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2545) Jリートの還元利回りは新規賃料を求める期待利回りにはならない

 新規賃料を求める場合の使用する期待利回りは、価格時点に近い新規賃貸借契約によって授受された賃料によって形成される利回りで無ければならない。

 裁判所の鑑定人の賃料鑑定書(以下「裁判鑑定」と呼ぶ)で、新規賃料を求める積算賃料で、期待利回りを次のごとく求めているものがあった。

 「JーREITが公開している資料から、同一需給圏内に存する事務所ビルのうち類似性の高い不動産の、鑑定評価額に対するNCF利回りを下記の通り把握した。」

と云い、価格時点に近い3つの事務所ビルのNCF利回りから、価格時点の新規賃料の期待利回りを決定していた。

 裁判鑑定が採用しているJリートの3つのビル賃料は、3つのビル全てが新規賃料のものであるとは思われない。ビル入居の一部賃借人は新規賃貸借の入居者もいるかもしれないが、殆どが、賃貸借が継続している状態が多い。

 6ヶ月毎に利回りを発表していることから、6ヶ月毎に常に入居者が全部変わり、新規契約されていると云うことはあり得ない。

 このことから、Jリートの賃料データは新規賃料で無く、継続賃料の利回りである。

 継続賃料のデータより得られた利回りは、継続賃料利回りであり、新規賃料の期待利回りでは無いことから、新規賃料を求める期待利回りとして採用することは、論理の整合性が無く不可である。

 継続賃料の利回りを新規賃料を求める期待利回りに使用している裁判鑑定は、賃料評価失格の鑑定書と云える。

 鑑定コラム1678)「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その1)」で、新規賃料の期待利回りと継続賃料の継続賃料利回りについて述べている事から、それを下記に転載する。

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@ 期待利回りとは

   期待利回りは、新規賃料を求める利回りである。

 不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」と呼ぶ)は、新規賃料を求める鑑定評価の章の積算法の節で、次のごとく規定する。

 「期待利回りとは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待する純収益のその資本相当額に対する割合をいう。(平成26年改正鑑定基準国交省版P32)

 鑑定基準は、「賃貸借等に供する不動産」と云っている。

 賃貸借等に供されている不動産とは云っていない。

 賃貸借等に供されている不動産とは、既に賃料が決定されて、賃貸借契約が継続している不動産と云うことになる。

 鑑定基準は、「賃貸借等に供する不動産」と云っていることは、これから新しい賃貸ビルを建てて賃貸借契約するとか、或いは既存ビルを賃貸借ビルにして新規に賃貸借契約を結ぶとか、新しい賃借人と新規に賃貸借契約を結ぶと云うことを示している。

 このことは、新規賃貸借契約を意味する。期待利回りは新規賃料を求める際に使用する利回りということである。

A 継続賃料利回りとは

 継続賃料利回りとは、賃貸借等に供されている不動産の純収益のその不動産の額に対する割合である。

 鑑定基準は、継続賃料を求める鑑定評価の章の利回り法の節で、次のごとく述べている。

 「継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り、契約締結時及びその後の各賃料改訂時の利回り・・・・」(平成26年改正鑑定基準国交省版P34)

 上記引用で分かる如く、鑑定基準は、継続賃料利回りとはどういうものかをはっきりと定義していない。

 鑑定基準は、継続賃料利回りについて長々と述べているが、それは継続賃料利回りの決定方法を述べているものである。それを読んで継続賃料利回りとはどういうものかは理解し難い。

   鑑定基準は、継続賃料利回りについて、しっかりと定義づけすべきである。

 前記したごとく、「継続賃料利回りとは、賃貸借等に供されている不動産の純収益のその不動産の額に対する割合である。」というごとくの定義付けをすべきである。

 次回の鑑定基準改訂にあっては、継続賃料利回りの定義づけを強く望む。

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 Jリートの発表されている利回りは、継続賃料の利回りである。それを新規賃料を求める期待利回りとして流用・採用することは、論理的間違いであり、その様なことを行ってはいけない。

 このことを鑑定コラムで書くことは、これで4回目であるが、未だJリートの利回りを新規賃料の期待利回りに用いる不動産鑑定書が堂々と出回っている。

 裁判官は、不動産鑑定評価に疎く、裁判所任命の鑑定人不動産鑑定士の書いた鑑定書を盲信して、賃料の判決を書いてしまい、賃料が決定されているのである。

 間違った鑑定結果で判決された場合、賃貸借人のどちらかが経済的に得し、どちらかが経済的に損することになる。それを公平な鑑定評価といえるであろうか。


  鑑定コラム1678)
「継続賃料利回りは期待利回りにはならない(その1)」

  鑑定コラム1104)「Jリートの還元利回りは賃料評価の期待利回りにはならない」

  鑑定コラム1302)「再度云う Jリートの利回りを家賃評価の期待利回りに使うな」

  鑑定コラム2546)「2021年版実務修習テキストの賃料積算法の期待利回りの記述は即刻修正を」


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