○鑑定コラム


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300)「海ほたる」の土地の所在地番は・・・・

 新米の客員教授として、2006年4月より桐蔭横浜大学法学部で、不動産鑑定評価の理論と評価実務の講義を受け持ち、将来のしっかりした不動産鑑定士を育てるべく寺子屋授業を行っている。

 不動産鑑定の対象となる不動産の知識がまず必要であり、「不動産の種類」について、それはどういうものかの説明は避けて通れない。

 不動産の種類とは、不動産の種別の「種」と不動産の類型の「類」の2つの概念の頭文字を取って「不動産の種類」と呼ばれる複合的な概念である。

 では、不動産の種類を構成する「不動産の種別」とは・・・・・、そして「不動産の類型」とは・・・・・と話をすすめる。

 宅地の類型として、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権があり、各類型について説明していた。
 更地とは・・・・・、建付地とは・・・・・、借地権とは・・・・、底地とは・・・・・、そして区分地上権について説明し終えた時、講義を聞いていた学生の一人が、突然質問してきた。

 「先生、海ほたるはどうなんですか。」
と。
 「海ほたる・・・。東京湾アクアラインの真ん中にある海ほたるのことですか。」
と私は学生に問うた。

 「そうです。」
と学生は答える。

 東京湾アクアラインは、東京湾を挟む西の川崎と東の木更津を結ぶ海底トンネルと海上橋施設によって構成されている。

 海ほたるは、東京湾アクアラインの真ん中より木更津よりの海上にぽっかりとある人工島である。

 区分地上権と海ほたるとの関係など、私は今迄に一度も考えたことは無かった。
 学生から質問を受けて、さあ返答に弱ってしまった。

 海底トンネル部分は、地中にある構造物であるから、その部分は区分地上権の概念に当てはまる。
 しかし、「権利」として確定されるには、場所を特定する必要が有る。場所の特定には土地の「所在地番」が必要である。
 東京湾アクアラインの海底トンネル部分の存在する部分に、地番が付設してあるのであろうか。

 東京湾アクアラインを象徴する人工島の「海ほたる」に、所在地番があるのかという疑問が生じてきた。
 それらは私にも分からないことから、後日調査或いは関係会社等に問い合わせて講義で返答すると言うことにした。
 まさに新米客員教授の「新米」の姿そのものである。

 海ほたるのパーキングエリアを管理している企業は、東京湾横断道路株式会社という会社である。
 その会社に私が分からないことについて、事情を説明して聞いてみた。

 質問内容について、広報担当者も分からなかったので、後日調査して返答してくださると言うことになった。

 相当の日時を経て回答を頂いた。

 一応、海ほたるのパーキングエリアの管理している企業には、学生に講義の時間に説明することを条件にして、問い合わせていることから、回答の内容の一部はオープンしても「私信の秘密」、「個人情報保護法」には抵触しないと思われることから、回答内容の一部をオープンにする。

 海ほたる・東京湾アクアラインの土地建物の所有、管理関係はなかなか複雑の様である。

 土地は公有水面で国有財産法による。
 建物の所有者は、「独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構」である。
 東京湾アクアラインを管理している会社は、「東日本道路株式会社」である。
 そして海ほたるの所在は、「千葉県木更津市中島地先」である。

 これから、東京湾アクアラインの海底トンネルには、区分地上権は設定されていないと判断される。
 海底トンネル、海ほたる、海上橋とも公有水面の利用であり、国有財産である公有水面の使用として、国に使用料が支払われているのでは無かろうかと推定する。

 海ほたるの建物所在地は、「木更津市中島地先」の表示である。
 ここに「地先」という地番表示が出てくる。本鑑定コラムの「地先権」の記事で述べた権利が存在していることになる。
 「海ほたる」は、さしずめ「木更津番外地」ということか。

 「地先」という地番表示が出てきたために、学生に「地先権」についてどういうものか話す羽目になってしまった。ここで授業は一度横道にそれて脱線授業になる。

 次に、「公有水面」という用語が出てきたために、公有水面とはどういうものかについて話し始めて、授業は再び横道にそれて脱線してしまった。

 公有水面については、「公有水面埋埋立法」という大正10年に作られた法律がある。

 その第1条に公有水面についての定義がある。
 転記することによって、公有水面とはどういうものかということの説明は省略する。
 下記に同法律の第1条の一部を転記する。
 同法律は漢字部分以外は、カタカナで書かれているが、カタカナの部分は筆者の責任でひら仮名に表記する。

 「公有水面と称するは河、海、湖、沼其の他の公共の用に供する水流又は水面にして国の所有に属するものを謂」う。


 地先権については、下記の鑑定コラムに記事があります。

  鑑定コラム271)「地先権」

  鑑定コラム774)「不動産鑑定士は地先権を知らないのか」


 「海ほたる」について知りたい人は、下記のホームページにアクセスされたい。

http://www.umihotaru.com/index/index.asp

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