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1696)2017年国民審査を受ける最高裁裁判官7人の裁判官としての信条と心構え

 2017年10月22日の衆議院総選挙投票に伴い、最高裁裁判官7人の国民審査も同時に行われる。

 時事通信社が、国民審査を受ける7人の最高裁裁判官に対して、3つのアンケートを行い、その回答を2017年10月14日にリリースした。

 アンケートの質問は

 (1)裁判官としての信条と心構え
 (2)憲法改正について
 (3)原発事故を踏まえ、司法の責任や原発をめぐる訴訟への姿勢について

の3点である。

 時事通信社のアンケート結果記事のうち(1)の「裁判官としての信条と心構え」についての回答を下記に転載する。

 小池裕(こいけ・ひろし) 裁判官出身
 「常に中立公正であること。法と良心に従い、幅広い視野から事件に取り組み、考え方の筋道がよく分かる判断をするように努めたい。」

 戸倉三郎(とくら・さぶろう)裁判官出身
 「当事者に主張立証を尽くす機会が与えられ、裁判所が適正で公平な審理判断をしたかという観点から二審までの手続き・判断を先入観なく審査したい。」

 山口厚(やまぐち・あつし) 学者出身(刑法)
 「当事者の主張に耳を傾け、証拠に基づいて、中立・公平で公正な判断をすることが必要だと考えている。」

 菅野博之(かんの・ひろゆき)裁判官出身
 「誠実と共感を信条とし、意識的に多数の観点から見ることを心がけてきた。さらに広い視野から見直しながら、バランスのとれた適正な判断ができるよう努めたい。」

 大谷直人(おおたに・なおと)裁判官出身
 「予断を持たずに事件に取り組み、判決などで具体的な理由を示すに当たっては、最終審としての説明責任を果たす内容になるよう力を尽くしたい。」

 木沢克之(きざわ・かつゆき)弁護士出身
 「約40年間、弁護士の活動から培った経験や市民感覚を踏まえ、弁護士出身の裁判官であることの自覚と誇りを持って、正義と公平、健全な社会常識にかなう法律の解釈・適用に努めたい。」

 林景一(はやし・けいいち)行政官出身(外務省)
 「重大な責任を心に留め、公平・公正な審理を尽くしていきたい。」

 以上7人である。

 7人の出身は、裁判官出身4人、学者出身1人、弁護士出身1人、行政官出身1人である。

 検察官出身が今回は一人もいない。どうしてなのか。たまたま検察官出身の最高裁裁判官の定年退職者が一人もいなかっためなのか。

 小池裕最高裁裁判官は、私が東京地裁の借地非訟の鑑定委員をしていた時に東京地裁の所長をされており、鑑定委員会の年1回の総会の会議の時に挨拶されたことを記憶している。

 東京地裁の所長職は出世コースと聞いているが、東京地裁所長、東京高裁長官を経て、やはり最高裁の裁判官になられておられた。

 私は不動産の価格、賃料に関係する裁判の鑑定を多くやって来た。

 他の分野の裁判は私は知らないが、不動産の価格、賃料の裁判で幾度となく感じたことは、「裁判官ょ、もっと不動産の価格、賃料について勉強してくれ。」ということであった。

 価格、賃料は経済行為によって生じる金銭結果である。

 それを法律で妥当かどうか判断することは、法律に判断の基準とする数値、割合が明示してある訳でないことから、甚だ良し悪しの判断は難しい。

 法律に00円以上の価格・賃料は違法であるとか、00円までは違法で無いとは書いてない。

 価格、賃料の妥当性を判断するには、それを形成する諸要因の理解と知識が無ければ無理である。

 法律の条文解釈に明け暮れしてきた裁判官に、それを期待するのは無理がある。

 時々知ったかぶりをして、とんでもない判決を下す裁判官がいる。

 期待するのは無理とはいえ、裁判官の判決は強制力を持っていることから、適正妥当な判断がどうしても要求される。

 そのためには価格、賃料の勉強が必要である。

 裁判官の不動産の価格、賃料の妥当性の判断を手助けをするのが、裁判所鑑定人不動産鑑定士の不動産鑑定評価書であるが、それがまたとんでもない間違いをやっている場合もあり、そういう時でも、盲目的に鑑定人の不動産鑑定書を信用して判決が書かれてしまう。

 裁判所鑑定人の不動産鑑定書は正しいと思い込んでしまい、間違っているかどうかの判断すら行おうとしない裁判官もいる。

 不動産価格・賃料の裁判で、一審の地裁の判決がおかしなものがでても、余程のことがない限り、二審の高裁は一審支持の判決が出されてしまう。

 それはおかしいと最高裁に上告しても、3ヶ月程度で上告棄却されて、おかしな一審の判決で確定と言うことになってしまう。

 おかしな判決を受けた側は、頭カリカリして裁判への不信をますます募らせるが、その怒りは時間をかけて自身が鎮めざるを得ない。

 事件は多様化している。

 「開かずの扉」と言われる言葉が無くなる様に、最高裁の裁判官は、もっと多くの破棄差戻判決を出して欲しい。

 そして裁判官の人数をもっともっと増やすことを行って欲しい。


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