○鑑定コラム
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大手不動産会社の野村不動産の子会社で、不動産仲介の野村不動産アーバンネット株式会社という会社がある。
その野村不動産アーバンネット(株)が、都内23区のおよそ51地点の住宅地の地価を、3ヶ月ごとに調査してポイント地点の土地価格を発表している。
その発表レポートによれば、2005年4月〜2006年4月までの1年間の、住宅地の価格上昇の著しい(上昇率40%以上)ポイントの地価、上昇率は下記のごとくである。 坪当り万円。
2005年4月(a) 2006年4月(b) 上昇率%(b/a)
港区赤坂 450万円 700万円 55.6
目黒区上目黒 260万円 380万円 46.2
港区高輪 300万円 430万円 43.3
目黒区三田 250万円 350万円 40.0
港区赤坂の住宅地の年間上昇率は、55.6%である。
一方、上昇率0%のポイントもいくつかある。主なものを記すと、下記の通りである。
2005年4月(a) 2006年4月(b) 上昇率%(b/a)
太田区西馬込 120万円 120万円 0.0
中野区中野 180万円 180万円 0.0
板橋区坂下 105万円 105万円 0.0
北区滝野川 125万円 125万円 0.0
足立区千住旭町 90万円 90万円 0.0
葛飾区お花茶屋 80万円 80万円 0.0
等である。
この調査結果は、野村不動産アーバンネット(株)の独自の調査であり、調査の結果得られた変動率が必ずしも地域の価格動向を正確に表しているものでもなく、また価格相場を代表しているものでは無いとレポートに断り書きが入っている。
その断り書きを考慮したとしても、都心の一部住宅地の、この1年間の地価の上昇は著しい。
上昇率0%というものもあるが、この地点もいつまでも0%の儘にあるというものでも無かろう。
都心商業地の地価上昇は2003年頃に始まったが、それは都心商業地の地価上昇のみに止まらず、ついに23区内良好住宅地にも大幅な地価上昇となって及んできた。
都心一部住宅地の地価の急激な上昇現象は、長く続いた不動産不況による地価下落の反動という面もあろうかと思われるが、より大きい原因は、日銀の野放図な金融超量的緩和政策と長いゼロ金利(具体的には公定歩合0.1%・2001年9月からの政策により、金融機関同士の短期の金の貸し借りである無担保コール翌日物金利の市場金利は、公定歩合0.1%が上限金利となり、手数料等を含めると実質ゼロ金利となってしまう) 政策によるツケが、不動産の価格に回ってきたと言うことである。
少々の金融政策、土地政策では土地価格は影響を受けない。
例えば、二枚の板が重なっている状態で、水平にある場合には上の板は動かない。片方を持ち上げ徐徐に傾斜をつけていって、ある角度になると上の板は滑って落下する。それは板が持つ摩擦係数を超えた時である。
土地価格にも上記に似た摩擦係数のごとくのものがあり、摩擦係数がゼロになったときに土地価格が暴走することになる。
日銀の野放図な金融超量的緩和政策と長いゼロ金利は続いていたが、今迄土地価格が上昇してこなかったのは、土地価格の持つ摩擦係数が働いて価格上昇を抑えていたのである。
しかし、あまりの金融超量的緩和政策とゼロ金利政策が、土地価格の持つ摩擦係数を超える状態に来てしまった為に、土地価格の急激な上昇が生じたと私は考える。
地価はもう上昇しないと一部の人は主張しているが、現実には都心商業地に次いで、ついに住宅地にも1年間で55%もの地価上昇が生じているのである。
20年前に経験して、苦い思いをしたのにもかかわらず、日銀は再び「いつか来た道」の政策を行ってしまった。
土地を小馬鹿にしているのでは無かろうかと私には思える。
土地はあらゆる産業、人間の生存の基盤を支えるものである。
生産活動、経済活動、生活とは切り離すことが出来ない重要な物である。
土地の所有権という権利のみに目を奪われていて、その権利の裏には価格という物が密着しているということを忘れているのでは無いかと思う。
権利の裏に密着する土地価格というものは、常に変動し、その動きは生産活動、経済活動、生活に対して影響を与えるという認識が、全く欠けているのでは無かろうか。
土地価格を小馬鹿にしてはいけない。
上記、野村不動産アーバンネット(株)の23区住宅地地価調査レポートは、下記http をクリックすれば閲覧出来ます。
http://www.nomu.com/knowledge/chika/pdf/200604_house_tokyo_23.pdf
平成19年1月1日時点の野村不動産アーバンネット(株)の地価調査についての記事については、下記の鑑定コラムの記事があります。
鑑定コラム334)「都内高級住宅地の地価上昇には歯止めがかからない」
鑑定コラム2132)「地価LOOKレポートに見る地価動向DI値」
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