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186)沖縄の家賃と不動産利回り

 今年(2004年)の9月の末頃に沖縄に行って来た。初めての沖縄である。
 企業の減損会計に伴う資産のオフバランスの為の不動産鑑定評価である。
 近づきつつある減損会計に対して企業は、不動産の時価の把握に、本格的に行動を起こし、対処しつつある。

 台風による飛行機の欠航を気にしながら、現地確認、登記所、役所、事例収集と限られた時間での行動のため、沖縄見物など全く出来なかった。

 遅くついたホテルの近くで見つけた居酒屋で、本場泡盛を口にする時間しか無かった。

 大学の頃、沖縄から留学して来ていた沖縄特有の珍しい名前の友がいた。パスポートを持って日本に来ていた。
 その頃は、沖縄はアメリカ軍の統治下にあり、日本は外国であり、日本の大学に来るには外国留学であり、パスポートが必要であった。
 パスポートなど見たこともなく、どんなものか、もの珍しく見せてもらったことを思い出す。

 雪の無い沖縄から来て、いきなり最初の年に、来る日も来る日も雪が降り、屋根に積もった雪の重さで襖が動かなくなることに遭遇して驚いたであろう。 その上、小路の両側の家の屋根から降ろした雪で、小路は雪で埋まり、雪が電話ボックスの上までにもなってしまった。
 電話ボックスを下に見て小路を歩き、下宿先の1階の小屋根の上の雪を踏んで、臨時の出入口となっている2階の窓から下宿先に出入りしなければならなくなった。

 38豪雪(昭和38年の北陸の大豪雪)と呼ばれる豪雪である。沖縄から、よりによって何故こんな所に来なければならないのかと思ったのでは無かろうか。私だって豪雪には面食らった。こんな所はイヤだと青空の見える表日本の故郷に逃げ帰りたかった位である。沖縄からの留学生にいささか同情した。
 大学卒業後は一度も沖縄の同窓生には会っていないが、風のたよりでアメリカ軍政下の沖縄で弁護士になったという噂を聞いた。

 不動産鑑定のDCF法の価格を求めるためには、賃料を知る必要がある。
 不動産仲介業者の募集中の賃貸アパートに次のものがあった。
 名護市のアパートである。


   a 東江 5.8万円  3DK 和6・6.5・4.5・K6
   b 大東 4.0万円  2DK 和6・洋6・K6
   c 大東 4.3万円  3DK 和6・4.5・4.5・K6
   d 幸喜 4.6万円  2LDK 和6・洋6・K10
   e 幸喜 5.0万円  2LDK 和6・洋6・K9

 東京では「アパート」と言えば、木造か軽量鉄骨造2階建の共同賃貸住宅を指すが、沖縄ではRC造8階建の賃貸住宅でもアパートと言う。
 東京ではRC造の共同賃貸住宅は賃貸マンションと称するが、沖縄ではRC造の共同賃貸住宅もアパートと呼ぶようである。
 アパートメントの語源を考えれば、沖縄の呼びかたの方が、本来かもしれない。

 上記データより、居宅・台所を含めたいわゆるLDK1畳当り価格は、例えば a の東江のデータでは、
     58,000円÷(6+6.5+4.5+6)=2,522円
となる。

   同様にa〜eのデータから求めると、2DK〜3LDKのLDK1畳当りの賃料は、
     2,047円〜2,522円
である。

 この他にアパートには、押入・浴室・トイレ・玄関・廊下がある。
 それらの面積が、専有面積に占める割合を知る必要がある。

 那覇市の売りマンションで、LDK以外の部分の面積割合を分析する。
 分譲マンションでは、必ず専有面積が表示される。そして間取りも明示される。
 1畳は1.65平方メートルであるから、上記のごとくで求められたLDKの畳数を、平方メートルに換算して分析した結果は、下記の通りである。売価格は万円、面積は平方メートルである。

     売価格    専有面積 LDK面積  その他面積  割合 
  安里  790   64.17   36.3    27.87   0.4343
  久米  2500   70.19   52.8    17.39   0.2478
  前島  1680   71.48   54.5    16.98   0.2375
  松尾  900   50.75   33.5    17.25   0.3399
  松尾  1200   56.50   40.4    16.10   0.2850
  港町  900   53.07   41.3    11.77   0.2218
   高良  1080   63.26   42.0    21.26   0.3361
    平均                                               0.3003

   その他面積=専有面積−LDK面積
   割合 = その他面積÷専有面積

 上記分析より、LDK面積以外である浴室・便所・押入・廊下の「その他面積」の割合は、専有面積の30%を占めることが分かった。

 この割合を名護市のアパート家賃にも採用する。
 名護市のアパートの家賃は、
      LDK1畳当り2,047円〜2,522円
であった。
 この家賃から、専有面積1畳当りの家賃は、
      2,047円×(1−0.3)〜2,522円×(1−0.3)
      =1,433円〜1,765円
と求められる。

 この家賃は1畳当りの家賃である。
 1畳=1.65平方メートルであるから、平方メートル当り家賃に換算すれば、
      平方メートル当り868円〜1,070円
である。中央値を取れば、970円である。

 名護市のアパートの家賃は平方メートル当り970円と推定される。

 賃料は居宅の家賃を中心にして形成される。
 倉庫・工場・事務所の賃料は、アパートの賃料と無関係には形成されない。必ず用途の要因を反映して、均衡を保って形成されている。

 工場の賃料は、アパートの賃料の0.7掛け程度である。
      970円×0.7≒680円
 工場の賃料は平方メートル当り680円程度と推定される。
 あとは個別要因の古いとか、広大とか、破損があるとか等の要因修正を行って、当該建物の妥当な賃料を決定すれば良い。

 名護市のアパートの例で分析したが、この手法は日本全国何処においても適用出来る。募集賃料から家賃を推定する一つの分析方法である。

 募集賃料と実際の契約賃料との間に差があるのでは無いかと云う疑問があろうが、アパートの賃貸募集の場合は、長期に空室が生じることを貸主は嫌う。そのため実需に基づいた募集賃料の設定が多く、募集賃料と契約賃料とはほとんど同じである。入居者が2,3ヶ月で決まらなかった場合には、貸主は家賃を値下げして入居者を見つけようとする。時には契約時に数%の値引きをする場合もあるが、それらは、全体から見れば僅かの部類である。

 売アパートで下記のものがあった。これから利回りを求める。
     粗利回り=年間賃料収入÷売価格
として計算する。
 売アパートのデータは、土地建物面積、築年は省略し、売価格と年間賃料収入のみ記す。それから上記式により、粗利回りを計算する。売価格と年間賃料収入の単位は万円である。

   所在       売価格     年収  粗利回り%  
  那覇市松尾     12,000     900    7.5
  那覇市樋川     16,000    1,200    7.5
  沖縄市大里      2,800     230    8.2
  沖縄市上地      5,800     619    10.7
  石垣市皆野宿     7,450     864    11.6
  石垣市川平      9,800    1,044    10.7
  石垣市新川      6,700     825    12.3
  石川市伊波      8,250     864    14.7
  与那原町板良敷   26,500    3,151    11.9
       平均                                       10.6

 アパートの募集賃料とは異なり、賃貸アパートの売価格である。所有権の売買である。その価格ですんなりと言い値で買う買主はいないであろう。20%引きと考え、0.8掛けの売買価格と推定する。
 平均粗利回りは、
      10.6%÷0.8 ≒ 13.3%
と修正される。
 必要諸経費割合を35%とすれば、
      13.3%×(1−0.35) ≒ 8.6%
である。
 沖縄のアパートの還元利回りは8.6%と求められる。

 これに当該不動産の築年、地域性等を加減すれば、還元利回りは求められる。
 貸工場、貸倉庫の還元利回りは、アパートの還元利回りを中心にして、用途の要因を反映して必ず均衡していることから、それらの還元利回りも求めることが出来る。

 あわただしい沖縄の不動産の鑑定評価であったが、原価法(土地建物の価格より分析する方法)とDCF法による収益還元法との間には、価格の開差は、ほとんど無い結果となった。

 沖縄の不動産も、収益性に裏付けられて価格形成されていると、分析の範囲では思われる。但し、これはあくまでも一部の分析によるものであり、沖縄全体に当てはまるか否かは分からない。

 沖縄を離れる朝、泊まったホテルから配布された地元地方新聞の琉球新報の不動産広告欄を見ていたら、こんな不動産広告が出ていた。
 「売軍用地、沖縄市山内、7412万円 、1635平方メートル、カテナ飛行場、年間地代218万円」

 地代の粗利回りは、
      218万円÷7412万円=2.9%
である。
 固定資産税がどれ程か分からないが、軍用地の地代が粗利回りで2.9%とは。 加えて、軍用地が売買の対象になっていることに、いささか驚いた。

 もう一つ、東京〜那覇間の航空運賃の高いのには参った。
 片道34,800円である。往復約70,000円である。
 旅行ツアーでは甚だ安いものがあるであろうが、2,3日前にしか行動予定の組めない人にとっては、正規の航空運賃で利用せざるを得ない。

 利益は人が運んで来てくれるのである。こうも航空運賃が高くては、沖縄に何度も行くことが出来ない。沖縄は遠くにあるという感じになる。

 沖縄に経済特区をつくり、沖縄の経済の活性化を図ろうという政策が唱えられているが、その前にするべきことは、航空運賃の大幅な引き下げが必要では無かろうか。
 「人が利益を運んできてくれる」という、商売の大原則を再認識する必要があるのでは無かろうか。

 沖縄に関する記事はもう一つあります。これは不動産鑑定とは全く関係ない記事です。
 鑑定コラムの中で唯一異質な記事です。

  鑑定コラム200)「見抜かれている日本人の行動」


 沖縄の軍用地に関しては、次の鑑定コラムの記事があります。

  鑑定コラム297)「沖縄の軍用地の価格と地代についての論文」

 その他沖縄に関するコラムは下記です。

  鑑定コラム1221)「沖縄の家賃」

  鑑定コラム432)「那覇市の2007年ホテル客室稼働率74.2%」

  鑑定コラム532)「宮古島とWBC」

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  鑑定コラム666)「鳩山首相退陣は日経平均で▲1.1%」

  鑑定コラム1053)「火野正平が唄う2つの歌」


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