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1884)2012年2月以降の建設工事費デフレーターの全ての数値が変更

 国土交通省は、平成31年1月31日に、法律違反の調査の仕方によった厚労省の毎月勤労統計調査の平成23年4月〜12月の再集計値が分かれば、平成30年11月の建設工事費デフレーターを、平成31年2月中旬に発表すると同省のホームページに発表していた。

 平成31年2月19日に、建設工事費デフレーターの平成30年11月の数値を、国土交通省は発表した。

 その発表に伴い、次の説明が付けられていた。


 「〇お知らせ(平成31年2月19日付け)
 建設工事費デフレーターの算出に使用している「毎月勤労統計」及び「企業向けサービス指数」が遡及訂正されましたので、2011年度以降の値を更新いたしました。
 更新箇所は、(年度)2012年度以降、(四半期別)2012年1-3月以降、(月別)2012年2月以降です。
 そのため、先月までの公表値と差異がありますので最新のデータをご使用ください。」


 鑑定コラム1882)「毎月勤労統計調査の指数の不動産鑑定への影響」の記事の中で、「再集計値の平成23年4月から12月までの毎月勤労統計調査の指数が分かった場合、既に発表されている2018年10月までの建設工事費デフレーターの指数数値が、全部変更されることになるのであろうか。」と述べた。

 その心配が現実になった。月ごとの建設工事費デフレーターの指数数値は、2012年2月以降の指数数値が全て変更してしまった。

 同鑑定コラムで、「例えば、非木造非住宅の2018年10月の構造別デフレーター指数(2011年=100)は、

        鉄骨鉄筋コンクリート造   109.9
        鉄筋コンクリート造          109.2

である。」と記したが、その数値は、下記のごとく変更した。

        鉄骨鉄筋コンクリート造   110.1
        鉄筋コンクリート造          109.4

  鉄骨鉄筋コンクリート造    109.9 →  110.1 ・・・0.9%のアップ 
 鉄筋コンクリート造          109.2 →  109.4  ・・・0.18%のアップ

 0.9%のアップなど大した事無いと思われるかもしれないが、1棟の事務所ビルの建設工事費が30億円であったとすると、0.9%は、

             3,000,000,000円×0.009=27,000,000円

2千700万円の金額差が生じる。

 0.9%の違いだからと云って大した事無いと云って見過ごし出来るものでは無い。

 建設工事費30億円の事務所ビルは、規模では6,000u程度のビルである。

 丸ビルは37階建で、述べ床面積約16万uで、現在の再調達原価は800億円になろうとする。そうしたビルでは、0.9%の価格割合差は、7.2億円の金額差が生じる。

 このことは、賃料にも影響を与えてくる。

 ほぼ完成して、提出間際になっていた賃料鑑定書は、平成30年10月の建設工事費デフレーターの指数を直近の発表数値として使用して、10数前の建物を建てた時点の指数との変動率を、10数年前の建築工事費に乗じて、平成31年2月時点の建物の再調達原価を求め、建物価格を求めていた。

 建築工事費が判明している場合の建物の再調達原価を求めるには、上記の方法が最も良い方法である。

 厚労省の毎月勤労統計調査の指数が間違っていると分かり、国土交通省は、平成31年2月19日に建設工事費デフレーターの指数数値の2012年2月以降の数値を全て変更した。

 このことにより平成30年10月の指数は、109.9→110.1に変更された。加えて直近の指数として、30年11月の指数も発表された。

 30年10月の指数が変更されて発表され、11月の指数が発表されては、その指数を使用して再調達原価を求め直さなければならなくなる。

 再調達原価が変更すれば、建物価格は違った価格に当然なってくる。

 建物価格が異なれば、賃料の基礎価格も異なって来る。

 基礎価格が異なれば、期待利回り、純賃料も違ってくる。

 建物価格が変更すれば、減価償却費も異なって来る。必要諸経費も異なって来る。

 純賃料、必要諸経費が異なれば、積算賃料も違ってくる。

 比準賃料は変更ないとしても、積算賃料が異なれば、新規実質賃料も異なって来るかもしれない。

 新規実質賃料が異なれば、継続賃料の差額配分法の賃料も異なって来る。

 利回り法は継続賃料利回りの決定の際には、新規賃料の期待利回りを考慮せょと鑑定基準は云っている。

 期待利回りが異なれば、継続賃料利回りも異なって来るかもしれない。

 価格時点の必要諸経費は、減価償却費の変更から異なる。

 とすると、利回り法の賃料も異なって来る。

 スライド法の賃料は、「なお書き」の手法、つまり従前賃料にその後の賃料変動率を乗じて求めているから建物価格の変更の影響は及ばなかったが、純賃料に変動率を乗じて求める方法を行っていたら、価格時点の必要諸経費が減価償却費が変更することからスライド法の賃料も異なって来ることになる。

 スライド法の変更はなかったが、差額配分法、利回り法の賃料が異なって来れば、決定継続賃料は異なって来る。つまり鑑定評価額が違ってくる。

 結局、賃料鑑定の計算を全部やり直し、鑑定書の書き直しをやらなくてはならなくなってしまった。

 2012年2月以降の建設工事費デフレーターの指数数値が全部変更されると云うことは、私の不動産鑑定評価の価格評価、賃料評価に、全面的やり直しという大きな影響を与えた。

 今迄信頼して建設工事費デフレーターの指数数値を使用していたが、その信頼が薄らいでしまった。厚労省の毎月勤労統計調査は、とんでもないことをしでかしてくれた。


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「毎月勤労統計調査の指数の不動産鑑定への影響」



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