を言えば、収益価格がどんな価格、高かろうが安かろうがどんな価格水準でもよい。そんな事は最大の問題では無い。投下資本が確実に回収出来るか否かが問題であり、知りたい事である。
こうした事から見れば、借入金を導入して不動産価格を求めるDCF法の求め方は、投資家にとって頼りになる収益還元法である。バブル崩壊で高い授業料を払って得た学習効果である。
しかし、そのDCF法の収益還元法によって、ファンドバブル現象が生じつつある。
それは、現在の賃貸ビルでの採用割引率は6〜8%程度であるが、物件確保の為に、4〜4.5%の低い割引率によるDCF法の収益価格による賃貸ビルの取引が出現しはじめた為である。
不動産鑑定のDC法に使用する割引率は、銀行、商社、証券会社等が使用する手形割引、金融割引の割引率とはややニュ−アンスが異なる。
同じ割引率という言葉を使用するが、不動産鑑定のDCF法に使用する割引率は、不動産が類型ごとにそれぞれが持つ利回り(ここでいう利回りは必要諸経費を含めない純収益に対する利回りで、ネットの利回りである。)を反映しており、その利回りには不動産のリスクが全て折り込まれていると考えられ、その利回りは還元利回りに置き換えられる。
不動産鑑定のDCF法に使用する割引率は、地域性等をも反映して不動産の類型ごとに持っている還元利回りの値におおよそほぼ同じである。
上記でいえば、6〜8%の還元利回りで求められていた賃貸ビルの価格が、4〜4.5%の還元利回りで計算される収益価格で取り引きされているという事である。還元利回りが低くなれば、価格は逆に高くなる関係にある。
これは都内の全域ではなく、不動産ファンド適合物件に当てはまる賃貸ビルの話である。
しかし、不動産ファンド適合物件の払底により、その現象が他の不動産ファンド目的不適格な賃貸ビルにも、購入目的を異にして値上がりする可能性はある。
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