○鑑定コラム
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不動産鑑定士は情報薄弱者であると云う私が、その情報薄弱者であった。
2000年に不動産鑑定業を開業された株式会社大島不動産鑑定の社長であり、不動産鑑定士合格後の実務修習指導の指導鑑定士として「実務指導の大島塾」を手広く開塾され、多くの不動産鑑定士を指導育成し、業界に不動産鑑定士を送り出している大島大容不動産鑑定士が、私に一つの大変重要なメールを送って下さった。
私が、実務修習指導要領テキストの地代評価例の基礎価格を底地価格にしている事は間違っていると云って、それを放置している国交省地価調査課長、国交省官僚の天下り先のポストの一つである日本不動産鑑定士協会連合会の専務理事に激しく文句を云い、そして鑑定コラムでその間違いを厳しく指摘している事を、大島大容不動産鑑定士は知られたのであろうか、私に興味あるビッグニュースを知らせて下さった。
大島大容氏の同意を得て、内容を記す。
大島大容氏は、2025年5月18日(日)に行われた2025年不動産鑑定士短答式試験の試験問題の第40問を送って下された。
メール文面には、宅地の継続賃料(利回り法の計算問題)での問題文に「直近合意時点及び価格時点の基礎価格は最有効使用が可能なので、各時点の更地価格とする」とありますと教えて下さった。
出題された試験問題第40問の内容を見て、私は驚いてしまった。
第40問は、宅地の継続賃料の利回り法の試算賃料を求めるものであった。
計算の前提条件は賃貸借契約は普通借地権で、支払条件は毎年末日払いという条件で、数値の前提条件は、下記であった。
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直近合意時点
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価格時点
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更地価格
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80000000
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100000000
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年間支払賃料
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1000000
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年額公租公課
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200000
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330000
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回答数値が5つ書かれており、どれが正解かを選択するものであった。
数字が計算し易く丸めで作られているため、暗算が苦手な私ですら、暗算で1分も懸からずに、1,330,000円と容易く求められる問題である。
地代計算条件の土地価格は、はっきりと「更地価格」と記載されている。
直近合意時点の更地価格 80,000,000円
価格時点の更地価格 100,000,000円
上記更地価格で計算して地代を求めょという問題である。
地代計算の基礎価格は「更地価格」である。何処にも底地価格或いは底地割合**%と書かれていない。
国家試験である不動産鑑定士短答式試験の継続地代を利回り法で求める出題で、地代計算の基礎となる基礎価格を更地価格にして、地代を求めょと問うているのである。
短答式試験に合格しなければ、不動産鑑定士には成る事が出来ない試験の出題である。
大島大容氏が私に知らせてくださった2025年不動産鑑定士短答式試験問題の第40問を見て、私は出題を「本当かいな」と疑ってしまった。
2024年11月1日付で、公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が発行している『第19回実務修習指導要領テキスト』のP315〜337の「地代の鑑定評価(評価書編)」では、そのP328に基礎価格として、次のごとく記されている。
「 建付地としての価格 底地割合 基礎価格
3,840,000,000円 ×15% = 576,000,000円 」
として、基礎価格を求めている。
底地価格を基礎価格にしている。
この底地価格を基礎価格にするのは間違っているとして、私は鑑定コラム2868)「不動産鑑定士協会連合会の2025年実務修習テキストの地代評価の求め方は間違っている」で糾弾したのである。
短答式試験、論文式試験、実務修習、口頭試験と、不動産鑑定士試験は一貫して行われるものである。
短答式試験で、地代の基礎価格は「更地価格」とし、実務修習では「底地価格」と教えるとは、不動産鑑定士試験はまともかと云いたくなるであろう。
2025年不動産鑑定士短答式試験の第40問の問題を作成した試験委員はどなたかは、私は知らないが、よくぞ問題を作って下さったと私は、その人の真っ当な考え方、識見の高さに敬意を表したい。
2025年不動産鑑定士短答式試験問題は、国交省のホームページで公開されている。
アドレスは、下記である。
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/kanteishi/content/001889654.pdf
思えば20年程前、借地権付ビルの家賃の裁判で、東京地裁の鑑定人が、家賃算出の基礎価格を「借地権付建物の価格」として求めていたので、それは間違っている「自用の建物及びその敷地の価格」が基礎価格であると、私は主張した。
そうしたら、その後日本不動産鑑定士協会の会長になる不動産鑑定士の会社が、「田原不動産鑑定士の考えは間違っている。東京地裁の鑑定人の考えが適正である。」と云って、不動産鑑定士になるために日本不動産鑑定士協会が発行している実務補習のテキストの家賃の鑑定評価例の写しを裁判所に提出して来た。
その借地権付建物の家賃の鑑定評価では、基礎価格は、「借地権付建物の価格」であった。
この事に付いては、鑑定コラム133)「借地貸ビルと所有地貸ビルで賃料に差があるのか」で記してある。
地代の訴訟で、地代の基礎価格を「底地価格」として求めている鑑定書が裁判証拠として提出されたら、それは間違いであるとして、2025年不動産産鑑定士短答式試験第40問の部分と試験問題の表題をコピーして、証拠として裁判所に提出すれば、底地価格を基礎価格にしている地代鑑定は否定されることになるであろう。
弁護士が、本件の情報を知れば、確実にそうした弁論行為をしてくる。
鑑定コラム2868)「不動産鑑定士協会連合会の2025年実務修習テキストの地代評価の求め方は間違っている」
鑑定コラム133)「借地貸ビルと所有地貸ビルで賃料に差があるのか」
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