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29)川奈ゴルフ場の価格

 名門ゴルフ場の一つの川奈ゴルフ場が行き詰まり民事再生法を申請したと、帝国データバンクの倒産情報は伝える。(2002.5.21)

 伊東の相模灘を望み、ホテルとゴルフ場をセットした日本でも有数の著名なゴルフ場であった。
 負債総額は670億円という。

 1997年2月期には売上高59.42億円計上したが、2001年2月期には31.5億円まで売り上げは落ち込んだ。
 1998年には当時の橋本龍太郎首相とロシアのエリツィン首相が日ロ首脳会談を行ったホテルである。

 ゴルフ場・ホテル建物には金融機関は抵当権を設定しているであろうが、負債に見合うだけの資産価値が果たしてあるかどうか。

 昨今のゴルフ場の市場価格は、山林を切り開き、過度な造成工事、芝生植裁、クラブハウスの建設工事費や会員権価格を前提には形成されていない。
 ゴルフ場のプレーフィーの収入を基礎にして、純収益から経営に属する利益を控除して価格形成される。

 ゴルフ場建設費に100億円の費用が掛かったとしても、ゴルフ場の価格は100億円とはならない。
 その年間プレーフィー等の収入が4億円であれば、そのゴルフ場の市場価格は6億円程度である。
 その程度の金額でないとゴルフ場を購入する人はいない。
 もっとも企業収益の採算を度外視して高く買う人は中にはいるかもしれないが。

 私の多くない最近のゴルフ場の鑑定評価のデータ分析で云えば、ゴルフ場の収入と市場価格の価格倍率は、

      1.51(標準偏差0.24)

である。

 川奈ゴルフ場の年間売上高は31.5億円であるから、上記価格倍率を採用すれば、
      31.5×1.51 ≒ 47.6億円
である。

 川奈ゴルフ場という知名度、ブランド価値が別途あると考え、その影響度を折り込んで考えてみる。

 影響度の程度を標準偏差の1倍とすれば、
      31.5億円×(1.51+0.24)= 55.1億円
である。

 日本の超高級ゴルフ場の一つであるとする要因を強く考えるとすれば、影響度の程度は標準偏差の1.65倍が妥当か。
 標準偏差の1.65倍とは出現率5%という極めてまれな現象状態をいう。
 100のゴルフ場にあってベスト5に入るゴルフ場ということである。
 川奈ゴルフ場はそのランクに位置するであろうとする。

      31.5億円×(1.51+0.24×1.65) = 60.0億円

 川奈ゴルフ場の価格は、その知名度を強く見れば、60億円と云うことになる。

 破綻企業の債権者分配率は、複雑な手順と債権・債務の調査によって決定されるが、極めて荒っぽく、単純化し、かつ大口債権者であろうと思われる銀行の抵当権実行がないものとして考えれば、負債総額670億円、資産価格60億円であるから、

      60億円÷670億円 ≒ 0.09

であり、91%の債権カット、分配率9%と言うことになる。

 そして会員権は紙屑になり、今迄の会員500社はゴルフプレーする権利を失うことになる。当然会員権価格は0円である。

 どの様な再生計画が立てられるかわからないが、運良く仮に現会員のプレーが約束される計画になったとした場合、会員権の価格は資産価格に相当すると考えると、

      6,000,000,000円÷500 = 12,000,000円

1200万円の価格となる。

 これが現会員に無償で付与されるのか、新たに購入しなければならないのか、それはわからない。

 これを川奈ゴルフ場にまだ1200万円の価値があるのかと見るか、1200万円の価値になってしまつたかと考えるか、或いはもっと価値があるはずと考えるかは、人それぞれの取り様である。

 川奈ゴルフ場の場合、ホテル部門も売り上げに含まれている。
 ホテル部門の売り上げがどれ程か不明である。
 ホテル部門を切り離してゴルフ場のみを考えると、ゴルフ場価格はもっと下がる可能性はある。

 民事再生法の再生計画で、どのように川奈ゴルフ場の資産が評価されるか興味あるが、部外者には知る由もない。

 なおゴルフ場に関する記事の鑑定コラムには次のものがあります。


 鑑定コラム  62)「ゴルフ場の減損会計」

 鑑定コラム  91)「日本のゴルフ場数は2067ヶ所」

 鑑定コラム 129)「本間ゴルフ場の阿蘇のゴルフ場売却」

 鑑定コラム 156)「いつまで続くゴルフ場鑑定のセミナー講師」

 鑑定コラム 167)「ゴルフ場の取得価格と予想売上高」

 鑑定コラム 174)「ゴルフ場の固定資産税は高すぎる」

 鑑定コラム 198)「ゴルフ場の売却が続く大手不動産会社」

 鑑定コラム 225)「ゴルフ場の地代は年間平方米100〜200円」

 鑑定コラム 320)「ゴルフ場売上高1兆円を割る」

 鑑定コラム 327)「一人当りゴルフ場利用料金は13200円」

 鑑定コラム 381)「ゴルフ場が最悪期を脱した」

 鑑定コラム 435)「3つのゴルフ場の売買価格」

 鑑定コラム 463)「ゴルフ場の鑑定評価に、収益還元法は昭和53年に既に使用されていた」

 鑑定コラム 464)「ゴルフ場の売上高を還元利回りで除すとゴルフ場の収益価格が求められるのか」

 鑑定コラム 491)「ゴルフ場は平成20年1月から再び低迷に入った」

 鑑定コラム 824)「今年2件目のゴルフ場の鑑定評価」

 鑑定コラム 914)「ゴルフ場が太陽光発電畑に」

  鑑定コラム1521)「ゴルフ場の平均売上高」

  鑑定コラム1783)「2018年1月〜4月でゴルフ場倒産上位30社のうち9社」


 ゴルフ場の利回りについては、下記の鑑定コラムに7つのゴルフ場の採用利回り例が載っています。
 鑑定コラム 154)「不動産の利回り(割引率とターミナルレート)」



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