2546) 2021年版実務修習テキストの賃料積算法の期待利回りの記述は即刻修正を
不動産鑑定士になるための実務修習に使用されている2021年版の指導要領テキストの『家賃の鑑定評価・評価書編』の例題における新規賃料の期待利回りの求め方について、下記のごとく記述されている。
「(b)期待利回り
期待利回りとは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待される純収益のその資本相当額に対する割合をいい、金融市場における利子率と密接な関連を有し、かつ、地方別・用途別・品等別等によって異なる傾向を持つものである。
本件においては、下記 J-REITの公表事例に基づく取引利回り (NOIベース)等を参考に、対象不動産の有する投資対象としての危険性・流動性・管理の困難性・資産としての安全性等を考慮し、さらに対象不動産において賃貸運営をした場合の事業性等を考慮して、土地・嘩物一体としての、償却前純収益に対応する期待利回りを 4.9%と査定し・・・・
J-REITの公表事例に基づく取引利回り表-略」
(第16回実務修習指導要領テキストP407 公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会 2021年11月1日発行)
期待利回りは、新規賃料を求める際に使用する利回りである。価格時点に近い時点の類似的建物の新規賃貸事例が形成する利回りで無ければならない。
上記実務修習テキストが不動産鑑定士の卵に教えているのは、継続賃料の利回りを使用して新規賃料を求めょと教えているのである。
何をもってそう主張するのかと問われれば、「下記 J-REITの公表事例に基づく取引利回り (NOIベース)等を参考に」と云って、Jリートの利回りを採用・使用することである。
Jリートのデータでも、新規賃貸借契約の賃料による利回りであるならば、使用してもよい。それは新規賃料の要因により求められた利回りだからである。
先の鑑定コラム2545)「Jリートの還元利回りは新規賃料を求める期待利回りにはならない」で述べたごとく、Jリートの利回りは価格時点で新規契約した賃料で計算されたものではない。
Jリートのビル入居の一部賃借人は新規賃貸借の入居者もいるかもしれないが、殆どが、賃貸借が継続している状態が多い。
Jリートは6ヶ月決算であり、6ヶ月毎に所有賃貸不動産の利回りを発表している。6ヶ月毎に常に入居者が全部変わり、新規契約されていると云うことはあり得ない。
このことから、Jリートの賃料データは新規賃料で無く、継続賃料の利回りである。
継続賃料のデータより得られた利回りは、継続賃料利回りであり、新規賃料の期待利回りでは無いことから、新規賃料を求める期待利回りとして採用・使用することは、論理の整合性が無く不可である。
論理の整合性が無く不可の利回りを、士連合会は、不動産鑑定士の卵に適正な求め方の例題として教えている。
これは間違っているのである。
間違って教えられた不動産鑑定士が社会にでて、これから何十年と間違った求め方が正しいと信じ込んで鑑定書を発行して、不動産鑑定士人生を過ごす事になるのである。
数十年前に、借地権付建物の賃料の基礎価格を、借地権付建物価格であると実務補習で教え込まれた人が、未だに借地権付建物の賃料の基礎価格は借地権付建物価格であると信じ込み、論理矛盾した頓珍漢な賃料鑑定書を発行している。
借地権付建物の賃料の基礎価格と同じ様なことを、再び期待利回りで日本不動産鑑定士協会連合会は行っている。
この様な間違ったテキストを作成しているのは、一体誰なのだ。賃料とはどういうものなのか本当に理解しているのか。
与える影響が大きいことに気づいて、即刻止めて欲しい。
鑑定コラム2545)「Jリートの還元利回りは新規賃料を求める期待利回りにはならない」
鑑定コラム133)「借地貸ビルと所有地貸ビルで賃料に差があるのか」
鑑定コラム2290)「まだ、借地権付建物価格を基礎価格にする不動産鑑定士がいる」
▲