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2132)地価LOOKレポートに見る地価動向DI値

 先の鑑定コラム2131)で、国交省が発表した「地価LOOKレポート」の四半期ごとのデータを使用して、地価動向DI値を求めた。

 2020年第1四半期と第2四半期のDI値は

     2020年1月〜3月   +69     
          2020年4月〜6月      -37
と求められた。

 この値から、私は「地価がピークを終え、完全に屈折点を示し、下落に転じた。」と記した。

 コラム記事を読まれた人の中には、どうしてその様に断定出来るのかと思われた人がいたと思う。

 私がどの様にして、その様に判断したかについて、以下で述べる。

 その前に、DI値とはどういうものか、そして過去の地価LOOKによる土地価格DI値について述べる。

 DI値とは、Diffusion Index(ディフュージョン・インデックス)の略である。業況判断数値である。

 DI値の考え方が広まったのは、日本銀行が四半期毎の景気判断の調査として「全国企業短期経済観測調査」を行っている。通称「短観」と呼ばれる調査である。

 その調査数値で「DI値」が使用され、「DI値」が発表されている。

 業況が良い企業数から業況が悪い企業数を差し引き、それを回答企業数で割って、100を乗じた数値がDI値である。

 業況が横ばいの企業数は計算に含まれない。

 この求め方が実態を確実に反映している事が、長い使用によって裏づけられているために、DI値の求め方が広く使われているのである。

 私も不動産の価格分析に使用している。

 野村不動産アーバンネットと云う会社が、都内の住宅地の価格を四半期ごとに定点観測して発表していた。その調査結果を利用出来ないかと考え、発表価格を前回の発表価格と比較して、上昇している、横ばいである、下落しているの3つの要因に分けて、価格傾向がつかめないかと思いつき、分析して見た。

 土地価格のDI値分析である。

 その結果を鑑定コラムに載せていたら、ある出版社から電話がかかり、インタビューを受けた。

 このことについては、鑑定コラム372)に書いてある。その書き出しを、下記に転載する。

 「今日、2007年8月27日(月)、提出期限を遅れに遅れて、依頼者から叱られることを覚悟して、鑑定書を依頼者に届けるため地下鉄に乗った。

 地下鉄の中吊り広告を見ていたら、「都心地価下落始まる」の大きな見出し記事の雑誌の広告が見えた。

 どんな内容であろうかと職業柄興味を持った。

 地下鉄下車後、駅構内の売店でその広告の雑誌を買った。

 当該記事の頁を開いて、読み始めてびっくりした。

 記事の文のしょてっぱつに、「不動産鑑定士田原拓治」と私の名前が出てくる。

 これは何だと面食らった。

 そういえば、過日、記者の取材があり、取材に応じた。

 それがまさか8月27日の今日に発売された「AERA」2007年9月3日号に載るとは思ってもいなかった。」

 上記「AERA」2007年9月3日号の記事は、その後下記のahahi.comのホームページに公開されました。

   
http://www.asahi.com/housing/zasshi/TKY200709270160.html
   (記事内容が表示されるまでには、少し時間がかかります。)

 国土交通省の地価調査課は、「地価LOOKレポート」を平成19年第4四半期より発表しだした。

 発表の方法は、全国の高度土地利用の商業地、住宅地100地点を選び、その土地価格の動向を四半期ごとに調査するものである。調査する人は、不動産鑑定士である。

 調査内容は、上昇、横ばい、下落の3つの大枠であるが、各大枠を次のごとく細分化して動向分析している。

    上昇       6%以上
                   3%以上6%未満
          0%超3%未満

    横ばい   0%
      下落    0%超3%未満           3%以上6%未満  6%以上9%未満 9%以上12%未満 12%以上

 細分化による区分けのデータ数は考えず、大枠の上昇、横ばい、下落の3つで分析結果データ数で考え、横ばいは計算に入れず、

                 上昇−下落
              ───────  ×100 = DI値                        
                   データ数

としてDI値を求めることにする。

 平成19年第4四半期から令和2年第2四半期のDI値を計算すると、下記一覧である。


四半期 上昇 横ばい 下落 データ数  DI値
平成19年第4 87 11 2 100 85
平成20年第1 41 50 9 100 32
平成20年第2 13 49 38 100 -25
平成20年第3 0 22 128 150 -85
平成20年第4 0 2 148 150 -99
平成21年第1 0 2 148 150 -99
平成21年第2 0 3 147 150 -98
平成21年第3 0 3 147 150 -98
平成21年第4 1 5 144 150 -95
平成22年第1 2 25 123 150 -81
平成22年第2 4 41 105 150 -67
平成22年第3 2 61 87 150 -57
平成22年第4 16 54 80 150 -43
平成23年第1 2 46 98 146 -66
平成23年第2 7 53 86 146 -54
平成23年第3 11 61 78 150 -45
平成23年第4 16 70 64 150 -32
平成24年第1 22 80 48 150 -17
平成24年第2 33 82 35 150 -1
平成24年第3 34 87 29 150 3
平成24年第4 51 74 25 150 17
平成25年第1 80 51 19 150 41
平成25年第2 99 41 10 150 59
平成25年第3 107 34 9 150 65
平成25年第4 122 22 6 150 77
平成26年第1 119 27 4 150 77
平成26年第2 120 28 2 150 79
平成26年第3 124 26 0 150 83
平成26年第4 125 25 0 150 83
平成27年第1 84 16 0 100 84
平成27年第2 87 13 0 100 87
平成27年第3 87 13 0 100 87
平成27年第4 89 11 0 100 89
平成28年第1 89 10 0 99 90
平成28年第2 88 12 0 100 88
平成28年第3 82 18 0 100 82
平成28年第4 84 16 0 100 84
平成29年第1 85 15 0 100 85
平成29年第2 86 14 0 100 86
平成29年第3 86 14 0 100 86
平成29年第4 89 11 0 100 89
平成30年第1 91 9 0 100 91
平成30年第2 95 5 0 100 95
平成30年第3 96 4 0 100 96
平成30年第4 97 3 0 100 97
令和元年第1 97 3 0 100 97
令和元年第2 97 3 0 100 97
令和元年第3 97 3 0 100 97
令和元年第4 97 3 0 100 97
令和2年第1 73 23 4 100 69
令和2年第2 1 61 38 100 -37


 分析したDI値をグラフにしたのが、下記グラフである。


地価LOOK DI値2020年7月


 地価ルックDI値が、0を切った時の時期を良く見て欲しい。

 この時が、土地価格の暴落、暴騰の始まりか終わりの時期を示す。

 DI値がプラスと云うことは、土地価格が値上りしている地点が多いということであり、マイナスと云うことは、土地価格が値下がりしている地点が多いということである。

 DI値がプラスから右下がりに0を切りマイナスになった時は、地価暴落の時である。

 DI値がマイナスから右上がりに0を突き破った時は、地価上昇の暴騰の時である。

 平成19年7月に不動産フアンドバブルが弾ける。地価はそれから下落始める。

 地価ルックDI値は、平成19年第4は+85であったが、平成20年第2は−25となった。右肩下がりで0を切ってマイナスDI値になる。地価暴落である。

 地価は、平成21年頃まで下がり続け、底を付けて上がり始めるが平成23年3月の東北大震災の発生で痛めつけられ地価は再度下落する。

 地価ルックDI値は、平成21年第1に−99を付けるまで下がり続ける。−99を底にしてDI値は反転し、平成22年第4の-44まで上がり続ける。

 平成23年第1に地価ルックDI値は−66に下落する。即ち東北大震災の発生による影響である。

 平成23年3月の東北大震災の発生で痛めつけられた地価は、すぐ上昇に転じる。

 安倍内閣の平成24年12月からの超超金融緩和政策の金が不動産に流れ、地価暴騰が起こる。リートバブルの発生である。

 地価ルックDI値は、平成23年第2には−54となり、反転する。

 それ以後DI値は上昇し、平成24年第3には、+3となる。

 右肩上がりでマイナスDI値から0を突き破り、プラスDI値になる。地価暴騰の始まりである。平成26年第3には、地価ルックDI値下落地点はゼロになる。

 地価ルックDI値は、その後プラスの高い数値を保ち続ける。好景気の持続である。

 平成30年第4に地価ルックDI値は、+97を付ける。地価の天井である。

 そして、令和2年第2に地価ルックDI値は、右肩下がりで0を切り、−37を付ける。地価暴落である。

 地価ルックDI値より分析すれば、平成24年第2〜令和2年第1まで約8年間の不動産リートバブルの甘い汁を不動産業は味わってきたのである。

 グラフを見ると、平成19年以降DI値が0を切った時は3回ある。

 1回目は、平成20年第2の−25(プラスからマイナスに転じる)で、これは不動産フアンドバブルの終わりを意味する。

 2回目は、平成24年第3の+3(マイナスからプラスに転じる)で、これはリートバブルの始まりを意味する。

 3回目は、今回の令和2年第2の−37(プラスからマイナスに転じる)で、これはリートバブルの終わりを意味する。

 平成19年以降に0を切るのは、今回が3回目である。

 2020年第1四半期と第2四半期のDI値が、
     2020年1月〜3月   +69     
          2020年4月〜6月      -37
という現象を知って、「地価がピークを終え、完全に屈折点を示し、下落に転じた。」と記したことが、これで分かったであろう。


  鑑定コラム372)「「「都心地価下落始まる」AERA 2007年9月3日号を」

  鑑定コラム385)「都心住宅地価が下がり始めた(2007年10月)」

  鑑定コラム408)「『「売り出し価格」信じるな』という見出しの特集記事」

  鑑定コラム288)「赤坂の住宅地価年間55%の上昇」

  鑑定コラム2131)「仙台市中央一丁目のみ地価上昇  2020年7月1日地価LOOK」


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