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2198)年賦償還率=利率+償還基金率

 不動産鑑定評価の書物を読んでいたところ、年賦償還率(元利均等年賦償還率、以下「年賦償還率」と呼ぶ。)は、利率に償還基金率を加えた率であるという。

 算式でいうと、

         年賦償還率=利率+償還基金率
であるという記述である。

 「エッ、そうなの?」

と、私はその記述を見て驚いた。

 その書物には、そうなるという算式の証明は無い。読者にゆだねるということであろうか。

 年賦償還率は、先に述べたが元利均等年賦償還率のことである。元金と利息を併せた借入金の返済額を一定にしてある期間で返済すると云うのが元利均等年賦償還率である。

 数式は、r:利率、n:年数とすると、

            r(1+r)のn乗(注)
            ───────                                          
            (1+r)のn乗−1
である。

(注)指数表示が当コラムでは出来ない為、「のn乗」という表示にする。(1+r)×(1+r)は(1+r)の2乗ということである。(1+r)のn乗とは、(1+r)をn回掛けるという意味である。

 償還基金率とは、n年後1円にするために毎期末に預託すべき率をいう。

 例えば、耐用年数n年の建物の取得価格を、n年後に再取得するために、年利率r毎年末に一定額を償却額とし積立てる場合に使用する率が償還基金率である。

 数式は、
                  r
            ───────                                          
            (1+r)のn乗−1
である。

     年賦償還率=利率+償還基金率

という算式は、r:利率、n:年数とすると、

              r(1+r)のn乗                 r
            ───────   = r +──────                   
             (1+r)のn乗−1           (1+r)のn乗−1
ということである。

 上記左辺の年賦償還率の数式から、右辺の数式が導き出せるものか。

 導き出そうとして、私は左辺を分解し、掛けたり、割ったりして試みたが、右辺の数式を導き出せない。

 本当に

     年賦償還率=利率+償還基金率

であろうかと疑問を持ってしまった。

 いろいろ策を考えたが、左辺=右辺の数式を導き出せない。

 仕方がないことから、左辺=右辺の等式が成り立つ事を前提にして考えて見ようと分析方法の転換をして、解法を考える事にした。

 (1+r)のn乗は面倒であるから、これをAと置き換えて、上記等式を考えて見ることにした。

 上記等式は、下記となる。

              r×A               r
           ─────  = r+ ────                               
             A−1            A−1

             Ar
 左辺は、───── である。                                        
            A−1

r Ar  右辺の r+────── が、左辺の───── になるかどうか右辺を計算して見た。 A−1   A−1
 下記である。


                  r                  r(A−1) +r
        r+  ────   =     ───────────              
                A−1                   A−1

                                     rA−r + r
                         =     ─────────                  
                                      A−1

                                     Ar
                         =     ──────                        
                                    A−1

Ar  右辺は、───── となった。
A−1

 とすると、

     年賦償還率=利率+償還基金率

の等式は成り立つということになる。

 (1+r)のn乗=Aと置き換えて求めた右辺の計算式を良く見てみた。
 
 そこで、右辺に何故+が出て来るのか気付いた。

 左辺の元数式にある工作をすれば、右辺が求められるのでは無かろうかと思われ、再度めげずに左辺から右辺の証明に取りかかった。

 左辺の元数式を次のごとく操作する。

                  r(1+r)のn乗        r(1+r)のn乗 − r+r
                ─────  =  ───────────            
                 (1+r)のn乗−1         (1+r)のn乗−1

 左辺の分子に−rを加える。−rを加えただけでは分子の値が変わってしまう。分子の値が変わらない様にしなければならない。

 分子に+rを加える。
    −r+r=0
であるから、分子の値は変わらない。

     r(1+r)のn乗 − r+r
   ──────────  の分子をrでくくると、下記式に変型される。
(1+r)のn乗−r
r((1+r)のn乗 −1) +r ───────────     (1+r)のn乗−1

 この算式の分子と分母の (1+r)のn乗−1を消去する。

 そうすると、
    r((1+r)のn乗 −1) +r                r
   ───────────  = r + ─────                     
       (1+r)のn乗−1                  (1+r)のn乗-1
となる。

   即ち
                               r
            r +    ──────                              
                         (1+r)のn乗-1
となる。

 
             r(1+r)のn乗                     r
            ───────   = r + ──────                   
             (1+r)のn乗−1             (1+r)のn乗−1
の算式が成立する。

 上記解析によって

      年賦償還率=利率+償還基金率

の算式の証明が出来た。

 具体例で実証して見る。

 利率rを2%とする。期間nを2年とする。

 この条件の年賦償還率は、

       0.02×(1+0.02)の2乗         0.02×(1.02)×(1.02)
     ───────────  =─────────────           
        (1+0.02)の2乗−1          (1.02)×(1.02)−1

0.020808 = ────────  0.0404
= 0.5150495
  0.5150495である。

 償還基金率は、
               0.02                  0.02
            ───────  =  ────────────             
           (1+0.02)の2乗−1           (1.02)×(1.02)−1

0.02 = ───────  0.0404
= 0.4950495
0.4950495である。

 償還基金率は0.4950495と求められた。利率は0.02である。償還基金率に利率を加算すると、
                  0.4950495+0.02 =0.5150495
0.5150495と求められる。

 年賦償還率は、0.5150495と求められている。利率+償還基金率で求められた値も0.5150495である。

      年賦償還率=利率+償還基金率

の算式が適正と具体例よりも証明される。


  鑑定コラム2199)
「建物還元利回りが、土地還元利回りの年賦償還率とはおかしいではないか」

  鑑定コラム2342)「元利均等年賦償還率の鑑定コラム2198が18位に入る 令和4年1月1日アクセス統計」


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