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207)新規家賃・収益家賃のセミナー講演を終えて

 2005年3月15日、お茶の水の中央大学駿河台記念会館での新規家賃・収益家賃のセミナー講演を無事終えることが出来た。

 会場は中規模会場で定員80名のところを90名近くの参加者があり、予想外の参加者の数に驚いた。

 北は北海道、南は沖縄から私の拙いセミナーを聞きに来て下さった。
 鑑定コラムの186) 「沖縄の家賃と不動産利回り」 の記事で、沖縄−東京間の航空運賃往復約7万円は高すぎると私はぼやいていた。その高い航空運賃を払い、なおかつ安くないセミナー料を支払っての参加である。話す方としては、そこまでして来て下さったのかと思うと頭が下がる。
 大変ありがたいと思う一方、セミナーの内容は果たして参加者を満足させるものだったろうかと私の方が心配になってきた。

 セミナーは、著書の『賃料<家賃>評価の実際』を土台にして、著書に書いてない私の苦い経験、不動産鑑定士が新規家賃を求める時に陥りやすいところを重点的に話した。

 多くの人から、
 「『賃料<家賃>評価の実際』の本をどこを探してもない。著者である田原さんの所にないか。あったら譲って頂きたい。」
という問い合わせが多い。
 不動産鑑定士、それも若い人が多い。ついで弁護士である。
 ある弁護士は、
 「弁護士会の図書館にいっても貸し出し中であり、国会図書館まで行って見たが、訴訟の関係上一冊手許においておきたいから一冊あったら欲しい。」
という人もいた。そういう弁護士には即刻宅配便で本を送った。

 『賃料<家賃>評価の実際』の本は絶版である。どこを探してもない。
 大きい図書館にはあるかもしれない。
 希望者には、著者購入として手許に購入してしていたものを譲っていたが、それにも限界があり無くなってきた。

 セミナー参加者は若い不動産鑑定士が多かった。
 勤め先の鑑定事務所の所長から、
 「田原の家賃の話を聞いて勉強してこい。」
といわれ、かつ
 「家賃評価に興味があるがどうして求めていいのか分からなく、求めてみたが結果の妥当性に自信がなく参加しました。」
という若い不動産鑑定士が結構いたようである。

 所長自ら手取り足取り教えるよりも、東京で裁判の家賃評価で多くを実践し、苦労している人の話を聞かせた方が、社員の家賃鑑定の教育には手っ取り早いかもしれない。

 地方では経験出来ない案件など、生の家賃評価の話が聞けることが出来ると考え、社員をセミナーに送り出した所長である不動産鑑定士に私は感謝したい。

 セミナーの内容は、家賃評価で陥りやすい、多くの不動産鑑定士が実際に引き起こしている間違いの部分を指摘した内容を話した。逆に言えば、その部分を知っておれば間違いのない新規家賃を求めることが出来るということになる。

 話した内容はかなり辛口である。偉そうなことを言ったかもしれない。
 セミナーを聞いていた一人は、セミナー終了後、
 「今迄多くのセミナーを聞いて来たが、通り一遍のものが多かった。今回はそれらとは全く異なり迫力あり実務に深くつっこんだもので、大変勉強になり、教えられるものが多いセミナーだった。特に若い不動産鑑定士にとっては勇気づけられ、道案内にもなる役に立つセミナーではなかったか。」
と言って下さった。
 全員がそうでもないであろうが、参加者の一人からでもそうした感想を持った人がいたということは、講師として大変うれしい。

 参加者は不動産鑑定士が多かったが、不動産鑑定士のみでなく、金融機関、不動産調査会社、大手不動産会社、大手建設会社、リート関係者、ファンド発行者等と業種は多岐に渡っていた。

 若い人の中にまじり、私より一回り以上年上の不動産鑑定士の方が、私の話を聞きに来て下さったことには頭が下がる。およそ30年程前、共に、後に最高裁判所の裁判官になられた東京地裁の安岡所長代行の面接を受け、東京地裁の不動産訴訟の鑑定人の道を歩んで来た人である。
 「田原の話を聞いて、家賃評価のおさらいをしたかった。」
と謙虚に参加の理由を話されたことには恐縮してしまった。

 最近、家賃鑑定書を読んでも良く分から無いとか、何かおかしな家賃の感じがすると言って、どうしてかやたらに家賃の鑑定書を見てくれという要望が私の所に来る。
 裁判所鑑定人の家賃鑑定書、民間依頼の家賃鑑定書である。
 どうしてこうも疑惑ある家賃の不動産鑑定書が増えだしたのであろうか。
 社会情勢の変化なのか。何かおかしい。

 2ヶ月後の2005年5月19日には、新規家賃より一歩踏み込んだ、奥の深い継続家賃のセミナー講演がある。私の苦い経験から得た間違いやすい継続家賃の話をすることに依って、より適正な継続家賃の求め方を話そうと思う。

 しかし、4時間のセミナー講演は疲れる。
 喉はカラカラになり、法廷での鑑定証人尋問を終えたと同じか、それ以上の疲労感を味わった。
 

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