○鑑定コラム


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242)銀座4丁目交差点角の店舗の家賃は

 2005年10月、新聞の一面を使った不動産投資商品の広告が載った。

 税引前予想分配率「2.6%」という大きな活字が踊る。
 新築賃貸マンションの不動産投資商品の広告である。その売り出し商品名を「インベスト・プラス」と名付けている。

 マンションの場所は江東区の東雲1丁目で、14階建と4階建の423戸のマンションである。
 商品の売主は東京建物である。

 その不動産投資商品は、不動産特定共同事業法に基づいた商品という。
 それは不動産証券化の一つである。
 不動産特定共同事業法に基づいた不動産投資商品とはどういうものか。或いはリートとどう違うかについては、インターネットで検索すれば、多くの解説記事が有ることから、それらはそちらに譲る。

 マンションの利回りは、賃貸ビルやショッピングモールの利回りと比較すると低い利回りであるから、証券化は困難であろうと思っていたが、この東京建物の大々的な新聞広告を見て、大手不動産会社が手がけ始めたことから、いよいよ不動産の証券化も賃貸マンションまで本格的に押し寄せてきたのかという実感を改めて確認した。

 上記した「税引前予想分配率2.6%」という投資分配予想利回りは、そのマンションの賃料収入を前提にして導き出されている利回りである。

 ここ3年、毎年1回、綜合ユニコムという会社が「システム賃料による市場賃料の求め方」というセミナーを企画している。

 今年もそのセミナーが企画され、私ともう一人の不動産鑑定士がセミナーの講師をした。

 賃貸マンションの市場賃料の求め方について、午後1時から5時までの4時間のセミナーの講師を終えた。
 これで3回目であるが、3年前の1回目には果たしてマンションの賃料の求め方のセミナーを聞きに来る人がいるのであろうかと思った。又セミナーを聞いても役に立つのであろうかと甚だ疑問視しながら講演を行った。

 しかし毎年それなりのセミナー参加者がある。
 その参加者も年々賃貸マンションを不動産証券化しょうと考えている人、或いは既に行っているプロの人々になりつつある。

 質問も甚だ厳しくなる。正規分布に基づく標準偏差の分布割合を間違えると、すかさず正しい割合数値が会場から飛んでくる。

 セミナーの講演を終えると、講師の2人ともぐったりと疲れてしまった。
 セミナー会場から近い銀座4丁目まで歩き、4丁目交差点の「ライオン」でビールを飲んで疲れを癒すことにした。

 銀座4丁目交差点のうち、南の一角を占める「銀座ライオン」のビヤホールでビールを飲むことにした。
 ビヤホールは地階にあった。以前は1階にもあったが、1階はニッサンの自動車のショールームになっていた。

 銀座4丁目の交差点は、南北を縦に走る銀座通りの軸が少し右にふれており、交差点角に建つビルを北に向かって右回りに説明すると、北が和光、東が三越銀座店、南がサッポロビール、西が三愛のビルである。交番は三愛ビルの前にある。

 セミナーの講師を勤めた二人は、互いに、
 「ご苦労さん。」
と言い合いながら、ビールの入っているジョッキーをぶっつけあった。

 ビヤホールの客は年配者が多かったが、思いのほか若いOLの姿も見られた。
 ジョッキーを傾け、セミナーの内容の反省の話しをしつつ、話題はやはり職業柄の癖がつい出てきてしまう。
 この銀座4丁目ライオンの1階の店舗の家賃はいくら位であろうかという話になった。

 一つの仕事を終えて、疲れを癒し気分転換のつもりでビヤホールに入ったのだが、悲しいかな職業の性が出てしまう。
 自ら情けないと思うが。

 しかし、東京・銀座4丁目交差点の4角のうちの、一角の店舗に現在居るのである。
 東京の一番立地条件の良い店舗地に居るのである。それは家賃が一番高いところということにもなる。
 東京で一番ということは、日本で一番高い家賃の店舗ということになる。
 そこでビールを飲んでいるのである。

 ビールのつまみの話で、その一番高い店の家賃の話をして、酒に酔うのも楽しいものであろうと、自己満足の勝手な理由をつけて、二人の不動産鑑定士は気楽に話した。

 「この銀座4丁目ライオンのある1階の家賃は、坪10万円くらいするだろうか。」

 「イヤ、10万円は安いのではないのか。」

 「銀座中央通りの東側に、中央通りと並行に走るあづま通りという通りが有る。
 1年くらい前に、そのあづま通りのビルの賃料の評価を行った。
 4階の事務所の新規賃料は、坪当たり2.5万円だった。」

 「とすると、あづま通りの1階の店舗の家賃は、倍の5万円くらいか。」

 「あづま通りは中央通りの背後の小路の通りで有るから、中央通りはその3倍の家賃は行くであろう。
 とすると、15万円が銀座中央通りの1階の家賃と言うことになる。」

 「3倍は高いのでは無いのか。」

 「そう思うか。銀座通りという東京のメーン通りだょ。
 あづま通りは背後の通りで歩道もなく、幅員8m程度の小路であろう。
 みゆき通りとか、並木通りのごとく歩道のあるしゃれた通りではない。
 3倍はしてもいいんじゃないのかな。」

 「では3倍として、
     5万円×3=15万円
15万円となる。
 銀座4丁目の角地だから10%アップとすると、
     15万円×1.10=16.5万円
坪当たり16.5万円となる。」

 「16.5万円か。なんだか安い様な気がするな。
 銀座4丁目の交差点の角だよ。2つと無い所だよ。
 坪20万円してもいいんではないか。」

 「・・・20万円は高いような気もするが。
 銀座4丁目の交差点の角という甚だ希少性の要因を30%と見ると、
     15万円×1.30≒20万円
坪当り20万円となる・・・・・・。
 しかし、坪20万円の家賃を支払って、採算の合う業種は有るのだろうか。」

 「・・・・・・・・・・・。」

 話している二人は押し黙ってしまった。

 銀座4丁目の交差点の角の店舗家賃が坪当たり20万円するのか、或いは15万円するのか分からないが、その角にある店でビールを飲みながら、二人の不動産鑑定士は他愛ない話を語り合った。
 

  鑑定コラム533) 「銀座中央通りの店舗家賃坪25万円」

  鑑定コラム544) 「銀座の利回り2.0%、表参道、新宿、渋谷、池袋は?」

  鑑定コラム1351) 「銀座大通りの店舗家賃」

  鑑定コラム2072)「不動産鑑定は地価公示制度を乗り超えて発展 平澤氏のメルマガより」


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