借地を第三者に売り払う場合は、事前に地主の許可を必要とする。
地主に無断で借地権を他人に売り払った場合には、その借地権の土地賃貸借契約は無効となり、借地権は消滅する。
それ故、借地権を売買する時には、必ず事前に地主に借地権譲渡の許可を得なければならない。
地主が許可してくれない時には、裁判所に借地権譲渡許可の申立を行う。これは借地非訟事件として、裁判所は調査、事情を勘案して、地主に変わって借地権譲渡許可をしてくれる。
借地権の売買で、地主が借地権譲渡の許可をただで許可してくれるのであれば、それが最も好ましいことであるが、まずただでOKを出してくれる地主はいない。許可するには幾ばくかの金銭を地主は要求する。
この借地権譲渡の許可を得る為に地主に支払う対価を、名儀書換料或いは名義変更料、借地権譲渡許可承諾料という。
では、借地権譲渡の許可を得る為に、地主に支払う承諾料の対価はいくらなのか。
この場合の地主への承諾料の対価は、借地権価格が基準となる。
東京にあっては、借地権価格の10%が名儀書替料である。
例えば、当該借地の更地価格が1億円であったとする。借地権価格割合が70%とする。
借地権価額は、
1億円×0.7=7,000万円
である。
名儀書替料は、
7,000万円×0.1=700万円
ということになる。
増改築承諾料、借地条件変更承諾料は、土地利用の効用増が計られることから、借地人が得べかりし効用増の利益に対して、地主が失う不利益の均衡を計るために承諾料が必要と説明出来る。
しかし、名儀書替料については、借地人、地主の間の利益、不利益の均衡による金銭の授受という説明では説明され得ない。
名儀書替料の授受の合理的理由は、私は新しく借地人になる人が、当該土地を利用して地主に地代を確実に支払ってくれるという土地利用を任すことに対する対価ではなかろうかと判断する。
新借地人は土地利用して、事業経営し、地代の支払いを保証してくれなければ、地主は新借地人への譲渡を安易には認めることは出来ない。
土地利用経営を任せる対価が名儀書替料ではないかと私は思う。
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