○鑑定コラム
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「神戸ルミナリエ2009」で、「神戸ルミナリエ」を取り上げただけで、神戸について全く書かなかった。そのことの反省も兼ねて、神戸の土地について述べる。
「投資負担をぐっと軽減。現行価格から大幅割引! 5割引」
という大見出しが踊る。
2009年9月30日の東京地区の日本経済新聞夕刊に掲載された、神戸市の工場地売却広告である。
3つの工場地の従前売出価格(現行価格)と対比して、新売出し価格である最大割引き価格が書かれている。
1つが「ポートアイランド第2期」(神戸市中央区港島南町)で、
現行価格 新最大割引き価格
製造工場用地 214,000円/u 149,000円/u
業務施設用地 350,000円/u 245,000円/u
文化・研究施設用地 192,600円/u 134,820円/u
である。
以前にポートアイランドの土地を鑑定評価した。
三宮に近い土地であったが、坪当り60万円を超えて工場を建てる為に土地購入する人はいないであろうと思った。
やはり、神戸市はポートアイランドの工場地分譲の土地価格を大幅に値下げしてきた。
2つ目は、上記1の工業団地の南にある「神戸空港島」(神戸市中央区神戸空港)の土地である。
現行価格 新最大割引き価格
総合物流施設用地 270,000円/u 135,000円/u
業務施設用地 270,000円/u 189,000円/u
上記の2つの土地の現行価格は同じであるが、最大割引き価格では用途によって随分と価格差がある。現行価格の設定で考えれば、新最大割引き価格は同じで無ければ理屈に合わない。そうで無いと現行価格は、どんな基準・判断で決定したのかという現行価格決定に対しての批判が出てくることになる。
だが、批判が出て来ても、役所はそれなりの理屈を用意されていると私は想像する。
土地価格は、下位の価格に引きずられる傾向があることから、189,000円の価格をつけた土地の売却は難行するのでは無かろうか。
グーグルの画像検索でhttp://www2.asahi.com/が、神戸空港島の工業団地の写真を載せている。画像は小さいですが。
下記のアドレスです。
http://www2.asahi.com/kansai/travel/news/image/OSK200902030080.jpg
3つ目は、「神戸テクノ・ロジステックパーク」の土地である。
製造工場・流通業務施設用地である。
現行価格 新最大割引き価格
製造・流通業務施設用地 135,000円/u 81,000円/u
今年(2009年)の夏に、「神戸テクノ・ロジステックパーク」内の土地を鑑定評価した。
企業の所有不動産の減損会計に伴う時価評価の為に、上記工業団地を訪れた。
神戸市街地の背後、六甲の山岳丘陵地にあった。インターチェンジに近い良好な工業団地である。
土地価格は、坪当り30万円を切る土地価格水準であった。
上記神戸市の「現行価格u当り135,000円」では、とても土地購入者は現れなく、即ち売却出来る土地価格水準ではない。
u当り81,000円に価格改訂したのは、適切である。
3つの工業団地の土地価格の大幅な価格下落改訂したが、5割引の価格改訂したからと云って、工業企業者が土地購入に動く保証はない。
日本経済超不況の時期に、企業は工場新設のために土地取得に動くのであろうか。
特別な業種の工場はともかくとして、工場地の土地購入の採算ラインはu当り20,000円である。
この金額を大幅に超えて土地購入し、工場を建てても、その製造企業の採算は合わない。
とすると、神戸市の工業地の土地を5割引の価格にしても、完売することは難しいのではなかろうかと推測する。
土地売却することなぞ考えず、広告で「投資負担をぐっと軽減」という文言を使うのであれば、工場建設者に土地を購入させず、「事業用定期借地権」によって、工場地利用という方法を何故採用しないのか。
「事業用定期借地権」としても、地代が土地所有権者(本件の場合は神戸市)に入る。その地代は思っている程に低額で無く、現在の更地価格相当を充分回収できるのである。
土地購入への投資負担が無く、地代は経費として引き落とすことが出来るとなれば、企業は工場建設に動く可能性は大である。
売れない土地を今後も持ち続けるよりも、事業用定期借地権設定によって土地利用をはかり、地代によって資金回収を計る方が良い。
過日、神戸市東灘区にある工業地を鑑定評価した。
その土地は、期間20年の事業用定期借地権契約が付着する土地であつた。
地代は、月額坪当り1400円である。固定資産税・都市計画税の公租公課の6.6倍の水準であった。保証金として12ヶ月分の地代相当を授受していた。つまり保証金は1年分の地代の額である。
地代の経費である公租公課を差し引いた純地代を、資本還元して得られた収益価格は、周辺の土地取引事例より比較して求められた更地価格を上まわる価格であった。
資本還元する還元利回りは、当該事業用定期借地権契約によって土地利用が決められている建物を、賃貸することを考えた家賃より求められたものである。
即ち、分かり易く云えば、賃貸事務所ビルを建てた場合の土地の還元利回りと同じ種類の還元利回りである。
事業用定期借地権であるからといって、特別に安い還元利回りでは無い。
通常の賃貸建物の家賃収入で考えられる還元利回りで求められた地代の収益価格が、土地の取引事例比較法によって求められた更地価格を上まわると云うことは、何を意味するのか。
それは、事業用定期借地権の価格は、ゼロ円ということを意味する。
事業用定期借地権も借地権であるから、借地権価格割合が50%とか60%発生し、事業用定期借地権は更地価格の50%とか60%の価値があるという考え方は、全く誤った考えであることになる。
上記例で云えば、事業用定期借地権は借地権という権利は発生するが、借地権価格は発生しないと云うことになる。
但し、契約で保証金若しくは敷金としての一時金が授受されて居る場合には、その金額相当が借地権価格と云うことになる。
事業用定期借地権設定による土地賃貸が、土地売却より不利になることは無いと言うことが、これでわかったのではなかろうか。
鑑定コラム79)「神戸ポートアイランド造成費」
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