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326)ある地方都市の工場地の事業用定期借地権

 羽田空港から飛行機で1時間少し。
 到着空港よりバスでJR駅まで行き、特別急行列車に乗り換えて1時間。
 特急と言っても2車両しか連結していない特急である。おまけに単線であるため、小さな駅で停車し、反対方向から来る特急列車を待つと言う特急である。

 人口5万人程度の地方の都市にある一つの企業の全所有不動産の鑑定評価をするために行ってきた。
 企業のM&Aに伴う所有不動産の時価評価である。

 企業買収する会社にとって、これから買収しょうとする企業の所有不動産はどれ程の価値があるのか事前に知ることは、時価会計制度にあっては当然必要なことである。
 その不動産の金額によって、企業買収価格は違ってくる。
 帳簿の簿価で不動産価格を把握して、買収してから後でホゾを噛む企業はかなり多い。

 小さい企業と言っても、一つの企業の所有する不動産は洗い出すと結構な数になる。
 工場、事務所、倉庫、社宅、寮、支店営業所、賃貸ビル、賃貸マンション、駐車場、資材置場、遊休土地等あちこちに離れている場合が多い。中には何故か山林を所有している企業もある。

 評価する不動産の中に、将来の工場地のためにずっと以前に確保していた工場団地の土地を、いつまでも使わずに更地のままで放置しておくことは、企業経営上芳しく無いと考えたのか、最近事業用定期借地権によって第3者に賃貸した土地があった。

 東京周辺でもあるにはあるが、あまり見かけない事業用定期借地権の設定である。
 借地権という権利があまりにも強くなってしまい、一旦土地を貸したら永久に貸した土地は帰って来ないという今迄の借地権の弊害が原因して、借地期間が到来したら必ず貸した土地は、土地所有権者の手許に更地として戻ってくるという借地制度が出来た。それが定期借地権であり、事業用のものが事業用定期借地権である。

 権利設定の条件が厳しく、なかなか普及しないと制度立法者の嘆きの声が時々聞こえて来るが、しかし、東京より遠く離れた地方の都市で、事業用定期借地権は立派に利用されていた。

 土地を貸す側、借りる側も事業用定期借地権の制度を利用するのは初めてであり、その制度がどういうものなのか、当初は知ってはいなかったであろう。

 土地を貸した土地所有者に聞けば、土地賃借人の方から話を持ちかけてきたという。

 誰がこの制度を紹介し当事者に勧めたのか。
 弁護士か、税理士か、不動産鑑定士か、不動産業者か、或いは銀行か。
 不動産業者とすると、随分と勉強している不動産業者である。

 地代は坪当り約400円であった。
 この地代が高いか否かは、私には分からない。
 20年の賃貸借期間であるから、20年後には更地として土地所有者には土地が確実に戻ってくる。

 その土地の価格評価は、土地所有者には20年間は地代しか収入が無いから、その収入に見合った土地の現在価値、そして20年後には更地として返還されることから、20年後更地価格の現在価値を加算して求めることになる。

 20年間の地代収入の現在価値を求めるための割引率は?・・・。そして20年後の更地価格の現在価値は如何ほどか。
 頭を痛める不動産鑑定になりそうである。


 鑑定コラム612)「価格5割引の神戸市の工場土地分譲」

  鑑定コラム23「ある工場地の地代」


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