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2922)再びのJリートの不動産鑑定評価の不祥事


 日本経済新聞が、2025年11月11日 20:21に、「監視委、住商系REIT運用会社に行政処分勧告 不動産鑑定で不適切行為」のニュースを流した。

 12日には、そのニュースは行き渡った。

 証券取引等監視委員会は11日、REIT(不動産投資信託)の運用を手掛ける住商リアルティ・マネジメント株式会社(同社は住友商事の完全子会社)が、住友商事の所有する不動産を投資法人に取得させる際に、鑑定価格を高くする目的で、同社は住友商事が希望した価格に近い鑑定額を提示する鑑定業者を選ぶなど、鑑定業者の選定プロセスが不適切だった。

 この行為は、金融商品取引法第四十二条一項、投資信託及び投資法人に関する法律第二百一条に違反するとして、証券取引等監視委員会は住商リアルティ・マネジメントに対し行政処分を行うよう勧告した



 日経の記事は、途中から有料会員で無くては読めないため、ネットでは、もう一つのニュースが流れた。

 ニュース発源の証券取引等監視委員会のホームページの記事である。

 ここでは法律違反内容の全てが読める。要約は日経新聞の通りである。

 証券取引等監視委員会の発表は下記である。

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令和7年11月11日
証券取引等監視委員会

「住商リアルティ・マネジメント株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」

1.勧告の内容

 証券取引等監視委員会が住商リアルティ・マネジメント株式会社(東京都中央区、法人番号1010001112429、代表取締役社長 白石 幸成、資本金1億5000万円、常勤役職員78名、投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係

〇 投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況

 住商リアルティ・マネジメント株式会社(以下「当社」という。)は、SCリアルティプライベート投資法人(東京都中央区、法人番号9010005022807、以下「本投資法人」という。)との間で本投資法人の資産の運用に係る委託契約を締結しているところ、当社が当社の親会社から本投資法人に取得させた不動産(以下「本物件」という。)について、その不動産鑑定評価を依頼するに際し、以下のとおり、利益相反管理の観点から不適切な行為が認められた。

(1) 不適切な不動産鑑定業者選定プロセス

 当社は、利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護することを目的として、内規において、親会社等の利害関係者が保有する不動産を本投資法人に取得させる場合の価格は、投資信託及び投資法人に関する法律第201条第1項の規定に基づく不動産の鑑定評価の額を物件取得額の上限としている。また、不動産鑑定評価の取得に当たっては、その中立性・客観性を担保するため、業界内における不動産証券化に係る受注実績等の客観的な基準に基づき、社内稟議を経て不動産鑑定業者を選定した後、依頼した不動産鑑定業者へ物件資料を提供することによって不動産鑑定評価書を取得するとしている。
 こうした中、当社は、複数の不動産鑑定業者に「利回り感」や「更地価格」等のヒアリングを行い、当該ヒアリングを踏まえた本物件の価格水準(自己査定)が、親会社から提示された他社の取得希望価格とする価格(以下「親会社からの提示価格」という。)に満たないことを把握すると、上記内規が定める方法に反し、社内稟議により不動産鑑定業者を選定する前の段階から、これらとは別の不動産鑑定業者(以下「当該不動産鑑定業者」という。)に物件情報を提供して概算鑑定額を聴取した。聴取の結果、当該概算鑑定額が上記自己査定額を上回ることを把握すると、当社は当該不動産鑑定業者へ依頼することを前提として、社内稟議の外形を整えたうえで当該不動産鑑定業者を選定した。これは、親会社からの提示価格を満たす不動産鑑定評価額を得ることを目的とした不適切な不動産鑑定業者選定プロセスであると認められる。

(2) 不動産鑑定業者への不適切な働きかけ

 当社は、当該不動産鑑定業者から聴取した概算鑑定額が上記自己査定額を上回りつつも親会社からの提示価格に満たないことを把握した。
 そこで、当社は、現行の賃貸借契約が終了する将来の時点における使用方法について、現況と異なる用途の図面を作成のうえ当該不動産鑑定業者へ提供し、同図面に沿った物件利用を想定するよう働きかけを行った。その結果、当社は上記?において聴取した概算鑑定額を更に上回る不動産鑑定評価額を取得した。
 こうした行為は、一般的に許容される不動産鑑定業者への情報提供(現況図面、現行賃料及び物件管理費等)や意見交換(客観的な情報に基づいた将来の賃料上昇や空室率の見込み等)を逸脱した恣意的なものであり、不動産鑑定業者への不適切な働きかけであると認められる。

   上記のとおり、当社は、親会社からの提示価格を踏まえて、本物件の取得を目的として必要な不動産鑑定評価額の水準を満たすために、その目的に沿った対応が期待される不動産鑑定業者を探索し、これを選定したうえ、当該不動産鑑定業者に対して不適切な働きかけを行い、そのうえで算定された不動産鑑定評価額を基準に物件取得を行っている。これは、利害関係者以外の者による不動産鑑定評価により利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護しようとする内規の趣旨を損ねるものであって、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況にあり、投資家保護上重大な問題があると認められる。  上記行為は、利害関係者である親会社からの物件取得にあたり、恣意性の排除が特に重要な不動産鑑定業者の選定プロセスにおいて、コンプライアンス室のけん制機能が十分に発揮されていなかったこと、また、当社の役員が親会社からの出向者で占められている中、当社の役員が本物件の取得に必要以上に介入していたことに起因するものであり、当社の利益相反管理態勢は著しく不十分であると認められる。
 このように、当社は、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていないことから、金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められる。

   pdf参考資料(PDF:387KB)

(参考条文)

〇 金融商品取引法(昭和23年法律第25号)(抄)

(権利者に対する義務)
第四十二条 金融商品取引業者等は、権利者(次の各号に掲げる業務の区分に応じ当該各号に定める者をいう。以下この款において同じ。)のため忠実に投資運用業を行わなければならない。
一 第二条第八項第十二号に掲げる行為を行う業務 同号イ又はロに掲げる契約の相手方
二・三 (略)
2 (略)

〇 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号)(抄)

(特定資産の価格等の調査)
第二百一条 資産運用会社は、資産の運用を行う投資法人について特定資産(土地若しくは建物又はこれらに関する権利若しくは資産であつて政令で定めるものに限る。)の取得又は譲渡が行われたときは、内閣府令で定めるところにより、当該特定資産に係る不動産の鑑定評価を、不動産鑑定士であつて利害関係人等(当該資産運用会社の総株主の議決権の過半数を保有していることその他の当該資産運用会社と密接な関係を有する者として政令で定める者をいう。次項、次条第一項及び第二百三条第二項において同じ。)でないものに行わせなければならない。ただし、当該取得又は譲渡に先立つて当該鑑定評価を行わせている場合は、この限りでない。
2 (略)



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 2022年7月15日に中部電力の子会社の日本エスコンが、本件と全く同じ事件を引き起こしている。「エスコン事件」である。
 そのことについては、鑑定コラム 2429)「エスコンアセットジャパンに関係する不動産鑑定会社 しっかりしないのか」で詳しく記述していることから、下記に転載する。

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2429) エスコンアセットジャパンに関係する不動産鑑定会社 しっかりしないのか

 2022年7月15日の日本経済新聞が、「中部電系に業務停止命令 金融庁が方針 3ヶ月間 REITの運用で違反」の見出しで、次のごとくのニュースを伝える。

 Jリートのエスコンジャパン投資法人という会社がある。同投資法人を運用するのはエスコンアセットマネジメントという会社である。エスコンアセットマネジメントという会社は、日本エスコンという会社の子会社である。

 エスコンアセットマネジメントという会社は、親会社(日本エスコン)が所有不動産を、Jリートのエスコンジャパン投資法人に売る時に、親会社の利益を得るために高い価格で売ろうとして、エスコンアセットジャパンに関係する不動産鑑定会社に希望価格を伝え、「より高い価格になるように働きかけていた」という。

 金融庁は、「リートに親会社の持つ不動産を高値で買わせるために鑑定会社に高い価格を提示するよう働き掛けた」という運用違反ということで、エスコンアセットマネジメントに3ヶ月間の業務停止命令をだした。

 エスコンアセットジャパンに関係する不動産鑑定会社は、その高い希望価格に沿う鑑定評価額の鑑定書を提出していたのであろう。

 金融庁が処罰するごとくの市場価格を乖離する高い価格など出す事は出来ませんとどうして鑑定評価を拒否しないのか。

 不動産の価格を、金融庁が処罰しなければならない程の市場価格と乖離する高い価格で評価し、その価格が適正な市場価格ですと云って鑑定書を提出し、Jリート投資法人に購入させる事は、Jリート投資法人に損失を与えるばかりでなく、そのJリート投資法人が発行しているリート証券を購入している投資家に、最終的には損失を転嫁させることになる。

 そうした行為に、エスコンアセットジャパンに関係する不動産鑑定会社は加担したことになる。

 金融庁が、アセットマネジメント会社に業務3ヶ月の停止命令を出したことは、高い鑑定価格の不動産鑑定評価書が発行された事実があったことになる。

 Jリートの不動産鑑定評価は、小さい規模の鑑定会社・個人経営の鑑定事務所には評価依頼は無い。

 大手の不動産鑑定会社に限られている。

 エスコンアセットジャパンに関係する不動産鑑定会社も、大手の不動産鑑定会社であろう。

 不動産鑑定業及び不動産鑑定士の信用を大きく貶め、信用に泥を塗ったことになる。それについて、当該不動産鑑定会社はどういう責任の取り方をするのであろうか。

 一方、不動産鑑定業者及び不動産鑑定士の団体である公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は、会員のこの様な不祥事が発覚し、その鑑定書を発行した鑑定業者及び鑑定評価をおこなった不動産鑑定士をどの様に対処するのか。

 まさか不問に付すと云うことは無かろう。不動産鑑定士の信用を貶めたのである。何もしない、出来ない会長であったら、職を辞された方が良い。会長の存在の必要性が無い。

 他方、監督官庁の国土交通省の地価調査課は、当該不動産鑑定会社及び関係した不動産鑑定士にどの様に対応するのであろうか。

 悪いのはエスコンアセットジャパンであり、不動産鑑定業者・不動産鑑定士は適正な鑑定評価を行っており処罰の必要性が無いと云って、無処罰であったならば、金融庁は烈火のごとく怒るであろう。

 役所関係の力関係で云えば、国交省は金融庁の力にはとても適わない。早急にそれなりの対処をしないと、Jリート関係の不動産鑑定の所管は金融庁が持つと云いだし、その通りになりかねない。

 国交省から見れば、「なんてことをしてくれたのだ。腹立たしい大手鑑定会社ょ。」では無かろうか。

 当該不動産鑑定会社の代表と担当した不動産鑑定士は、国交省の地価調査課に呼ばれ、課長からこっぴどく叱られるであろう。当事者は覚悟していた方が良いではなかろうか。否(いや)、もう既に叱られているかもしれない?。日経に記事になっている位であるから。

 それぞれどういう対応をするかじっと見ていよう。



  鑑定コラム2445)
「Jリートのエスコンジャパンリート投資法人の金融庁への業務改善報告」

  鑑定コラム2517)「エスコンジャパンリート投資法人に、資産運用会社が6億66百万円の損害賠償支払を約束」

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 エスコン事件で、不動産鑑定士を止められた人もいたのではなかろうか。

 今回の住商リート事件で、不動産鑑定士を止められる人が出てくるのでは無かろうか。
 

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