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賃料鑑定における積算賃料は、
基礎価格×期待利回り+必要諸経費等=積算賃料
の算式で求められる。
不動産鑑定評価基準は、上記算式のうち基礎価格と期待利回りについては、下記のごとく定義する。
基礎価格については、
「基礎価格とは、積算賃料を求めるための基礎となる価格をいい」(平成26年改正鑑定基準国交省版P32)
と定義する。
期待利回りについては、
「期待利回りとは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待される純収益のその資本額にたいする割合をいう。」(平成26年改正鑑定基準国交省版P32)
と定義する。
では、必要諸経費等について、不動産鑑定評価基準はどういう表現をしているか。
次のごとく述べる。
「不動産の賃貸借に当たって、賃料に含まれる必要諸経費等としては、次のものがあげられる。
ア、減価償却費(償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合には計上しない。)
イ、維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)
(以下省略) 」
鑑定評価基準には、「必要諸経費とは・・・・」の記述は無い。定義が抜けている。
読む人は、必要諸経費の具体的構成要素は分かるが、必要諸経費とはどういうものかが、はっきりと分からない。
賃料評価の積算賃料にとって、必要諸経費とはどういう内容性格のものか、それらを述べた必要諸経費等の定義が必要である。
積算賃料の必要諸経費等の定義として、私が著書に述べている内容は、
「必要諸経費とは、賃貸目的の不動産が賃貸収入を得るために必要とする諸経費をいう。収入に対応しないものは経費にならない。」(『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』P89 プログレス 2017年2月)
である。
こうした定義は、不動産鑑定評価基準には、是非必要である。
何故必要かといえば、最近賃料の必要諸経費とはどういうものか、必要諸経費の内容をはき違えた裁判所の賃料鑑定書によって、大変な迷惑を受けたからである。
件の賃料鑑定書は、「エレベータ保守費等、床清掃、ガラス清掃、貯水槽・消火設備」の費用を共益費と認識し、それに掛かった費用を必要諸経費から控除して残った費用を積算賃料の必要諸経費とした。その必要諸経費を用いて積算賃料を求めていた。
つまり、上記費用は共益費であるから、共益費は積算賃料を形成しないという考え方による賃料鑑定である。
そもそも積算賃料に共益費という用語は無いのにも係わらず、裁判所鑑定人不動産鑑定士は、積算賃料に共益費という用語と概念を持ち込んで賃料鑑定していた。
「エレベータ保守費等、床清掃、ガラス清掃、貯水槽・消火設備」の費用は、貸ビルの収入を得るに必要な経費であろう。収入に対応する費用であろう。
とすれば、それら費用項目は、積算賃料の必要諸経費である。
積算賃料の必要諸経費には、共益費の費用と呼ばれるものは含まれなければならなく、控除するという考え方など無い。
「エレベータ保守費等、床清掃、ガラス清掃、貯水槽・消火設備」の費用は、共益費云々など関係無く、それは積算賃料の必要諸経費を構成するものであるから、必要諸経費に含めて積算賃料を求めなければならない。
「エレベータ保守費等、床清掃、ガラス清掃、貯水槽・消火設備」の費用を含めずに求められた積算賃料は、それを積算賃料とは呼べない代物である。
しかし、この不完全な積算賃料を適正な積算賃料であると裁判官は判断し、判決文を書いた。裁判官は積算賃料がどういうものか全く知らずに、鑑定人不動産鑑定士の鑑定が正しいと思い込んで判決するのである。
その結果、共益費を形成する費用類は、積算賃料の必要諸経費を構成するものであるから、共益費として必要諸経費から控除する必要性は無いというこちらの主張は認められず敗訴である。敗訴でがっくりである。
何ともおかしなあきれてしまう裁判判決である。
競争が激しく、難関な司法試験に合格し、裁判官になると、裁判官の思考能力では、不完全な積算賃料が適正な積算賃料に見えるらしい。
そうはいっても、この様な判決が罷り通っていて良いものでは無かろう。
当方側の代理人弁護士はカンカンになって怒っている。
公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会の中に、不動産鑑定評価基準改訂委員会というものがあるならば、現行不動産鑑定評価基準の改正にあたっては、必要諸経費等の定義を書き加えて頂きたい。
鑑定コラム241)「不動産鑑定評価基準とは」
鑑定コラム1840)「償却前期待利回りで減価償却費を費用計上している賃料は間違いではないか」
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