賃貸ビル業や分譲マンション業を行っている大手不動産会社の東京建物が、ゴルフ場を購入した。(2004年4月1日 東京建物HPプレスリリース)
東京建物は、今後ゴルフ場の再生事業に進出するという。
購入したゴルフ場は、旧名では「日光インターカントリークラブ」で、名称を「日光ゴルフパークハレル」と替えて、東京建物が経営することになった。
前の所有者は、大成建設の子会社と聞く。
売買価格は約2億円という。
東京建物の発表によれば、売上高は3億円を見込んでいるという。
ゴルフ場の取得価格は、予想売上高に対して、
2億円÷3億円=0.67
である。いささか安い金額での取得である。
3億円の売上高とすると、ゴルフ場の標準的営業利益率は売上高の15%程度であるから、営業利益は、
300,000,000円×0.15=45,000,000円
となる。
経営配分利益率を10%とすると、ゴルフ場の不動産に属する利益は、
45,000,000円×(1−0.10)=40,500,000円
である。
還元利回りを10%とすると、ゴルフ場の価格は、
40,500,000円÷0.1=405,000,000円
4.05億円である。
この価格は、売上高に対して、
4.05億円÷3億円=1.35倍
である。即ち売上高の1.35倍がゴルフ場の価格となる。
このゴルフ場の売上高と価格の倍率関係は、本ホームページの『鑑定コラム』29)
「川奈ゴルフ場の価格」
で述べている平均値1.51倍(標準偏差0.24)に近く、標準偏差の1倍の範囲内の倍率である。
日光ゴルフパークハレルの価格は、4.05億円程度と推測されるが、現実の売買価格は約2億円である。
両価格の間には、
4.05億円−2億円=2.05億円
という著しい開差がある。
この原因は何か。
その本当の事由は、売主、買主の当事者しか知る由は無いが、外部から推定するに、それは会員権の預託金債務のカット率に影響しているのでは無かろうかと思う。
会員権の預託金を除く、建物建設費、ゴルフ場建設費等の今迄に累積した全ての赤字は、親会社の大成建設が全額債務を負担するとし、会員には会員権の預託金の債権カットを飲んでもらうという解決方法である。
会員権の預託金カット率を90%とすると、
2.05億円÷(1−0.9)=20.5億円
20.5億円の債務があり、この10%がゴルフ場購入者の引継債務となる。
20.5億円×0.1=2.05億円
が引継債務である。この金額をゴルフ場の価格より控除する。
4.05億円−2.05億円=2億円
2億円が購入価格となる。
なんだか辻褄あわせの数字の堂々巡りのごとく見えるが、一つの価格分析の考え方と思っていただきたい。
ゴルフ場の購入者側に、何らかの事由によって、2.05億円程度の金額の持ち出し、或いは負担の生じることがあって、2億円の金額に決定したのでは無かろうかと推測する。
以上の事は、あくまでも私の推測の価格分析であり、全く的はずれである可能性もあることを承知していただきたい。
なおゴルフ場に関する記事の鑑定コラムには次のものがあります。
鑑定コラム 29)「川奈ゴルフ場の価格」
鑑定コラム 62)「ゴルフ場の減損会計」
鑑定コラム 91)「日本のゴルフ場数は2067ヶ所」
鑑定コラム 129)「本間ゴルフ場の阿蘇のゴルフ場売却」
鑑定コラム 156)「いつまで続くゴルフ場鑑定のセミナー講師」
鑑定コラム 174)「ゴルフ場の固定資産税は高すぎる」
鑑定コラム 198)「ゴルフ場の売却が続く大手不動産会社」
鑑定コラム 381)「ゴルフ場が最悪期を脱した」
鑑定コラム32)「企業収益還元法」