○鑑定コラム
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ
継続賃料を求める手法の中に、スライド法と利回り法がある。
『鑑定評価基準』のスライド法と利回り法の求める公式は次の通りである。
(スライド法)
従前合意賃料×変動率=スライド法賃料 … A式
(利回り法)
価格時点の土地・建物の価格×価格時点の継続賃料利回り
+価格時点の必要諸経費
=利回り法賃料 … B式
上記スライド法と利回り法の公式は、全く異なる求め方である。当然両者は別物の継続賃料の求め方と誰しも思う。
ずっと以前、継続賃料を求めていて、スライド法と利回り法を上記公式で求めると、3度も4度も求められる賃料がほぼ同じ値か近似値で計算されてきた。
何度も同じことが続くと、おかしいなどうしてだろうか。求める公式は違うのであるから、もつと開差のある違う賃料が求められても良いでは無いかと疑問が湧いてきた。
切り口は違うが、両公式とも従前合意賃料をベースにしているから、ひょつとすると同じことをやっているのでは無いかと思われてきた。
A式とB式を検討してみることにした。
分析過程を下記に述べる。
従前合意賃料は、次式に分解される。
従前合意賃料=従前の土地・建物価格×従前継続賃料利回り
+従前必要諸経費 … C式
不動産価格変動率は、
不動産価格変動率=価格時点の土地・建物価格÷従前合意時の土地・建物
価格 … D式
である。
D式を変型すると、
従前合意時の土地・建物価格=価格時点の土地・建物価格÷不動産価格変
動率 … E式
である。
A式の従前合意賃料のところにC式を代入する。
(従前の土地・建物価格×従前継続賃料利回り+従前必要諸経費)
×変動率
=スライド法賃料 … F式
F式の従前の土地・建物価格のところにE式を代入する。
((価格時点の土地・建物価格÷不動産価格変動率)×従前継続賃料利回り
+従前必要諸経費))×変動率=スライド法賃料 … G式
G式を変型する。
価格時点の土地・建物価格×(従前継続賃料利回り÷不動産価格変動率)×変動率
+従前必要諸経費×変動率=スライド法賃料 … H式
ここで、
「(従前継続賃料利回り÷不動産価格変動率)×変動率」を「価格時点の継続賃料利回り」と呼ぶことにする。
従前必要諸経費×変動率=価格時点の必要諸経費 … I式
とする。
H式にI式を代入し変型すれば、
価格時点の土地・建物価格×価格時点の継続賃料利回り
+価格時点の必要諸経費
=スライド法賃料 … J式
J式はスライド法賃料のA式より求められたものである。
J式とB式を見較べていただきたい。
J式とB式の左辺は全く同じである。
即ち、スライド法も利回り法も、一見求め方は異なるごとく見えるが、同じ求め方であるのである。
上記で立証したごとく、『鑑定評価基準』は賃料分析の切り口を異にしているが、同じやり方をスライド法と利回り法に分けているに過ぎない。
このことはよく考えれば当然の理である。それは従前合意賃料を両手法ともベースにしているから、2つの求め方は同じ求め方にならざるをえないのである。
一部継続賃料を良く勉強している不動産鑑定士はこのことにとっくに気づき、知っていた。スライド法と利回り法とは、ほぼ同じ賃料か近似値が求められると言っていた。「ほぼ」とか「近似値」とは、四捨五入によって途中の計算数値がかわるためとか、必要諸経費の違いが反映してくるためである。
スライド法と利回り法とは、理論的には同じ賃料が求められる理由が以上の説明で分かったと思う。
但し、同じ或いは近似の値が両手法から求められたからといって、それが適正な継続賃料か否かは分からない。
ベースになる従前賃料が適正であり、その後の変動率が妥当な尺度が用いられていれば、適正な継続賃料が求められるが、それらが著しく安かったり、不適切な変動率を採用した時は適正な継続賃料が求められる保証はない。
スライド法は出来るが、利回り法は地価変動が著しい時には適用出来ないという理由などは、利回り法の出来ない理由にはならない。
現行の「不動産鑑定評価基準」のスライド法と利回り法とは切り口は異なるが、求め方が基本的には結局同じであるから、スライド法が出来れば、利回り法も出来ることになる。
本鑑定コラムには賃料に関する多くの記事があります。下記に一部紹介します。
鑑定コラム226)家賃より地代を求める家賃割合法
鑑定コラム214)共益費は賃料を形成しないのか
鑑定コラム231)保証金が100ヶ月とゼロの店舗支払家賃は同じなのか
鑑定コラム236)従前合意賃料は妥当な賃料だったか
鑑定コラム219)家賃評価の期待利回りは減価償却後の利回りである
鑑定コラム68)賃料と改正鑑定基準
鑑定コラム71)差額配分法と私的自治の原則
鑑定コラム101)基礎価格の再認識の必要性
鑑定コラム1707)継続賃料利回りの算式の証明
▲
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ