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2843) 政策金利、日銀当座預金金利、無担保コール翌日物金利、基準貸付利率


1.はじめに

 先の鑑定コラム2842)で、「政策金利」とか「無担保コール翌日物金利」という用語を使用した。

 用語を初めて耳にする人には、一体その用語はどういうものか、その概念が分からなかったと思う。

 それ等用語は、金融関係の専門用語である。

 銀行、証券会社等金融関係に従事している人は、それ等用語がどういうものか分かっているであろうが、それ以外の人には、どういうものか知らない人も多くいるのでは無かろうかと思う。

 不動産鑑定評価において、私は、他人の書いた不動産鑑定書で、対象不動産の期待利回りの決定において、「現在の無担保コール翌日物金利は*.*%であるから、その金利水準を考量して、対象不動産の期待利回りを*.*%とする」等とする不動産鑑定書に以前に出会った。

 不動産の期待利回りは、地価、賃料水準そして地域、建物の品等、経年等の個別的要因に依って異なっており、単純には決められるものではないと思われるが、無担保コール翌日物金利から不動産の期待利回りを推定して決定している鑑定書にいささか驚いた。

 無担保コール翌日物金利と不動産の期待利回りとの間に密接な関係が存在する事を、データを示して論理的に説明出来るのであろうかと疑問に思った。

 不動産鑑定士の中には、信託銀行出身の人々は少なからずおられる。

 信託銀行では不動産の売買等も行っている。

 その関係からか、無担保コール翌日物金利水準から期待利回りを求めることに抵抗は少ないかもしれない。

 政策金利、無担保コール翌日物金利そしてそれらの金利と密接に関係している日銀当座預金金利、基準貸付利率について、その用語概念を、下記に記す。

 それ等用語は、金融関係の専門用語であり、門外漢である私が、生半可な知識で説明して、誤って伝える恐れを避ける事から、ウイキペデイアとか銀行等のホームページに記載されている用語の解説を引用して説明する。

2.政策金利

 政策金利とはどういうものか。政策金利についてフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』は、次のごとく説明する。

 「政策金利(せいさくきんり、英: policy interest rate)とは、中央銀行が金融政策として定める金利のこと」で、「景気の過熱を抑えるために行われる政策金利の利上げを「金融引き締め(政策)」、景気を活性化させるための利下げを「金融緩和(政策)」という。」と説明する。

 政策金利の種類は、下記の3つに分けられる。

 「・銀行が中央銀行に預金する際の短期金利 - 日本は日本銀行当座預金金利
 ・銀行が中央銀行から借りる際の短期金利 - 日本は補完貸付制度の基準貸付利率(公定歩合)
 ・銀行間の翌日物の金利 - 日本は無担保コール翌日物金利、米国はフェデラル・ファンド金利」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E7%AD%96%E9%87%91%E5%88%A9

 上記ウィキペディアの説明から、政策金利は、下記の3種類を云う。

    @ 銀行が日本銀行に預ける当座預金の金利
    A 銀行が日本銀行から借り入れる場合の基準貸付利率
    B 銀行間で貸出、借り入れする無担保コール翌日物金利

3.日本銀行当座預金金利

 日本銀行の当座預金金利については、日本銀行のホームページに依れば、下記のごとくである。

 「日本銀行当座預金とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金のことです。「日銀当座預金」、「日銀当預」などと呼ばれることもあります。」と概要を述べる。

 そして、その役割について、下記のごとく記す。

 「日本銀行当座預金は、主として次の3つの役割を果たしています。

(1)金融機関が他の金融機関や日本銀行、あるいは国と取引を行う場合の決済手段
(2)金融機関が個人や企業に支払う現金通貨の支払準備
(3)準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金」

https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/kess/i07.htm

 現在の日本銀行当座預金利率は、日本銀行のホームページに依れば、令和7年1月27日より0.5%となっている。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2025/mpr250124a.pdf


4.無担保コール翌日物金利

 無担保コール翌日物金利とはどういうものか。

 それについては、SMBC日興証券のホームページが、下記のごとく解説する。

 「金融機関は日銀に所定の額を預金することが義務付けられています(法定準備預金)。金融機関の中で、日々の決済等でお金が動いて準備預金の残高が法定の額に足りなくなるときには、お金が余っているほかの金融機関から翌営業日までお金を借りてその残高を満たそうとします。無担保コール翌日物はこのようなときに使われたりします。」と、無担保コール翌日物金利の制度と必要性を説明する。

 そして具体的に内容を次のごとく説明する。

 「短期金融市場におけるインターバンク市場(市場参加者は金融機関のみ)のひとつであるコール市場の代表的な取引のことです。金融機関同士が「今日借りて、明日返す」、「今日貸して、明日返してもらう」といったような1日で満期を迎える超短期の資金調達や資金供給を、借り手が貸し手に対して担保を預けずに行う取引です。この金利を「無担保コール翌日物金利」といい、「無担保コールレート(オーバーナイト物)」や、「無担保コール・オーバーナイト・レート」等ともいいます。」

https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/mu/J0281.html

5.基準貸付利率

 基準貸付利率について、三井住友DSアセットマネジメント株式会社のホームページは、下記のごとく解説する。

 「日本銀行が、個別の金融機関に対して資金を貸し出す際の基準金利のこと。従来は公定歩合と呼ばれていました。規制金利時代には、預金金利などの各種の金利が公定歩合に連動していたため、公定歩合が変更されると、こうした金利も一斉に変更される仕組みになっており、日本銀行の金融調整に利用されるなど、主要な政策金利となっていました。しかし、金利自由化で公定歩合と預金金利の直接的な連動がなくなったことで、政策金利としての役割を終えました。2006年に「公定歩合」から「基準割引率および基準貸付利率」に名称が変更され、基準貸付利率は短期の市場金利の事実上の上限としての役割を担うようになっています。」

https://www.smd-am.co.jp/glossary/YST0364/

 基準貸付利率とは、銀行が日本銀行から借り入れる場合の金利であり、昔は「公定歩合」と呼ばれていた金利である。

 基準貸付金利の金利水準については、鑑定コラム383)「公定歩合(基準割引率及び基準貸付利率)と一時金運用利回り」で、昭和48年(1973年) 4月2日の 5.00%から平成19年(2007年) 2月21日の 0.75%まで、34年間の改訂利率一覧を記している。

 その後の基準貸付利率を、日本銀行のホームページから転載すると、下記である。

          平成20年(2008年)10月31日     0.50%
          平成20年(2008年)12月19日     0.30%
          令和 6年(2024年)8月1日       0.50%
          令和 7年(2025年)1月27日       0.75%

 2008年12月19日から2024年7月31日迄の約16年間、日本銀行の基準貸付利率は0.3%という低金利政策が続けられて来たのである。

6. 現在の政策金利

 上記より政策金利について述べた。

 従前の政策金利は、法定準備金、基準貸付金利の操作で行われていたが、基準貸付金利は、2001年から金融市場調節の操作目標である「無担保コールレート」の上限の金利という政策金利の要因を持つものに変態したため、現在は無担保コール翌日物金利が政策金利の主流になり、無担保コール翌日物金利が政策金利と呼ばれる様になった。

 現在の基準貸付金利は、令和 7年(2025年)1月27日改訂の0.75%である。基準貸付金利は、政策金利即ち無担保コール翌日物金利の上限金利である。

 鑑定コラム2842)で、日銀の現在の誘導目標は0.5%と記したが、基準貸付金利が0.75%である事から、いずれ近いうちに0.75%の政策金利になるであろうことが充分予測される。


  鑑定コラム383)
「公定歩合(基準割引率及び基準貸付利率)と一時金運用利回り」

  鑑定コラム2842)「日本「世界最低金利」脱すの見出しの2025年3月22日の日経新聞」


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